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この日のヒーニアスは若干浮き足立っていた。
よく見ればいつもの服装ではなく、白を基調とした装束に金色の模様や羽飾りが付いている。
先程アンナからアスク王国の装束なのだとヒーニアスに贈ったものだ。
他国の衣装を見に纏った彼が一番に思い浮かんだ人物…それは紛れも無く召喚士であるナマエだった。その理由は簡単、二人は恋人同士だからだ。
この格好を最初に見せたい相手が恋人だというのはごく自然な事だろう。
その為ヒーニアスは真っ先にナマエを探して初めに部屋を尋ねてみたが、返事が無かった為不在なのは明白だった。その後も城内を歩いていて探してみたが、何故か彼女の姿が見当たらない。
「あれ?ヒーニアスさん!どうかされましたか?」
そこへ声を掛けてきたのはシャロンだった。彼女はヒーニアスを見た瞬間、真っ先に変化に気付き顔を綻ばせる。
「わあ、ついにヒーニアスさんも新しい衣装が支給されたんですね!とっても似合ってます!」
「あ、あぁ……ありがとう」
仕方がないとはいえ、一番初めに見てくれたのがシャロンだった事に少々複雑な気持ちが彼の中に生まれる。嫌な気持ちには一切なってはいないが、やはりここはナマエであって欲しかったと、そう思わずにはいられないのだろう。
「もうナマエさんには見せられたんですか?」
「いや……まだだ。まさに彼女を探している最中でな」
「あ…そうでしたか……!そう言う事でしたらこんな所で足止めしちゃう訳にはいきませんね。ナマエさんならさっき書庫の方へ行きましたよ!」
シャロンからナマエの足取りを聞き、その情報に少しだけ驚く。書庫は先程見に行ったばかりだったからだ。
だが、そこにはお目当ての姿はなかったので、こうしてエントランスまで来ていたのだが。
「書庫に…タイミングが悪かったようだな……情報、感謝する」
「はい!ナマエさん、きっと喜ばれると思いますよ」
シャロンと別れるとヒーニアスは早速もう一度書庫へと向かった。到着して中を覗いてみたが、やはり彼女の姿は見当たらない。
中に居るのは普段から勤勉で本を読むのが大好きな英雄達ばかりだ。
「ヒーニアス王子ではないですか。こんにちは」
そこへ今度はアスレイが声を掛けてきた。彼はいつものように調べ物でもしていたのだろう、二冊の本を小脇に抱えている。
「ああ、アスレイか。ナマエを見なかったか?」
「ナマエさんですか?彼女なら先程向こう側の扉から出ていきましたよ」
その返答に思わず頭を抱えた。またもやタイミングが悪かったらしい。
「そうか……ありがとう」
「いいえ。そういえば彼女、次は飛空城に行くと仰ってましたよ」
ナマエの足取りを教えてもらえたところで、ヒーニアスは半ば飛び出すように書庫を後にした。彼の去っていく後姿を見て、アスレイは小さく笑みを浮かべる。その目はとても温かさで満ちていた。
「ヒーニアス様は本当にナマエさんをお慕いしているのですね」
「はぁっ……ナマエはどこに行ったのだ……」
飛空城に着く頃にはヒーニアスから若干疲れの色が見え始めていた。それと同時にナマエと会えないもどかしさや焦りも感じている。
こんなにも会いたいと思って会えないのは初めての事だ。
そこでヒーニアスはハッとした。
アスレイからナマエが飛空城へ向かったとは聞いたが、飛空城のどの施設に居るのかは聞いていないからだ。
飛空城には様々な施設がある。畑、音楽堂、宿屋……一つ一つ見て回るのには、この広い敷地内だとかなり時間を要する。
ナマエに会えるのなら惜しみなく探すだろうが、もしその間にまたすれ違ってしまったら……そう思うと気が遠くなり、ヒーニアスは一度休もうとエナジーの泉の端に腰を下ろした。
「ナマエ…一体何処へ行ったんだ……」
「……ヒーニアス?」
耳に届いた愛おしい声。聞き間違えるはずなどない。
反射的に顔を上げて前を向けば、そこには確かにナマエ本人が立っていた。
ヒーニアスはやっと会えた喜びとほんの少しの苛立ちに任せて腰を上げ、彼女の小さな両肩を掴んだ。
「ナマエ…!今まで何処へ行っていたんだ、散々探したのだぞ!」
