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※サイアス目線
今日は愛の日…それは感謝を込めて親しい人へ贈り物をする日。
女性が男性に愛を伝える事もあるのだそう。
ですが…その逆が許されていない訳ではないはずです。
「彼女は…受け取ってくれるだろうか」
私の手には包装された一輪の花。
薄紅色をしたその花は小さいながらも凛としていて、私はこの花を見た時彼女…ナマエさんに贈ろうと決めた。
そしてこの花と共に私の想いも、と……
「サイアス!」
愛おしい声で名前を呼ばれ振り返れば、ナマエさんがこちらに駆け寄って来ていた。
「ごめんね、待たせちゃった…?」
「いえ、大丈夫です。こちらこそ急に呼び出してしまい申し訳ありません」
「私はいいの。えっと、どうしたの?」
私はその場で少し深呼吸をする。
そして覚悟を決めて後ろに隠していた花を彼女の前に差し出した。
「この花を貴女に…今日は愛の日なので、どうしても差し上げたかったのです。私の…貴女に対する気持ちです」
心臓がドクドクと脈打つのを感じながら私は彼女からの返事を静かに待つ。
どう…思ってくれたのでしょうか…
すると少しの間固まっていたナマエさんが、次の瞬間ぱあっと笑顔を見せて口を開いた。
「すごく素敵な花…ありがとう、サイアス!ずっと大切にするね」
「あ……」
花を受け取ってくれた彼女のその言葉で理解した。
私の想いまでは伝わらなかったようですね…
きっと感謝の気持ちとして受け取られたところでしょうか。
相変わらず鈍いところはナマエさんらしいといえばそうなのですが……
「あ、私もね…サイアスに渡したい物があるんだ」
「私に?」
左腕に下げていたバスケットから何かを取り出して手渡してくれたのは、綺麗にラッピングされたクッキーだった。
「味は保証出来ないかもしれないけど…食べてくれると嬉しいな…」
「何を言いますか。貴女からいただいたものは何でも嬉しいですよ」
「サイアス…ありがとう」
少し頬を赤らめながら微笑む彼女に胸が締め付けられる。
叶う事なら、その笑顔を私にだけ見せて欲しいですね……
「じゃあ、他の英雄達にも渡してくるね。また後で!」
忙しそうに走る彼女の後ろ姿を見ながら私は呆然とした。
他の英雄達にも……?
何を思ったのかナマエさんへと伸ばした手は届く事はなく、行き場を無くして空を切った。
「…私は何を考えているのでしょう……」
ナマエさんの恋人でも何でもない自分が、彼女を引き止める権利などあるはずが無い。
なにも私にだけ贈り物をするつもりでは無いのは少し考えれば分かったはず。
それほどに私は浮かれてしまっているという事でしょうか…
私はふと先程彼女からいただいたクッキーに目を落とした。
白色の袋に少し赤みがかったオレンジ色のリボンで包装されている。
ナマエさんらしさが出ているようで少し微笑ましくも思った。
「…とても、美味しいですね」
リボンを解き、クッキーを一枚口に運ぶと程よい甘さが口に広がる。
そして美味しさを感じると共にまた胸が締め付けられるのも感じたのだった。
あれから何かをする気分にはなれず、城内を一人歩いているとシャロン王女が前から歩いて来られた。
「あ、サイアスさん!こんにちは!」
「シャロン王女。御機嫌よう。…その手に持たれているのは……」
彼女の右手にあるものに目が止まり思わず聞いてしまった。
「あ、これですか?さっきナマエさんからいただいたんですよ!なんでも、ナマエさんの元いた世界では本命やそうでない方関係無しに贈り物をするそうです」
「本命ではない方にも…?」
「はい。それ、ひょっとしてサイアスさんもナマエさんからいただいたんですか?」
シャロン王女がそう聞いてきた事で我に帰り私は慌てて頷く。
「あっあぁ…はい。私も先程いただきました」
「やっぱり!それにしてもサイアスさんの包装…私のと比べると大分力が入ってますね」
そう言う彼女がもらったクッキーの包装は、透明な袋に小さな青色のリボンがされてるものだった。
そう言われてみれば…
「きっとサイアスさんはナマエさんにとって特別な人だからでしょうかね!」
「ただの偶然ではないでしょうか…いくら私がそれを望んでいるからといって、そんな都合の良い事があるはず…」
「…だそうですよ、ナマエさん!」
シャロン王女が突然そう言いながら横にずれると、その後ろの物陰からナマエさんが姿を現したのだ。
私は固まってしまったかのように彼女から目が離せないでいた。
「ナマエ、さん…?いらっしゃったのですか?」
「うん、最初から…ごめんね……」
私と彼女の間には何とも言えない空気が流れ沈黙が訪れる中、シャロン王女が突如口を開いた。
「では、私は用事がありますのでこれにて撤退致します!」
敬礼をするとシャロン王女はこの場から足早に去って行ってしまう。
すると次はナマエさんが口を開いた。
「その贈り物の意味、貴方にだけはどうしても知ってもらいたくて…こんな真似しておいて申し訳ないんだけど……」
「では…これは本当に…?」
「……私は…サイアスの事が好きです」
顔を赤くさせながらも、私の目を真っ直ぐに見つめながら彼女は静かにそう言った。
一瞬、理解が追いつかなくなる。
夢にまで見たあの都合の良い出来事が…今本当に起きている……?
