第二章 -共に戦場で-
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あれから私達は砦に戻り、大神殿マナイルに向かうために支度を進めた。
そして支度を済ませて砦を出発して数刻、大神殿マナイルに着き私達は神使様に対面した。
初めてお目にかかった神使様は、想像よりも幼くて正直少し驚いたけど…
でも、どこか威厳があって素敵な方に見えた。
「よくやってくれた、アイク………!そなたの後ろにおるのは…」
「ああ…あの後無事に目が覚めた、リルアだ」
私はアイクの後から少し顔を覗かせる程度にしていると、神使様が気付かれたのか私の顔を見るとこちらに駆け寄ってきた。
「そうか、そなたも……っ、そなたにも、謝らなければならない…こんな言葉では済まされる訳ないとは分かっているが…本当に…本当にすまなかった………」
神使様は私に跪かれながらそう謝罪の言葉を述べられた。
彼女は……20年前のセリノスの森で起きた事件の事を謝られているのだろう。
私はそんな神使様を立つように促すと、そのまま彼女の両手を握った。
「いいんです、もう。神使様が悪くないのは知っています。あなたのそのお気持ちだけで十分です。だから…顔をあげてください」
「!そなたも…あの鷺の姫と同じ事を言ってくれるのじゃな……」
「私は、私が思った事を素直にお伝えしただけです。神使様…もう、私達の事で苦しまないでください」
「っ…ありがとう……」
その後次々に話が進んでいき、アイクはクラスチェンジするためエリンシア姫に跪いた。
「なんじ、アイク__クリミア王女の名におき騎士としての地位と爵位を与えるものとする…」
エリンシア様がそう唱えると、アイクはその瞬間ロードにクラスチェンジした。
その姿がかっこよくて思わず見とれてしまう。
「何か妙な感じだな」
「ほう、それなりに様になっておるようじゃな」
「お似合いですよ」
「ええ、とても…」
「うん、すごく似合う!」
「そうか?まあ、別にどうでもいいけどな」
その場にいたみんなが口々にアイクを褒めるも、当の本人は特に何も感じていないようだった。
マナイルで用を済ませた後は、次の目的地に向かうためタニスさんという聖天馬騎士の人も加わり同行した。
「くしゅんっ…」
目的地までの道のりは雪が降っていて寒かった。
「寒いのか?」
「あ、アイク…うん、ちょっと…」
そんな私の様子に気が付いてくれたのか、アイクが声を掛けてくれた。
「これを羽織っておけ」
彼は自分が身に付けているマントを取ると私に被せてきた。
「え…でもアイクのマントだよ…?」
「俺はいいんだ。だから遠慮せずに羽織っておけ」
「アイク…ありがとう」
私はアイクの優しさに嬉しくなって微笑んだ。
なんだろう…胸が幸せな気持ちに満ちていく、この感じ…
私は感じた事もない感情に少しだけ戸惑っていた。
目的地であるデイン王国に辿り着くには今目の前にある長城を越えなければならない。
そこには当然敵軍が行く手を阻んでいる訳で…
「リルア、これから俺達は長城を陥落させに出陣する。危険だからあんたはタカ王達が来るまでエリンシア姫と一緒に本営で待機していてくれ」
「…うん……」
アイクの言葉に首を縦に振ったけど…
私、このまま守られる側で…ただティバーンが迎えに来るのを待つだけで本当にいいの…?