「えっ…あ、ご、ごめんなさい……!新しく育てる植物の育て方を調べてから、ここの畑に来てたんだけど……」
勢いよく迫るヒーニアスに気圧されたのか、ナマエは少し怯えた様子で今までの経緯を話した。
彼は彼女が怯えているのに気付き、慌てて謝罪をすると肩を掴んでいた手を離し冷静さを取り戻す。
「すまない……つい捲し立ててしまったな…」
「ううん、大丈夫……でも、本当にごめんね。貴方が探してくれてたのに、私ってば……」
「いや、もういいんだ。こうして会えたんだから」
落ち込むナマエの頬に手を添えて小さく笑い掛ければ、彼女の顔にも笑みが浮かぶ。彼の一番見たかった顔だ。
「それで、何か用があったんだよね?どうかしたの?」
改めてそう問われた事で、ヒーニアスは本来の目的を思い出した。ナマエに会えた喜びで忘れてしまっていたのだろう。
彼は一度咳払いをして少しぎこちない口調で話し出す。
「ああ、その…ナマエ、私を見て何か気付かないか?」
敢えて最初から本題を明かさないのは彼のプライドの所為かもしれない。だが、内心は心臓の鼓動が若干速くなっているのも確かだ。
「え?……あぁ!すごい、アスク王国の衣装になってる!」
先程彼と会ってから今まで気付いていなかったのは、今の言葉ではっきりと分かる。恐らく最初の剣幕と罪悪感でそれどころではなかったのだろう。
「普段の衣装ももちろん良いけど、新しい衣装もすごく似合ってるよ!カッコいいね!」
待ち焦がれた最愛の者からの聞きたかった言葉。
やっと耳に出来て頬が緩まないはずかない。
ヒーニアスは愛おしさが溢れていく中、緩む頬を隠す為にも彼女をその場で抱き締めた。
突然の抱擁にナマエは驚いて頬を染める。
「ヒーニアス…!?誰か来ちゃうかも……!」
「今はそんな事どうだっていい。ナマエ、このまま宿屋に向かうぞ」
「え?え?何で!?」
腰を抱かれて強制的に宿屋へと向かわされる事に頭がついていけないナマエ。相変わらず突発的な行動は読めないらしい。
そんな彼女をヒーニアスは変わらぬ愛おしい目で見つめていたのだった。
〜end〜
よく見ればいつもの服装ではなく、白を基調とした装束に金色の模様や羽飾りが付いている。
先程アンナからアスク王国の装束なのだとヒーニアスに贈ったものだ。
他国の衣装を見に纏った彼が一番に思い浮かんだ人物…それは紛れも無く召喚士であるナマエだった。その理由は簡単、二人は恋人同士だからだ。
この格好を最初に見せたい相手が恋人だというのはごく自然な事だろう。
その為ヒーニアスは真っ先にナマエを探して初めに部屋を尋ねてみたが、返事が無かった為不在なのは明白だった。その後も城内を歩いていて探してみたが、何故か彼女の姿が見当たらない。
「あれ?ヒーニアスさん!どうかされましたか?」
そこへ声を掛けてきたのはシャロンだった。彼女はヒーニアスを見た瞬間、真っ先に変化に気付き顔を綻ばせる。
「わあ、ついにヒーニアスさんも新しい衣装が支給されたんですね!とっても似合ってます!」
「あ、あぁ……ありがとう」
仕方がないとはいえ、一番初めに見てくれたのがシャロンだった事に少々複雑な気持ちが彼の中に生まれる。嫌な気持ちには一切なってはいないが、やはりここはナマエであって欲しかったと、そう思わずにはいられないのだろう。
「もうナマエさんには見せられたんですか?」
「いや……まだだ。まさに彼女を探している最中でな」
「あ…そうでしたか……!そう言う事でしたらこんな所で足止めしちゃう訳にはいきませんね。ナマエさんならさっき書庫の方へ行きましたよ!」
シャロンからナマエの足取りを聞き、その情報に少しだけ驚く。書庫は先程見に行ったばかりだったからだ。
だが、そこにはお目当ての姿はなかったので、こうしてエントランスまで来ていたのだが。
「書庫に…タイミングが悪かったようだな……情報、感謝する」
「はい!ナマエさん、きっと喜ばれると思いますよ」
シャロンと別れるとヒーニアスは早速もう一度書庫へと向かった。到着して中を覗いてみたが、やはり彼女の姿は見当たらない。
中に居るのは普段から勤勉で本を読むのが大好きな英雄達ばかりだ。
