マイヒーロー
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※エフラム視点
「えっと…つまり貴方は私の恋人、なんだよね?」
俺はその問いに“ああ”と答えながら頷いた。
今俺が話しているのはナマエだ。
俺と彼女は恋人同士になってからしばらく経った頃だろう。
だが、今の会話は少々奇妙だと感じてもおかしくはない。
状況を説明すると、ナマエは先の戦闘で敵が扱う妙な術により記憶が一部抜けてしまった。どうやらその抜けてしまっている記憶は俺が召喚された時から後のものらしい。
だから俺を含む何人かの英雄の事を忘れてしまっているのだ。
時間が経てば術は自然と解けるみたいだが…
「そう、なんだ…」
「悪い…嫌、だったか?」
俺がそう聞くとナマエは首をぶんぶんと横に振る。
「うっううん、そんな事ない!ただ…ちょつとビックリして…」
「そうか…まあ、急に俺が恋人だなんて言われたら無理もないよな」
「それもそうなんだけど…」
なにやら少し言葉にするのを躊躇っているような様子になる。それは嫌な事を言おうとしているのではなく、どこか照れ臭いような感じだ。
「その…こんなにカッコよくて、しかも異世界の王子様が私の恋人で…私にそんな資格があるのかなって思っちゃって……」
それを聞いて俺はあの事を思い出した。
以前、俺がナマエに告白した時も同じ事を言っていたのだ。
自分のような平民が釣り合う訳がない、と…
だから俺もその時と同じ事を彼女に話す。
「そんな事はどうだっていいんだ。俺は好きになった相手の身分などで諦めたくなんてない。ナマエだから、俺はお前を選んだんだ」
「エフラム…」
ナマエは目を見開いて俺の目を見ていた。その瞳には真剣な表情の自分が見える。
そして少しすれば彼女の口は緩やかに弧を描いた。
俺はその笑顔を見てホッと胸を撫で下ろす。
「やっと笑ってくれたな」
「え?」
「今のお前にとって俺はさっき会ったばかりみたいなものだから仕方ないとは思うが…それでも、こうしてまた俺に笑い掛けてくれて嬉しいぞ」
そう言えば今度は照れたように顔を逸らす。
ふ…相変わらず可愛いやつだ。
見ていて本当に飽きないな……
俺はナマエに手を伸ばしかけたが、既の所でその手を止める。
それを不思議に思ったのか彼女はぽかんとした顔で俺を見た。
「ああ、いや…いくら恋人同士とはいえ、その記憶がないお前に触れるのはどうかと思ってな…」
「………」
するとナマエが俺の手を取って自分の頬に添えさせたのだ。
突然の事に心臓がドキリとする。
「私…確かにエフラムの事は覚えてない。けど…嫌じゃない…ううん、たぶん……私も貴方の事が好きだって気持ちは覚えてる。だって、こうしているとすごく温かい気持ちになるし、安心するから…」
「ナマエ…」
まさかの言葉に内心驚きながらも、彼女の穏やかな笑顔に俺もつられて笑みが浮かぶ。
俺はいつだってナマエの笑顔に支えられているな…
どんなに辛い戦いがあっても、俺はこの笑顔があれば乗り越えていけるんだ。
たまらずナマエを抱き寄せて腕の中に閉じ込める。
「俺の事、覚えていなかったとしても…お前は変わらず笑っていてくれよ。その笑顔を守るためなら、俺はどんな事からもお前を守ってみせる」
ナマエは一瞬肩を震わせた後、俺の背中に回す腕に少しだけ力を入れたのが分かった。
「私…早く思い出したいな。他のみんなもそうだけど…一番大切なエフラムとの思い出は、やっぱり特別だと思うから…」
「なら、話してやろうか?俺達が出会ってから今までの事」
「!うんっ」
それから俺達は時間の許す限り沢山話をした。
どれを話してもキラキラとした目をして聞いている彼女は、やはりとても可愛らしく思う。
…惚れた弱みってやつか。
次の日、ナマエは何事もなかったかのように俺に挨拶をしてくれて少し拍子抜けした。
記憶が無かった事は覚えていないようだが…
それでも俺は、また新たにナマエと恋に落ちたような気がしたんだ。
この事は自分の中だけの思い出として取っておく事にしよう……
