変わらぬ恋心

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「はぁ……っ…」


ある日の昼下がり、ナマエは酷い目眩や頭痛に襲われていた。

しかし今日は出撃要請があったため、何とか保っている意識の中で城の廊下を壁伝いに歩いていた。



「…ナマエさん?え、どうしたんですか!?」



その時、ちょうど廊下を歩いていたシャロンがナマエに気付いて駆けつけて来た。

「シャロン…大丈夫、気にしないで……」
「この状態のどこが大丈夫なんですか!一度お部屋に戻りましょう!!」

明らかに体調が悪いナマエを心配して、シャロンは彼女を支えながら部屋へと連れて行く。


「シっシャロン…心配してくれるのは嬉しいんだけど、これから出撃準備が……」
「何言ってるんですか!!戦いよりもナマエさんの身体第一です!この事は私から隊長に伝えておきますから、ナマエさんはベッドで休んでいてください」


シャロンはそれだけ言うと一先ず部屋を後にしてアンナの元へと走って行った。

そしてナマエの体調不良を伝えると、今回の戦いは代わりを立てる事が決まりシャロンはもう一度ナマエの部屋へと戻る。


「これでもう出撃する必要は無くなったので、ナマエさんは安静にしていてください!」
「ごめんね…迷惑掛けちゃって……」
「気にしないでください。逆にこっちが謝るべきです…こんな状態になるまでナマエさんに忙しく動き回らせてしまって……本当にごめんなさい!!」

勢いよく頭を下げるシャロンに対して、ナマエは首をゆっくり横に振った。


「そんな、顔を上げてシャロン…私が自己管理出来なかったのが悪いんだから……それと、さっきから気になってたんだけど…その右手に持ってるのは…?」


ナマエの視線の先には、シャロンが部屋に戻って来た時に握られていた小さな小瓶があった。

よく見ると薄緑色の液体が入っている。


「あ、そうです、これをナマエさんに飲ませるように言われたんでした!」
「これは…」
「隊長から風邪によく効く薬だって渡されたんです」

シャロンから小瓶を受け取り蓋を外すと、中からは微かに甘い匂いがしてきた。


「この世界での風邪薬ってこんな感じなんだね…」
「はい、大抵は緑色の液体をしています。私も小さい頃よく飲んでました」
「そうなんだ…じゃあ、飲ませてもらうね」


ナマエは薬を何の疑いもなく飲み干した。


「…ふぅ……少し甘い…」
「え、甘いですか?昔は甘かった記憶は無いんですけど…最近のは飲みやすいように甘くされたんですかね」


するとナマエはシャロンの服の袖を弱々しく摘んで口を開いた。

「あの、シャロン…この事はなるべく他のみんなに伝わらないようにして欲しいの……特にエルトシャン様やアレスには……」


その頼みを聞いてシャロンはハッとした。

ナマエのそう言う理由が、みんなに心配を掛けたくないからなのだという事は明白だ。

そしてエルトシャンは彼女にとって恋人であり、アレスは未来から来た自分の子…彼等には一番心配を掛けたくないのだろう。


しかし、いつも城を駆け回っていて今回の戦いにも出撃予定だったナマエの姿が見えないとなると、果たしていつまで誤魔化せるか……


「任せてください、出撃準備の時間はまだあります。きっと隊長もナマエさんの性格が分かっていますから、何とか誤魔化してくれているはずです!」
「ありがとう……本当に…」


そしてシャロンが部屋を後にするとナマエは目を閉じた。



「少し…寝ようかな……」



薬の副作用なのか、急に睡魔が襲ってきた事によりナマエはそのまま眠りについたのだった。









「ん…ふあぁ……」


部屋に欠伸をする声が響く。

ベッドから起き上がったのは…三歳程の幼い少女だ。



「…どこ……?」



少女はベッドの上から部屋の中を不安そうに見回している。

見ると彼女はナマエがいつも着ている服がぶかぶかの状態になっていた。



そう…この幼い少女は紛れもなくナマエ本人なのだ。

どうやら今までの記憶が無いらしく、自分がどんな状況になっているのかも理解していないよう…



「おかあさん、おとうさん……?どこぉ……?」



押し寄せる不安からか、ナマエはベッドから降りようとした。

…が、ぶかぶかになった服の所為で上手く身動きが取れず、そのままベッドから転倒してしまう。


「いたい……っ…う……ふえぇ……!」


転倒した際に額をぶつけたのか、痛みからナマエはとうとう泣き出してしまった。



ナマエ?入るわよ」



その時、部屋の扉がノックされると同時にある一人の女性が中に入って来た。

その女性はナマエの恋人であるエルトシャンの妹…ラケシスだ。


「……え?」


ラケシスはナマエの部屋に何故かいる小さな少女を見て呆然とした。

少女…もといナマエが泣いているのに気が付いたラケシスは、慌てて彼女に駆け寄り抱き上げる。


「どうしてナマエの部屋に女の子が……貴女、お名前は?」
「ぅ…ひっく……っ…ナマエ……」
ナマエ…ですって……?」


不審に思ったラケシスは部屋の中を見回した。

すると机の上に置いてあった小さな空の小瓶に気付くとそれを手に取った。


「何の薬かしら……!もしかしたらこの子は本当にナマエ本人なの…?」


ナマエはおそらくこの薬を飲んで小さくなったのではないかと、ラケシスは直感でそう感じたのだ。

「……ナマエ、私の事が分かる?」
「ううん…おねえちゃん、しらない……」

ラケシスはその返事にまたもや呆然とした。


まさか記憶までも無くなっているとは思わなかったのだろう。


「どうしましょう…ナマエの出撃が急に変更になったから心配して来てみれば…こんな状態のナマエ、兄上が知ったらどう思うか……」

様々な考えが頭の中を巡る中、ラケシスは一先ずナマエをみんなの元へ連れていく事にした。



「このまま放っておく訳にもいかないし、とにかく他の皆さんに助けを求めましょう」








「ラケシス様、どうでしたか?」

一番初めにラケシスへ駆け寄ったのはフィンだった。


「フィン…それが……」


ラケシスが腕に抱いている少女を見せながら先程の事を話すと、フィンは目を見開いてナマエを凝視した。

無理もない、昨日まで成人に近かった女性が今は幼い少女に姿を変えているのだから。


「本当にこの少女がナマエなのですか…?」
「私も最初は信じられなかったわ。でも、これが部屋の机の上にあったのを見て…きっとこの薬が原因なんじゃないかって思ったの」

空なっている小瓶を見せて言うラケシスに、フィンは少し何かを考える素振りを見せた。

「…仮にこの薬が原因だったとして、彼女はどうしてこの薬を飲んだのでしょうか…」
「そうよね…それが分からないのよ……アンナなら何か知っているかもしれないわ」
「しかし、アンナ殿は先程出撃されたばかり…」


「う…そうだったわね……」


するとその時、ラケシスはナマエに服の裾を引っ張られた。



「おにいちゃん…おにいちゃんは……?」



彼女は呟くようにそう言いながら未だに不安そうな瞳で辺りを見回してる。


「お兄ちゃん?」
「かみがきんいろの…きれいなおにいちゃん……」
「!もしかして…」


ラケシスとフィンはその言葉だけで理解したのかお互い顔を見合わせた。

「きっとエルト兄様の事だわ。行くわよ、フィン!」
「はっ…!」


こうして二人は幼いナマエをエルトシャンに会わせるために城の中を駆けて行ったのだった。
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