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あれは、いつだったかな……。
数少ない父との記憶。
周囲には、一面に彼岸花。
その赤い花は、幼い僕には綺麗だけど、少し……怖かった。
「お父さん、この花は何て名前?」
幼い僕が、父の顔を見上げながら、その手を強く握る。
「ん? これは、彼岸花って言うんだ」
父は、優しく目を細めると僕の頭を撫でる。
僕の思い出の中の父は、とても優しい瞳を持つ人だった。
「ひがんばな? 変な名前!」
僕は、彼岸花を指差しながら笑う。
「ははは……そうか。この花は不思議なんだぞ? 別名『地獄花』と呼ばれている反面、『曼珠沙華』と言って、天上の花、とも呼ばれているんだ……。まるで、人と同じだな……」
父はそう言うと、彼岸花を見ながら神妙な表情を浮かべる。
いつも穏やかな父がそんな表情……当時の僕は、見た事が無かった。
「?」
幼い僕には、その時……父の言っている意味がわからなかった。
僕は小首を傾げる。
「はは……ナオトには、早かったか。人は……善の部分と悪の部分があるって意味さ。ナオトが大きくなったら、その意味がわかるだろう」
父は、僕の頭を撫でながら優しく微笑む。
それが……父と最後に交わした言葉だった……。
数日後、父は審神者として出陣した後、僕達の前から姿を消した。
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