本当は……
すると、そこへエリンシア様が本営から出てきた。
「アイク様…ご出陣なさるのですか?」
エリンシア様は不安そうな瞳でアイクにそう聞いていた。
「そうだ。敵はまだ、俺たちが動き出したことを知らないはずだ。奇襲をかけて、一気に長城を陥落させる。姫は本営で待機していてくれ」
「はい…」
それでも不安なのか、彼女は顔を曇らせている。
「そんな不安そうな顔しないで、どっしり構えてろ。あんたはこの軍の旗印なんだ」
「それは分かっています。でも…アイク様……」
「軍としてぶつかるのは初めてでも、デイン軍とは何度かやりあっている。…勝ってくるさ。初戦から負けるわけにはいかないからな」
「…信じてお待ちしています。どうか、お気をつけて……」
私は二人が話しているところを見ていたら何故だか胸が締め付けられた。
私、今なんで……
「じゃあ、行くか。全軍出陣…」
アイクが出陣の合図を出そうとしたら、急にエリンシア様が上空を見上げ何かに気づいたように声をあげた。
「待ってください、アイク様!…上空に何か……!」
上空を見るとティバーン達がこちらに向かって飛んできていた。
「ティバーン!」
「よぉ、リルア。迎えが少し遅くなっちまったな……いよいよクリミア軍としてデインに向かうんだってな」
「そっちも、国に戻るんだろう?白サギの兄妹も一緒に」
「俺は、そのつもりだったんだが…」
ティバーンは何故だか微妙な表情をしている。
「どうしてもお前たちについて行きたいって、だだをこねる奴がいてな」
すると、リュシオンお兄ちゃんが前に出てきた。
「…ベオクが礼をつくしたのです。我らも、義に背くわけにはいきません。そうだろう、リアーネ、リルア?」
「――!」
お兄ちゃん……そういうところも昔から変わらないな…
「アイク、といったな」
「ああ」
「私も妹たちもお前に危機を救われた。我らサギの民は、義と礼を重んじる。お前に恩を返さなくてはならない」
「別に無理をしなくてもいい」
「私たちは【呪歌謡い】…戦うことはできないが、相手に力を与えることができる。お前が望むのであれば…私はお前と共に行く。妹たちの分も、恩に報いよう」
「……」
アイクは少し考えたあと、口を開いた。
「せっかく会えた妹たちの傍にいてやらなくていいのか?」
え…それってやっぱり私も待機ってことだよね?
そんな…私もみんなの役に立ちたいよ……
たとえ戦えなくても…お兄ちゃんが言うように、歌でみんなを助けたい!
「リアーネも承知しているし、リルアも……」
「ちょっと待って…!」
「リルア?」
私が呼び止めると、アイク達は一斉に私の方を見た。
「わっ…私も一緒に戦う!」
「はあ?何言ってるんだ。女であってしかも鷺の民のお前を戦場に出せるわけがないだろ。それに狙われる可能性が十分ありすぎて危険だ」
ティバーンが真剣な顔で説得してくる。
「でも、私も歌で皆の役に立ちたいの!お願い!」
私は手を合わせてティバーンにお願いする。
「あのな…」
「俺は構わない」
「アイク…?」
アイクは私を見てそう言った。
「リルア、戦場に出るなら俺があんたを守る。必ず敵から触れさせないようにする」
「アイク…」
「はあ…本当にお前にも敵わないな…くれぐれも気を付けるんだぞ?」
「!ありがとう!!」
私は嬉しさで飛び上がりそうだった。
これで、みんなの役に立てる…!
「全く…何でこう兄妹似てるのか…」
ティバーンが呆れたように言った。
「…話を戻すが、リュシオンとリルアもいいのか?」
「ああ、私たちはアイクの言う通りにするまでだ」
「そうか。だったら頼む」
「わかった。我が民の誇りにかけて、力になることを誓う」
「私も精一杯頑張るね!」
「決まりだな。俺からも護衛をつけよう。ヤナフ!」
「はい、はーい!」
「クリミア軍に同行し、リュシオンとリルアを守れ」
「お任せください!」
「ウルキ、お前もだ。いいな?」
「…もちろんです」
どうやらヤナフとウルキも同行してくれるみたい。