「ああ、ナマエさん…私が今日どれ程貴女からその言葉を聞けないかと思った事か…まさか実現するなんて夢にも思いませんでした」
「えっ…それって、つまり…」
「ふふ、まだ気付かれていませんでしたか?私は貴女よりも先に想いを届けたつもりだったのですが…」
私が贈ったあの薄紅色の花をまだ持ってくれている彼女の手にそっと手を触れた。
ナマエさんはそれでやっと気付いてくれたのか、より一層顔を赤くさせてあたふたとしだす。
「うっ嘘…!?そんな意味があったなんて…私、なんて事…っ!」
「いえ、いいんです。こうして貴女の気持ちも知れたのですから」
私がそう笑って言えば、彼女も落ち着きを取り戻して笑ってくれた。
また、あの時の笑顔を見せてくれましたね…
「もしこれからお時間ありましたら、ナマエさんのくれたクッキーを一緒に食べませんか?」
「私も?えっと、いいのかな…」
「もちろんです。とても美味しいですから」
「!…うん。じゃあ、一緒に食べよっか!」
自然とお互いの手を取り合って二人並んで歩き出す。
この先もずっと、この手が離れる事がありませんように……
私はそんな事を思いながらを繋いだ手の温もりを感じていたのだった。
~end~
バレンタインデーの起源を調べていたらサイアスで書きたくなってしまい書いちゃいました笑
今日は愛の日…それは感謝を込めて親しい人へ贈り物をする日。
女性が男性に愛を伝える事もあるのだそう。
ですが…その逆が許されていない訳ではないはずです。
「彼女は…受け取ってくれるだろうか」
私の手には包装された一輪の花。
薄紅色をしたその花は小さいながらも凛としていて、私はこの花を見た時彼女…ナマエさんに贈ろうと決めた。
そしてこの花と共に私の想いも、と……
「サイアス!」
愛おしい声で名前を呼ばれ振り返れば、ナマエさんがこちらに駆け寄って来ていた。
「ごめんね、待たせちゃった…?」
「いえ、大丈夫です。こちらこそ急に呼び出してしまい申し訳ありません」
「私はいいの。えっと、どうしたの?」
私はその場で少し深呼吸をする。
そして覚悟を決めて後ろに隠していた花を彼女の前に差し出した。
「この花を貴女に…今日は愛の日なので、どうしても差し上げたかったのです。私の…貴女に対する気持ちです」
心臓がドクドクと脈打つのを感じながら私は彼女からの返事を静かに待つ。
どう…思ってくれたのでしょうか…
すると少しの間固まっていたナマエさんが、次の瞬間ぱあっと笑顔を見せて口を開いた。
「すごく素敵な花…ありがとう、サイアス!ずっと大切にするね」
「あ……」
花を受け取ってくれた彼女のその言葉で理解した。
私の想いまでは伝わらなかったようですね…
きっと感謝の気持ちとして受け取られたところでしょうか。
相変わらず鈍いところはナマエさんらしいといえばそうなのですが……
「あ、私もね…サイアスに渡したい物があるんだ」
「私に?」
左腕に下げていたバスケットから何かを取り出して手渡してくれたのは、綺麗にラッピングされたクッキーだった。
「味は保証出来ないかもしれないけど…食べてくれると嬉しいな…」
「何を言いますか。貴女からいただいたものは何でも嬉しいですよ」
「サイアス…ありがとう」
少し頬を赤らめながら微笑む彼女に胸が締め付けられる。
叶う事なら、その笑顔を私にだけ見せて欲しいですね……
「じゃあ、他の英雄達にも渡してくるね。また後で!」
忙しそうに走る彼女の後ろ姿を見ながら私は呆然とした。
他の英雄達にも……?