「ヒーニアス王子ではないですか。こんにちは」
そこへ今度はアスレイが声を掛けてきた。彼はいつものように調べ物でもしていたのだろう、二冊の本を小脇に抱えている。
「ああ、アスレイか。ナマエを見なかったか?」
「ナマエさんですか?彼女なら先程向こう側の扉から出ていきましたよ」
その返答に思わず頭を抱えた。またもやタイミングが悪かったらしい。
「そうか……ありがとう」
「いいえ。そういえば彼女、次は飛空城に行くと仰ってましたよ」
ナマエの足取りを教えてもらえたところで、ヒーニアスは半ば飛び出すように書庫を後にした。彼の去っていく後姿を見て、アスレイは小さく笑みを浮かべる。その目はとても温かさで満ちていた。
「ヒーニアス様は本当にナマエさんをお慕いしているのですね」
「はぁっ……ナマエはどこに行ったのだ……」
飛空城に着く頃にはヒーニアスから若干疲れの色が見え始めていた。それと同時にナマエと会えないもどかしさや焦りも感じている。
こんなにも会いたいと思って会えないのは初めての事だ。
そこでヒーニアスはハッとした。
アスレイからナマエが飛空城へ向かったとは聞いたが、飛空城のどの施設に居るのかは聞いていないからだ。
飛空城には様々な施設がある。畑、音楽堂、宿屋……一つ一つ見て回るのには、この広い敷地内だとかなり時間を要する。
ナマエに会えるのなら惜しみなく探すだろうが、もしその間にまたすれ違ってしまったら……そう思うと気が遠くなり、ヒーニアスは一度休もうとエナジーの泉の端に腰を下ろした。
「ナマエ…一体何処へ行ったんだ……」
「……ヒーニアス?」
耳に届いた愛おしい声。聞き間違えるはずなどない。
反射的に顔を上げて前を向けば、そこには確かにナマエ本人が立っていた。
ヒーニアスはやっと会えた喜びとほんの少しの苛立ちに任せて腰を上げ、彼女の小さな両肩を掴んだ。
「ナマエ…!今まで何処へ行っていたんだ、散々探したのだぞ!」
「えっ…あ、ご、ごめんなさい……!新しく育てる植物の育て方を調べてから、ここの畑に来てたんだけど……」
勢いよく迫るヒーニアスに気圧されたのか、ナマエは少し怯えた様子で今までの経緯を話した。
彼は彼女が怯えているのに気付き、慌てて謝罪をすると肩を掴んでいた手を離し冷静さを取り戻す。
「すまない……つい捲し立ててしまったな…」
「ううん、大丈夫……でも、本当にごめんね。貴方が探してくれてたのに、私ってば……」
「いや、もういいんだ。こうして会えたんだから」
落ち込むナマエの頬に手を添えて小さく笑い掛ければ、彼女の顔にも笑みが浮かぶ。彼の一番見たかった顔だ。
「それで、何か用があったんだよね?どうかしたの?」
改めてそう問われた事で、ヒーニアスは本来の目的を思い出した。ナマエに会えた喜びで忘れてしまっていたのだろう。
彼は一度咳払いをして少しぎこちない口調で話し出す。
「ああ、その…ナマエ、私を見て何か気付かないか?」
敢えて最初から本題を明かさないのは彼のプライドの所為かもしれない。だが、内心は心臓の鼓動が若干速くなっているのも確かだ。
「え?……あぁ!すごい、アスク王国の衣装になってる!」
先程彼と会ってから今まで気付いていなかったのは、今の言葉ではっきりと分かる。恐らく最初の剣幕と罪悪感でそれどころではなかったのだろう。
「普段の衣装ももちろん良いけど、新しい衣装もすごく似合ってるよ!カッコいいね!」
待ち焦がれた最愛の者からの聞きたかった言葉。
やっと耳に出来て頬が緩まないはずかない。
ヒーニアスは愛おしさが溢れていく中、緩む頬を隠す為にも彼女をその場で抱き締めた。
突然の抱擁にナマエは驚いて頬を染める。
「ヒーニアス…!?誰か来ちゃうかも……!」
「今はそんな事どうだっていい。ナマエ、このまま宿屋に向かうぞ」
「え?え?何で!?」
腰を抱かれて強制的に宿屋へと向かわされる事に頭がついていけないナマエ。相変わらず突発的な行動は読めないらしい。
そんな彼女をヒーニアスは変わらぬ愛おしい目で見つめていたのだった。
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