二人も居てくれるなら心強いなぁ…
「ティバーン!そんなことまではしてもらえない…!!リアーネと…父上のこともお願いしているのに……」
お兄ちゃんが申し訳なさそうに言う。
「この20年…お前がどんな気持ちでフェニキスに居たか知っている。こんなことしかしてやれなくて、悪い」
「…ティバーン。感謝します。心から…あなたに」
「フェニキス王、二人のことは任せてくれ。クリミアを取り戻したら必ず無事、フェニキスに返す」
「その言葉を信じよう。これでお前たちとタカの民、サギの民の間には深い絆ができた。もし、困った時は俺を呼ぶがいい。何があっても飛んでいこう。文字通りな」
ティバーンはアイクから視線を外すと、私とお兄ちゃんに向き直る。
「じゃあ、リュシオンにリルア、また会おう。じゃあな」
ティバーンはそう言ってお姉ちゃんを連れてフェニキスに戻って行った。
そして支度を済ませて砦を出発して数刻、大神殿マナイルに着き私達は神使様に対面した。
初めてお目にかかった神使様は、想像よりも幼くて正直少し驚いたけど…
でも、どこか威厳があって素敵な方に見えた。
「よくやってくれた、アイク………!そなたの後ろにおるのは…」
「ああ…あの後無事に目が覚めた、リルアだ」
私はアイクの後から少し顔を覗かせる程度にしていると、神使様が気付かれたのか私の顔を見るとこちらに駆け寄ってきた。
「そうか、そなたも……っ、そなたにも、謝らなければならない…こんな言葉では済まされる訳ないとは分かっているが…本当に…本当にすまなかった………」
神使様は私に跪かれながらそう謝罪の言葉を述べられた。
彼女は……20年前のセリノスの森で起きた事件の事を謝られているのだろう。
私はそんな神使様を立つように促すと、そのまま彼女の両手を握った。
「いいんです、もう。神使様が悪くないのは知っています。あなたのそのお気持ちだけで十分です。だから…顔をあげてください」
「!そなたも…あの鷺の姫と同じ事を言ってくれるのじゃな……」
「私は、私が思った事を素直にお伝えしただけです。神使様…もう、私達の事で苦しまないでください」
「っ…ありがとう……」
その後次々に話が進んでいき、アイクはクラスチェンジするためエリンシア姫に跪いた。
「なんじ、アイク__クリミア王女の名におき騎士としての地位と爵位を与えるものとする…」
エリンシア様がそう唱えると、アイクはその瞬間ロードにクラスチェンジした。
その姿がかっこよくて思わず見とれてしまう。
「何か妙な感じだな」
「ほう、それなりに様になっておるようじゃな」
「お似合いですよ」
「ええ、とても…」
「うん、すごく似合う!」
「そうか?まあ、別にどうでもいいけどな」
その場にいたみんなが口々にアイクを褒めるも、当の本人は特に何も感じていないようだった。
マナイルで用を済ませた後は、次の目的地に向かうためタニスさんという聖天馬騎士の人も加わり同行した。
「くしゅんっ…」
目的地までの道のりは雪が降っていて寒かった。
「寒いのか?」
「あ、アイク…うん、ちょっと…」
そんな私の様子に気が付いてくれたのか、アイクが声を掛けてくれた。
「これを羽織っておけ」
彼は自分が身に付けているマントを取ると私に被せてきた。
「え…でもアイクのマントだよ…?」
「俺はいいんだ。だから遠慮せずに羽織っておけ」
「アイク…ありがとう」
私はアイクの優しさに嬉しくなって微笑んだ。
なんだろう…胸が幸せな気持ちに満ちていく、この感じ…
私は感じた事もない感情に少しだけ戸惑っていた。
目的地であるデイン王国に辿り着くには今目の前にある長城を越えなければならない。
そこには当然敵軍が行く手を阻んでいる訳で…
「リルア、これから俺達は長城を陥落させに出陣する。危険だからあんたはタカ王達が来るまでエリンシア姫と一緒に本営で待機していてくれ」
「…うん……」
アイクの言葉に首を縦に振ったけど…
私、このまま守られる側で…ただティバーンが迎えに来るのを待つだけで本当にいいの…?
