マイヒーロー
名前変換
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追い掛ける。
見覚えのある藍色の髪に、どこか面影を感じる“彼”の後ろ姿を。
もう、見失わないように。
「待って!」
ようやく捉えたその姿に叫んだ。
そのおかげで歩みを止めたけれど、こちらに振り返る事はない。
それでも私は背中に向かって声を掛ける。
「リーヴ…なんでしょう?それにスラシルも……」
名前を呼んだら、今度こそこちらを向いてくれた。
鋭さを宿した赤い瞳は確かに私の姿を捉えている。
「…何しにきた。俺達にはもう関わるな」
「どうして?折角また会えたのに…二人とも愛の祭りに参加しに来たんでしょう?」
私の質問に少しだけ間を置いた後、彼は何も言わずにまた歩みを進めてしまう。
慌てて駆け寄ると、私は彼の手を掴んだ。
温かみは感じない…冷たい大きな手。
不思議だな……冷たいはずなのに、私にとっては温かい。
「ねえ、待ってってば!」
「!」
少し彼の肩が震えた気がした。
表情は…見えないけれど。
「…少しなら、いいんじゃない?」
「ヴェロニカ…!?何を……」
ずっと私達の様子を見ていたスラシル…ヴェロニカ皇女がそう言った。
「もうここには長く居られないけれど…彼女と過ごすくらいなら、まだ時間はあるはずよ」
「馬鹿な事を…生者と関わるのは、もう……」
「ここで強がれば、貴方はまた後悔するんじゃない?」
彼女の言葉にリーヴは一瞬目を見開く。
赤い瞳が揺れている。
その一言に彼の心までもが揺れ動いたのかは…私には分からない。
「……すまない、ヴェロニカ。すぐに戻る」
「ええ。さっさと行ってらっしゃい」
私がリーヴの腕を掴んでいた手を今度は彼が掴んだ。
そして早歩きで場所を移動していく。
風で舞う花びらが少しだけ視界を遮ってしまう。
でも…私のすぐ目の前を歩く彼の姿だけははっきりと見えるから。
「あの、リーヴ…?」
人気のない所まで来た時、彼は漸く足を止める。
恐る恐る彼の名前を呼ぶと、こちらを振りいた彼と目が合った。
「……どうしてそうまでして僕に構うんだ。もう僕らは決別したはずだろう」
「そんな…こうしてまた会えて、私はすごく嬉しいよ。たとえ貴方は違っていたとしても……」
すると掴まれていた腕がスッと解放される。
それがちょっとだけ寂しく感じた。
「…嬉しくないはず、ないだろう……君を再び目に映した時…どれだけ触れたいと思ったか……」
「!…アルフォンス……」
「その呼び方はやめてくれ。君にとってのアルフォンスは、僕じゃない」
そう言われてどうしようもなく胸が締め付けられた。
その言葉を否定する事が、私には出来ないから…
私にとってのアルフォンスが彼でないように、また彼にとっての私も私ではないんだ。
「ごめん…リーヴはリーヴだもんね。あの…よかったら、これ…受け取ってくれないかな?」
彼に差し出したのはリボンでラッピングされた小さな花束。
星のような形をした紫色が風に揺れている。
「…死者に贈り物をして何になる…」
「生者とか死者とか、関係ない。私は今ここにいるリーヴにこれを贈りたいの」
また、赤色が揺れた気がした。
それは花束からゆっくりと私へと移っていく。
その目を見たら、今度は心も揺れているのが分かるよ。
「本当に、君は…変わらないな。僕の知っているナマエのままだ……」
彼はポツリと呟くようにそう言うと、私の手から花束を受け取ってくれた。
それと入れ違うように今度は彼から一輪の花を渡されたのだ。
「え…リーヴ、これって…」
「これ以上、ここにはいられない。じゃあな」
振り返る事なくこの場を去っていく彼の背中をただ眺める事しか出来ない。
その姿は舞う花びらに掻き消されてしまったかのように、すぐ見えなくなってしまう。
一緒に過ごせたのはきっと10分も経っていない。
本当に少しだけ。
でも…私の心は不思議と満たされていた。
そして私は自然と手の中にある花へと目を向ける。
綺麗な赤色をしたその花。
アネモネの花だ。
この花言葉は…
「“君を愛す”……」
「もう戻って来たのね」
「十分だ。早く行くぞ」
「あら…その花……ふふ。貴方は幸せ者ね」
「?何の話だ」
「それの花言葉は…“変わらぬ愛”よ」
~end~
バレンタイン超英雄のリーヴとスラシルを見て思いついたお話です。
リーヴのお話はどれも切ない感じばかりになってしまう…笑
