第一章 審神者一族
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仁義を重んじ、そして厳しい中にもナオトに理解ある祖父。
「それは何よりだ。だが……その充実した学び舎から、しばしの間、離れなければならなくなった」
「え? それは、どういう意味でしょうか?」
信兼は、神妙な面持ちでため息に似た声を上げる。
(まさか……)
ナオトは、正座している自身の膝に置いた握り拳に力を入れた。
「うむ……。【時の政府】から、招集が掛かった」
信兼は、ナオトに向け、目を細める。
「【時の政府】……」
幼い頃から、話しだけは聞かされていた。
ナオト生を受けたこの神月家は、代々続く審神者一族だ。
表向きは、400年続く名家……という肩書きが付いてはいるが、実は神月家はそれだけではなかった。
日本に古くから存在する刀……。
鍛冶師が心血を注いで打つ刀には、神が宿るという……。
ナオトが生を受けた神月家は、その刀剣の付喪神を実体化させ、従わせる特別な能力を持つ一族だった。
【時の政府】は、その異能能力者をこう呼ぶ。
【
【審神者】の異能とも取れる能力は、その強さは個人で差が出るとされており、生まれ持って最高レベルの能力を持つ者もいれば、ごく一般的な能力に留まる者もいた。
【審神者】の能力は、刀剣の付喪神を従え、意のままに操ることも出来た為、時には危険とみなされる事も多く【時の政府】の監視下に置かれていた。
その表裏一体の存在は、その危うさゆえに秘密裏とされ、その存在を知る者はごく限られている……。
「そうだ。お前も神月家の人間なら、この意味……わかるな?」
「……はい。僕が招集されたんですね? お爺様……」
ナオトは、驚く事もなく、静かに信兼の言葉を聞いている。
「お前はまだ若い上に、実績も積んでいない。わしはまだ早いと進言したのだが……聞き入れて貰えなんだ」
信兼は、眉間に皺を寄せて深い溜息を付いた。
「……お爺様……。そのお役目、お引き受けしようと思います。その為に、幼い頃から学んできたのですから」
ナオトは、真っ直ぐに信康を見る。
その凛とした佇まいは、ナオトの静かな心を反映しており、迷いがあるようには見えなかった。
「……道は険しいぞ……。引き受けたからには、時の政府から言われたお役目は全うせねばならぬ。例え、何があってもだ……。【審神者】の使命は、歴史改変を目論む者達殲滅。故に、己の命を削り、その全てを捧げねばならぬ。もしかしたら、もう平穏な日常には戻れぬかも知れぬ……。お前に、その覚悟はあるか?」
「……っ……! はい……、お爺様……」
信兼は、自身の鋭い眼光で己の孫を射抜く。
凄まじい覇気がナオトの肩へとのしかかるのを感じる。一瞬、ナオトは息を飲む……。
だが、ナオトは決して信兼から視線を逸らすことはなかった。
ナオトは、わざと信兼に微笑んで見せる。
「うむ……」
信兼は、ナオトの顔をじっと見ながら、何かを考えているようだ。
少しの間、2人に沈黙が訪れる。
「……よかろう……。政府には、わしの方から返事をしておく。出立は、明後日。詳細は、明日説明する。準備をしておくように」
何かあきらめの境地にも似た深い溜息を付いた後、信兼はナオトへそう告げた。
「はい……。では、失礼します」
ナオトは、正座したまま、額が畳につくほどに頭を下げた後、部屋を出て行こうと障子に手を掛ける。
「ナオト」
「はい」
「……暫く会えなくなるのだ。しっかり挨拶はしておくのだぞ?」
振り返ったナオトに信兼は、穏やかに笑顔を向けた。
母を気遣っている……。ナオトはそう思った。
「はい。母さんにはきちんと挨拶するつもりです」
ナオトは大きく頷くと、笑顔で返す。
「……なら、いい」
短くそう返した信兼は、再び目の目の書物に目を通し始める。
その姿を確認したナオトは、静かに障子を開けて部屋を後にした。
(とうとう・・・この時がやって来た!)
ナオトの心は、外の廊下を歩きながら高揚感に満ちていた。
(ずっと……この日を待っていた。僕が審神者にならないと出来無い事だから……)
ナオトは、歩きながら両手に握り拳を作ると力を込める。
「僕は、審神者としてのお役目を立派に果たせるだろうか? そして……ずっとずっとやりたいと思ってきた事……出来るだろうか?」
一瞬、ナオトの心の中に不安が過ぎる。
「……いや、やらなきゃならない。そうしないと……」
ナオトは、ふと立ち止まり、目を細めて天を仰いだ。
「……父さん……。……いま、どこにいるんですか……?」
【続く……】