本当は……
すると、そこへエリンシア様が本営から出てきた。
「アイク様…ご出陣なさるのですか?」
エリンシア様は不安そうな瞳でアイクにそう聞いていた。
「そうだ。敵はまだ、俺たちが動き出したことを知らないはずだ。奇襲をかけて、一気に長城を陥落させる。姫は本営で待機していてくれ」
「はい…」
それでも不安なのか、彼女は顔を曇らせている。
「そんな不安そうな顔しないで、どっしり構えてろ。あんたはこの軍の旗印なんだ」
「それは分かっています。でも…アイク様……」
「軍としてぶつかるのは初めてでも、デイン軍とは何度かやりあっている。…勝ってくるさ。初戦から負けるわけにはいかないからな」
「…信じてお待ちしています。どうか、お気をつけて……」
私は二人が話しているところを見ていたら何故だか胸が締め付けられた。
私、今なんで……
「じゃあ、行くか。全軍出陣…」
アイクが出陣の合図を出そうとしたら、急にエリンシア様が上空を見上げ何かに気づいたように声をあげた。
「待ってください、アイク様!…上空に何か……!」
上空を見るとティバーン達がこちらに向かって飛んできていた。
「ティバーン!」
「よぉ、リルア。迎えが少し遅くなっちまったな……いよいよクリミア軍としてデインに向かうんだってな」
「そっちも、国に戻るんだろう?白サギの兄妹も一緒に」
「俺は、そのつもりだったんだが…」
ティバーンは何故だか微妙な表情をしている。
「どうしてもお前たちについて行きたいって、だだをこねる奴がいてな」
すると、リュシオンお兄ちゃんが前に出てきた。
「…ベオクが礼をつくしたのです。我らも、義に背くわけにはいきません。そうだろう、リアーネ、リルア?」
「――!」
お兄ちゃん……そういうところも昔から変わらないな…
「アイク、といったな」
「ああ」
「私も妹たちもお前に危機を救われた。我らサギの民は、義と礼を重んじる。お前に恩を返さなくてはならない」
「別に無理をしなくてもいい」
「私たちは【呪歌謡い】…戦うことはできないが、相手に力を与えることができる。お前が望むのであれば…私はお前と共に行く。妹たちの分も、恩に報いよう」
「……」
アイクは少し考えたあと、口を開いた。
「せっかく会えた妹たちの傍にいてやらなくていいのか?」
え…それってやっぱり私も待機ってことだよね?
そんな…私もみんなの役に立ちたいよ……
たとえ戦えなくても…お兄ちゃんが言うように、歌でみんなを助けたい!
「リアーネも承知しているし、リルアも……」
「ちょっと待って…!」
「リルア?」
私が呼び止めると、アイク達は一斉に私の方を見た。
「わっ…私も一緒に戦う!」
「はあ?何言ってるんだ。女であってしかも鷺の民のお前を戦場に出せるわけがないだろ。それに狙われる可能性が十分ありすぎて危険だ」
ティバーンが真剣な顔で説得してくる。
「でも、私も歌で皆の役に立ちたいの!お願い!」
私は手を合わせてティバーンにお願いする。
「あのな…」
「俺は構わない」
「アイク…?」
アイクは私を見てそう言った。
「リルア、戦場に出るなら俺があんたを守る。必ず敵から触れさせないようにする」
「アイク…」
「はあ…本当にお前にも敵わないな…くれぐれも気を付けるんだぞ?」
「!ありがとう!!」
私は嬉しさで飛び上がりそうだった。
これで、みんなの役に立てる…!
「全く…何でこう兄妹似てるのか…」
ティバーンが呆れたように言った。
「…話を戻すが、リュシオンとリルアもいいのか?」
「ああ、私たちはアイクの言う通りにするまでだ」
「そうか。だったら頼む」
「わかった。我が民の誇りにかけて、力になることを誓う」
「私も精一杯頑張るね!」
「決まりだな。俺からも護衛をつけよう。ヤナフ!」
「はい、はーい!」
「クリミア軍に同行し、リュシオンとリルアを守れ」
「お任せください!」
「ウルキ、お前もだ。いいな?」
「…もちろんです」
どうやらヤナフとウルキも同行してくれるみたい。
二人も居てくれるなら心強いなぁ…
「ティバーン!そんなことまではしてもらえない…!!リアーネと…父上のこともお願いしているのに……」
お兄ちゃんが申し訳なさそうに言う。
「この20年…お前がどんな気持ちでフェニキスに居たか知っている。こんなことしかしてやれなくて、悪い」
「…ティバーン。感謝します。心から…あなたに」
「フェニキス王、二人のことは任せてくれ。クリミアを取り戻したら必ず無事、フェニキスに返す」
「その言葉を信じよう。これでお前たちとタカの民、サギの民の間には深い絆ができた。もし、困った時は俺を呼ぶがいい。何があっても飛んでいこう。文字通りな」
ティバーンはアイクから視線を外すと、私とお兄ちゃんに向き直る。
「じゃあ、リュシオンにリルア、また会おう。じゃあな」
ティバーンはそう言ってお姉ちゃんを連れてフェニキスに戻って行った。