~end~
「えっと…つまり貴方は私の恋人、なんだよね?」
俺はその問いに“ああ”と答えながら頷いた。
今俺が話しているのはナマエだ。
俺と彼女は恋人同士になってからしばらく経った頃だろう。
だが、今の会話は少々奇妙だと感じてもおかしくはない。
状況を説明すると、ナマエは先の戦闘で敵が扱う妙な術により記憶が一部抜けてしまった。どうやらその抜けてしまっている記憶は俺が召喚された時から後のものらしい。
だから俺を含む何人かの英雄の事を忘れてしまっているのだ。
時間が経てば術は自然と解けるみたいだが…
「そう、なんだ…」
「悪い…嫌、だったか?」
俺がそう聞くとナマエは首をぶんぶんと横に振る。
「うっううん、そんな事ない!ただ…ちょつとビックリして…」
「そうか…まあ、急に俺が恋人だなんて言われたら無理もないよな」
「それもそうなんだけど…」
なにやら少し言葉にするのを躊躇っているような様子になる。それは嫌な事を言おうとしているのではなく、どこか照れ臭いような感じだ。
「その…こんなにカッコよくて、しかも異世界の王子様が私の恋人で…私にそんな資格があるのかなって思っちゃって……」
それを聞いて俺はあの事を思い出した。
以前、俺がナマエに告白した時も同じ事を言っていたのだ。
自分のような平民が釣り合う訳がない、と…
だから俺もその時と同じ事を彼女に話す。
「そんな事はどうだっていいんだ。俺は好きになった相手の身分などで諦めたくなんてない。ナマエだから、俺はお前を選んだんだ」
「エフラム…」
ナマエは目を見開いて俺の目を見ていた。その瞳には真剣な表情の自分が見える。
そして少しすれば彼女の口は緩やかに弧を描いた。
俺はその笑顔を見てホッと胸を撫で下ろす。
「やっと笑ってくれたな」
「え?」
「今のお前にとって俺はさっき会ったばかりみたいなものだから仕方ないとは思うが…それでも、こうしてまた俺に笑い掛けてくれて嬉しいぞ」
そう言えば今度は照れたように顔を逸らす。
ふ…相変わらず可愛いやつだ。
見ていて本当に飽きないな……
俺はナマエに手を伸ばしかけたが、既の所でその手を止める。
それを不思議に思ったのか彼女はぽかんとした顔で俺を見た。
「ああ、いや…いくら恋人同士とはいえ、その記憶がないお前に触れるのはどうかと思ってな…」
「………」
するとナマエが俺の手を取って自分の頬に添えさせたのだ。
突然の事に心臓がドキリとする。
「私…確かにエフラムの事は覚えてない。けど…嫌じゃない…ううん、たぶん……私も貴方の事が好きだって気持ちは覚えてる。だって、こうしているとすごく温かい気持ちになるし、安心するから…」
「ナマエ…」
まさかの言葉に内心驚きながらも、彼女の穏やかな笑顔に俺もつられて笑みが浮かぶ。
俺はいつだってナマエの笑顔に支えられているな…
どんなに辛い戦いがあっても、俺はこの笑顔があれば乗り越えていけるんだ。
たまらずナマエを抱き寄せて腕の中に閉じ込める。
「俺の事、覚えていなかったとしても…お前は変わらず笑っていてくれよ。その笑顔を守るためなら、俺はどんな事からもお前を守ってみせる」
ナマエは一瞬肩を震わせた後、俺の背中に回す腕に少しだけ力を入れたのが分かった。
「私…早く思い出したいな。他のみんなもそうだけど…一番大切なエフラムとの思い出は、やっぱり特別だと思うから…」
「なら、話してやろうか?俺達が出会ってから今までの事」
「!うんっ」
それから俺達は時間の許す限り沢山話をした。
どれを話してもキラキラとした目をして聞いている彼女は、やはりとても可愛らしく思う。
…惚れた弱みってやつか。
次の日、ナマエは何事もなかったかのように俺に挨拶をしてくれて少し拍子抜けした。
記憶が無かった事は覚えていないようだが…
それでも俺は、また新たにナマエと恋に落ちたような気がしたんだ。
この事は自分の中だけの思い出として取っておく事にしよう……
~end~
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