負けられない想い
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「エフラム様、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
戦闘が終わり、エフラムと話しているのは私ではない…特務機関の一兵士である別の女性。
私はその様子を少し離れたところから眺めていた。
「おいおい、どうしたんだ?そんな辛気臭い顔して」
「ライ…」
空色の尻尾をゆらゆらと揺らしながら声を掛けてくれたのはライだ。
私は首を横に振りながら答える。
「別に何でもないよ」
「…まあ、聞くまでもないか。最近仲良いもんな、あの二人」
その言葉に自然とまたエフラム達に視線が向いてしまう。
「あ…」
その時、エフラムがこちらに顔を向けて目が合った。
私は何だか気まずくてすぐに目をそらしてしまう。
何…そらしてるんだろう……
臆病な自分がたまらなく嫌になる。
「今日はもう戦闘もないし、美味いものでも食べに行くか!」
「ちょっ、ライ…!」
彼に肩を組まれてお城へと歩き出す。
この時、エフラムが私達の事を見つめていたなんて気付かなかったんだ…
あの後、私は言葉通りライに連れられて城下町にある酒場に来ていた。
「ほら、たくさん食えよ!お前もこの軍の将なんだから体力つけないとな」
「うん…そうだね」
折角ライがこうして気分転換に連れてきてくれたんだ。
今は…忘れよう……
そう思って料理に手をつけようとした時だった。
「…ナマエ様?」
私に声を掛けてきたのはあの女性…エフラムと話していた人だ。
思わず手が止まり少し驚きながらも彼女の顔を見る。
「お食事中に失礼致しました。貴女様がこのような所に来られるとは思わなかったもので……先での戦闘も見事な指揮でした」
「あ…ありがとう、ございます…」
褒められた事は嬉しいはずなのに…
素直に喜ぶ事が出来ない自分が嫌になる。
「ああ、それと…一つお伝えしたい事があります」
「伝えたい事…?」
「これからエフラム様の事は私がお守り致しますので、どうかご心配はなさらないでください」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
ただ…少し心臓を掴まれたような感覚がしただけ……
「英雄様はとても重要な戦力です。その方達をお守りするのも私達特務機関兵士の役目でもあります。なので、ナマエ様はご心配なさらず指示を出してください」
「…横から失礼。その志は立派だけどさ、どうしてエフラム王子に限定するんだ?それをわざわざナマエに言うなんて」
私が何も言えずにいると、ライが見兼ねて彼女にそう問い掛ける。
彼女は顔色ひとつ変えずに淡々と話していく。
「エフラム様はナマエ様にとって特別なお方と見受けられます。そんな重要な英雄様はより守りを固めるべきで…」
「それが本当の理由か?」
ライの言葉に一瞬女性は反応した。
その後すぐにフッと笑うと口を開く。
「…ただの一兵士の私がエフラム様にお近付きになれる機会は戦場のみ。それ以外で会える機会なんてまずないわ。召喚士、なんて…突然現れた得体の知れないお偉い様は良いですよね?どんな英雄様達ともずっと一緒にいられて。私はそんな卑怯な立場ではないですから羨ましいですわ」
急な彼女の豹変ぶりに驚きを隠せない。
これが…この人の、本音……?
するとライが彼女から私を庇うかのように私の前に立った。
「最初からそうやって本音を話せば分かりやすかったのにな。…つまり、あんたは得体の知れないお偉い様に嫉妬してるって訳だ?」
「嫉妬?いいえ、別に。今では私の方がエフラム様と親しい仲なのだから、嫉妬なんてする必要がないもの。時期にエフラム様は私の…」
冷たい笑みを浮かべる彼女に私はその場に立ち上がった。
「あの…貴女が私の事をどう思おうと構いません。ただ……彼への気持ちは負けないです。何と言われようとも」
急な発言に驚いたのか彼女は少し目を見開いて私の顔を見る。
そして次に私をキッと睨めつけた。
「ふん…そうやって偉そうな口を叩いておけばいいわ。どうせ何も出来ない臆病者なんだから」
「さっきから言わせておけば…」
「ライ、いいの…」
吐き捨てるようにこの場を後にする彼女を追いかけようとしたライを止めた。
「ナマエ…いいのか?」
「うん…ここで言い争っても何もならないから。…とりあえず私達も戻ろうか」
私はそれだけ言うとライと共にお店を後にする。
お城までの帰り道、私はライに声を掛けた。
「ライ、ありがとう」
「ん?」
「さっき、私のために庇ってくれようとしたよね。凄く嬉しかった」
私が笑ってそうお礼を伝えれば、彼はどこか照れ臭そうに鼻を掻く。
「そんな大したことじゃないって。自分の好きな…」
彼は何か言い掛けたが、慌てて口を噤んで咳払いをした。
「?ライ?」
「あー…その、なんだ……大事な仲間をあんな風に言われて黙ってられるような性格じゃないもんでね」
「ふふ、そういうところライらしいな」
私達は目が合うとお互いに笑い合う。