いつか甘いのも書いてみたいですね。
見覚えのある藍色の髪に、どこか面影を感じる“彼”の後ろ姿を。
もう、見失わないように。
「待って!」
ようやく捉えたその姿に叫んだ。
そのおかげで歩みを止めたけれど、こちらに振り返る事はない。
それでも私は背中に向かって声を掛ける。
「リーヴ…なんでしょう?それにスラシルも……」
名前を呼んだら、今度こそこちらを向いてくれた。
鋭さを宿した赤い瞳は確かに私の姿を捉えている。
「…何しにきた。俺達にはもう関わるな」
「どうして?折角また会えたのに…二人とも愛の祭りに参加しに来たんでしょう?」
私の質問に少しだけ間を置いた後、彼は何も言わずにまた歩みを進めてしまう。
慌てて駆け寄ると、私は彼の手を掴んだ。
温かみは感じない…冷たい大きな手。
不思議だな……冷たいはずなのに、私にとっては温かい。
「ねえ、待ってってば!」
「!」
少し彼の肩が震えた気がした。
表情は…見えないけれど。
「…少しなら、いいんじゃない?」
「ヴェロニカ…!?何を……」
ずっと私達の様子を見ていたスラシル…ヴェロニカ皇女がそう言った。
「もうここには長く居られないけれど…彼女と過ごすくらいなら、まだ時間はあるはずよ」
「馬鹿な事を…生者と関わるのは、もう……」
「ここで強がれば、貴方はまた後悔するんじゃない?」
彼女の言葉にリーヴは一瞬目を見開く。
赤い瞳が揺れている。
その一言に彼の心までもが揺れ動いたのかは…私には分からない。
「……すまない、ヴェロニカ。すぐに戻る」
「ええ。さっさと行ってらっしゃい」
私がリーヴの腕を掴んでいた手を今度は彼が掴んだ。
そして早歩きで場所を移動していく。
風で舞う花びらが少しだけ視界を遮ってしまう。
でも…私のすぐ目の前を歩く彼の姿だけははっきりと見えるから。
「あの、リーヴ…?」
人気のない所まで来た時、彼は漸く足を止める。
恐る恐る彼の名前を呼ぶと、こちらを振りいた彼と目が合った。
「……どうしてそうまでして僕に構うんだ。もう僕らは決別したはずだろう」
「そんな…こうしてまた会えて、私はすごく嬉しいよ。たとえ貴方は違っていたとしても……」
すると掴まれていた腕がスッと解放される。
それがちょっとだけ寂しく感じた。
「…嬉しくないはず、ないだろう……君を再び目に映した時…どれだけ触れたいと思ったか……」
「!…アルフォンス……」
「その呼び方はやめてくれ。君にとってのアルフォンスは、僕じゃない」
そう言われてどうしようもなく胸が締め付けられた。
その言葉を否定する事が、私には出来ないから…
私にとってのアルフォンスが彼でないように、また彼にとっての私も私ではないんだ。
「ごめん…リーヴはリーヴだもんね。あの…よかったら、これ…受け取ってくれないかな?」
彼に差し出したのはリボンでラッピングされた小さな花束。
星のような形をした紫色が風に揺れている。
「…死者に贈り物をして何になる…」
「生者とか死者とか、関係ない。私は今ここにいるリーヴにこれを贈りたいの」
また、赤色が揺れた気がした。
それは花束からゆっくりと私へと移っていく。
その目を見たら、今度は心も揺れているのが分かるよ。
「本当に、君は…変わらないな。僕の知っているナマエのままだ……」
彼はポツリと呟くようにそう言うと、私の手から花束を受け取ってくれた。
それと入れ違うように今度は彼から一輪の花を渡されたのだ。
「え…リーヴ、これって…」
「これ以上、ここにはいられない。じゃあな」
振り返る事なくこの場を去っていく彼の背中をただ眺める事しか出来ない。
その姿は舞う花びらに掻き消されてしまったかのように、すぐ見えなくなってしまう。
一緒に過ごせたのはきっと10分も経っていない。
本当に少しだけ。
でも…私の心は不思議と満たされていた。
そして私は自然と手の中にある花へと目を向ける。
綺麗な赤色をしたその花。
アネモネの花だ。
この花言葉は…
「“君を愛す”……」
「もう戻って来たのね」
「十分だ。早く行くぞ」
「あら…その花……ふふ。貴方は幸せ者ね」
「?何の話だ」
「それの花言葉は…“変わらぬ愛”よ」
~end~
バレンタイン超英雄のリーヴとスラシルを見て思いついたお話です。
リーヴのお話はどれも切ない感じばかりになってしまう…笑
いつか甘いのも書いてみたいですね。
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