第一章 審神者一族
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「お兄ちゃん!!」
「うわっ!?」
ナオトがある場所へ向かう為に外廊下を歩いていると、後ろから抱きつかれた。
気配に気付かなかったナオトは、驚いて前のめりになる。
慌てて肩越しに振り返ると、目に飛び込んできたのはよく知った頭の旋毛だった。
「梨那!」
ナオトに抱きついてきたのは、妹の梨那だった。
幼い頃から兄であるナオトにべったりだった梨那は、中学3年生になっても、こうして何かあると抱きついてくる。
だが、それもナオトとしては、可愛い存在でもあった。
「お兄ちゃん、今から道場に行くの?」
「ん? ああ……」
梨那は視線を床へと落とし、抱きついている腕をゆっくりと離す。
「お母さんから聞いた……。これから……行っちゃうんだね……」
「うん……。梨那、母さんの事を頼んだよ? 兄ちゃんは、暫く戻って来られないから」
ナオトは梨那の両肩に手を軽く置くと、彼女の目線まで身を屈める。
「……うん……。わかってる……」
梨那は、兄の顔を一瞬見た後で再び視線を足元に落とし、唇を噛み締める。
神月(こうづき)家の人間だから……。
審神者一族の宿命……。
梨那にもそれが良くわかっていた。
だから、引き止めたくても引き止める事が出来無い。
「……ごめん……。兄ちゃん、行かなくちゃ」
ナオトは梨那の肩を押すと、彼女の目尻の端に光るものを見付ける……。
ナオトは、目の前の妹にこれ以上どう声を掛けたら良いかわからなかった。
どんな声を掛けても、今日から自分はもうこの家にはいない……。
どうしようもできない。
ナオトは静かに目を閉じ小さく息を吐くと、体制を戻し姿勢を正す。
そして、梨那に背を向けた。
「……お兄ちゃん!!」
「……ん?」
梨那の声に、ナオトが振り返る。
梨那は、笑顔で手を大きく振っていた。
「いってらっしゃい!!」
「うん、行ってくる」
一瞬目を見開いたナオトだったが、穏やかに微笑むと梨那に向かって小さく手を振り再び背を向けると、今度は二度と振り返る事はなかった……。