何を思ったのかナマエさんへと伸ばした手は届く事はなく、行き場を無くして空を切った。
「…私は何を考えているのでしょう……」
ナマエさんの恋人でも何でもない自分が、彼女を引き止める権利などあるはずが無い。
なにも私にだけ贈り物をするつもりでは無いのは少し考えれば分かったはず。
それほどに私は浮かれてしまっているという事でしょうか…
私はふと先程彼女からいただいたクッキーに目を落とした。
白色の袋に少し赤みがかったオレンジ色のリボンで包装されている。
ナマエさんらしさが出ているようで少し微笑ましくも思った。
「…とても、美味しいですね」
リボンを解き、クッキーを一枚口に運ぶと程よい甘さが口に広がる。
そして美味しさを感じると共にまた胸が締め付けられるのも感じたのだった。
あれから何かをする気分にはなれず、城内を一人歩いているとシャロン王女が前から歩いて来られた。
「あ、サイアスさん!こんにちは!」
「シャロン王女。御機嫌よう。…その手に持たれているのは……」
彼女の右手にあるものに目が止まり思わず聞いてしまった。
「あ、これですか?さっきナマエさんからいただいたんですよ!なんでも、ナマエさんの元いた世界では本命やそうでない方関係無しに贈り物をするそうです」
「本命ではない方にも…?」
「はい。それ、ひょっとしてサイアスさんもナマエさんからいただいたんですか?」
シャロン王女がそう聞いてきた事で我に帰り私は慌てて頷く。
「あっあぁ…はい。私も先程いただきました」
「やっぱり!それにしてもサイアスさんの包装…私のと比べると大分力が入ってますね」
そう言う彼女がもらったクッキーの包装は、透明な袋に小さな青色のリボンがされてるものだった。
そう言われてみれば…
「きっとサイアスさんはナマエさんにとって特別な人だからでしょうかね!」
「ただの偶然ではないでしょうか…いくら私がそれを望んでいるからといって、そんな都合の良い事があるはず…」
「…だそうですよ、ナマエさん!」
シャロン王女が突然そう言いながら横にずれると、その後ろの物陰からナマエさんが姿を現したのだ。
私は固まってしまったかのように彼女から目が離せないでいた。
「ナマエ、さん…?いらっしゃったのですか?」
「うん、最初から…ごめんね……」
私と彼女の間には何とも言えない空気が流れ沈黙が訪れる中、シャロン王女が突如口を開いた。
「では、私は用事がありますのでこれにて撤退致します!」
敬礼をするとシャロン王女はこの場から足早に去って行ってしまう。
すると次はナマエさんが口を開いた。
「その贈り物の意味、貴方にだけはどうしても知ってもらいたくて…こんな真似しておいて申し訳ないんだけど……」
「では…これは本当に…?」
「……私は…サイアスの事が好きです」
顔を赤くさせながらも、私の目を真っ直ぐに見つめながら彼女は静かにそう言った。
一瞬、理解が追いつかなくなる。
夢にまで見たあの都合の良い出来事が…今本当に起きている……?
「ああ、ナマエさん…私が今日どれ程貴女からその言葉を聞けないかと思った事か…まさか実現するなんて夢にも思いませんでした」
「えっ…それって、つまり…」
「ふふ、まだ気付かれていませんでしたか?私は貴女よりも先に想いを届けたつもりだったのですが…」
私が贈ったあの薄紅色の花をまだ持ってくれている彼女の手にそっと手を触れた。
ナマエさんはそれでやっと気付いてくれたのか、より一層顔を赤くさせてあたふたとしだす。
「うっ嘘…!?そんな意味があったなんて…私、なんて事…っ!」
「いえ、いいんです。こうして貴女の気持ちも知れたのですから」
私がそう笑って言えば、彼女も落ち着きを取り戻して笑ってくれた。
また、あの時の笑顔を見せてくれましたね…
「もしこれからお時間ありましたら、ナマエさんのくれたクッキーを一緒に食べませんか?」
「私も?えっと、いいのかな…」
「もちろんです。とても美味しいですから」
「!…うん。じゃあ、一緒に食べよっか!」
自然とお互いの手を取り合って二人並んで歩き出す。
この先もずっと、この手が離れる事がありませんように……
私はそんな事を思いながらを繋いだ手の温もりを感じていたのだった。
~end~
バレンタインデーの起源を調べていたらサイアスで書きたくなってしまい書いちゃいました笑
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