私の心がライのおかげで少し軽くなった気がしたんだ。
「ああ、お疲れ」
戦闘が終わり、エフラムと話しているのは私ではない…特務機関の一兵士である別の女性。
私はその様子を少し離れたところから眺めていた。
「おいおい、どうしたんだ?そんな辛気臭い顔して」
「ライ…」
空色の尻尾をゆらゆらと揺らしながら声を掛けてくれたのはライだ。
私は首を横に振りながら答える。
「別に何でもないよ」
「…まあ、聞くまでもないか。最近仲良いもんな、あの二人」
その言葉に自然とまたエフラム達に視線が向いてしまう。
「あ…」
その時、エフラムがこちらに顔を向けて目が合った。
私は何だか気まずくてすぐに目をそらしてしまう。
何…そらしてるんだろう……
臆病な自分がたまらなく嫌になる。
「今日はもう戦闘もないし、美味いものでも食べに行くか!」
「ちょっ、ライ…!」
彼に肩を組まれてお城へと歩き出す。
この時、エフラムが私達の事を見つめていたなんて気付かなかったんだ…
あの後、私は言葉通りライに連れられて城下町にある酒場に来ていた。
「ほら、たくさん食えよ!お前もこの軍の将なんだから体力つけないとな」
「うん…そうだね」
折角ライがこうして気分転換に連れてきてくれたんだ。
今は…忘れよう……
そう思って料理に手をつけようとした時だった。
「…ナマエ様?」
私に声を掛けてきたのはあの女性…エフラムと話していた人だ。
思わず手が止まり少し驚きながらも彼女の顔を見る。
「お食事中に失礼致しました。貴女様がこのような所に来られるとは思わなかったもので……先での戦闘も見事な指揮でした」
「あ…ありがとう、ございます…」
褒められた事は嬉しいはずなのに…
素直に喜ぶ事が出来ない自分が嫌になる。
「ああ、それと…一つお伝えしたい事があります」
「伝えたい事…?」
「これからエフラム様の事は私がお守り致しますので、どうかご心配はなさらないでください」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
ただ…少し心臓を掴まれたような感覚がしただけ……
「英雄様はとても重要な戦力です。その方達をお守りするのも私達特務機関兵士の役目でもあります。なので、ナマエ様はご心配なさらず指示を出してください」
「…横から失礼。その志は立派だけどさ、どうしてエフラム王子に限定するんだ?それをわざわざナマエに言うなんて」
私が何も言えずにいると、ライが見兼ねて彼女にそう問い掛ける。
彼女は顔色ひとつ変えずに淡々と話していく。
「エフラム様はナマエ様にとって特別なお方と見受けられます。そんな重要な英雄様はより守りを固めるべきで…」
「それが本当の理由か?」
ライの言葉に一瞬女性は反応した。
その後すぐにフッと笑うと口を開く。
「…ただの一兵士の私がエフラム様にお近付きになれる機会は戦場のみ。それ以外で会える機会なんてまずないわ。召喚士、なんて…突然現れた得体の知れないお偉い様は良いですよね?どんな英雄様達ともずっと一緒にいられて。私はそんな卑怯な立場ではないですから羨ましいですわ」
急な彼女の豹変ぶりに驚きを隠せない。
これが…この人の、本音……?
するとライが彼女から私を庇うかのように私の前に立った。
「最初からそうやって本音を話せば分かりやすかったのにな。…つまり、あんたは得体の知れないお偉い様に嫉妬してるって訳だ?」
「嫉妬?いいえ、別に。今では私の方がエフラム様と親しい仲なのだから、嫉妬なんてする必要がないもの。時期にエフラム様は私の…」
冷たい笑みを浮かべる彼女に私はその場に立ち上がった。
「あの…貴女が私の事をどう思おうと構いません。ただ……彼への気持ちは負けないです。何と言われようとも」
急な発言に驚いたのか彼女は少し目を見開いて私の顔を見る。
そして次に私をキッと睨めつけた。
「ふん…そうやって偉そうな口を叩いておけばいいわ。どうせ何も出来ない臆病者なんだから」
「さっきから言わせておけば…」
「ライ、いいの…」
吐き捨てるようにこの場を後にする彼女を追いかけようとしたライを止めた。
「ナマエ…いいのか?」
「うん…ここで言い争っても何もならないから。…とりあえず私達も戻ろうか」
私はそれだけ言うとライと共にお店を後にする。
お城までの帰り道、私はライに声を掛けた。
「ライ、ありがとう」
「ん?」
「さっき、私のために庇ってくれようとしたよね。凄く嬉しかった」
私が笑ってそうお礼を伝えれば、彼はどこか照れ臭そうに鼻を掻く。
「そんな大したことじゃないって。自分の好きな…」
彼は何か言い掛けたが、慌てて口を噤んで咳払いをした。
「?ライ?」
「あー…その、なんだ……大事な仲間をあんな風に言われて黙ってられるような性格じゃないもんでね」
「ふふ、そういうところライらしいな」
私達は目が合うとお互いに笑い合う。
私の心がライのおかげで少し軽くなった気がしたんだ。
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