第一章 審神者一族
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お爺様、ただいま帰りました」
ナオトは、廊下を隔てる障子越しに声を掛ける。
「おお……ナオト、帰ったか。入りなさい」
障子の内側から、渋めの落ち着いた声が聞こえてくる。
「はい」
ナオトは、静かに障子を開けて中へと入る。
部屋は、典型的な和室の空間だった。
それも、かなり立派な造りだ。床の間には、高価そうな壷が置いてあり、その背後には墨で描かれた掛け軸。
そして、その前に書物を読んでいたと思われる初老の男性。
その男性は、昨今には珍しく……着流しに羽織り姿だった。
ナオトは、膝を付いて障子を締めると祖父の目の前に正座する。
「どうだ? 大学の方は?」
祖父は、孫が目の前に座ったのを確認すると、両手を着物の袖に差し入れる。
孫を目の前にするナオトの祖父は、最初の印象とは違い、穏やかな印象だった。
どことなく、面差しがナオトと似ているのが血の繋がりを感じさせる。
「はい。友人も出来ましたし、元々行きたい学部でしたので充実しています」
ナオトは、真っ直ぐに祖父を見るとにっこりと微笑んだ。
祖父の前では、誠実に接しなくてはならない。
それが、神月家の暗黙のルール、家訓となっていた。故に、決してふざけたり、茶化したりしてもいけない。
400年以上続く由緒正しき名家に生を受けたナオトにとっては、それが当たり前。
ごく一般的な家庭の雰囲気などあるはずもない。
現在、ナオトの父親は不在なので、この家の長はナオトの祖父である
だから
信兼は、普段は彼に対して優しい祖父であったが、礼儀や礼節を重んじる人物だ。
年長者であり、ましては家長である祖父に対しては、血縁者であろうとも敬語だった。
今時……と言われるかも知れないが、ナオトは重く感じた事は無い。
幼い頃からそんな環境で育った……と言ってしまえば、いいのだろうがそれだけでなく、ナオト自身、祖父の事をとても尊敬していた。