第二章 刀剣
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心地良い風が、頬を撫でる。
「……う……ん……」
そのくすぐったさで、ナオトは閉じていた瞳を薄らと開ける。
「……いたたっ……」
ナオトは、手で額を押さえながら、上半身を起こす。
どうやら、うつ伏せに倒れていたようだ。
ヨロヨロと上半身だけ起こして、胡座を掻く。
「は~っ……。もうちょっと、格好良く降りたかったよなー」
苦笑を浮かべながら、確認の為に周囲を見渡す。
眩しい程に真っ白だったものが、段々と視界がクリアになってくる。
ナオトの目の前に広がるのは、何処までも続く草原だった。
風が弱く吹いただけでも、草が揺れる音が聞こえてくる……。
「……えっと……着いたん……だよな? お爺様から聞いた、最初の目的地」
ナオトは、立ち上がって膝に付いた土を手で払う。
『まずは、己の宿命に従い、刀剣を探すのだ。さすれば……必ずや出会えるはず』
祖父 信兼の言葉を思い出す。
「とは言っても……。どうやって探せば良いのか……もっと聞いておけば良かったな~」
ナオトは、その場でう~ん……と考え込む。
「その辺に転がっているのかな? そんな訳、無いよね? はは……」
ナオトは、自分自身に突っ込みを入れながら、再び周囲を見渡す。
何処までも続く、草原の道……。
どの方向に進んで良いのかすら……わからなかった。
『己の審神者としての血が、呼んでくれるはず』
祖父 信兼がそうも言っていた事が、脳裏に浮かぶ。
「……取り敢えず、進むしか無い……か!」
ナオトは、小さく溜息を付くと、前後に手を振って歩き出した。
(さて……。僕が初めて出会う刀剣は、どんなのだろう……。相性が良いといいな……)
草原の中を歩きながら、そんな事を思う。
審神者に付く刀剣は、その個々に寄って異なる。
そう。審神者の能力に寄って、出会う刀剣が違うのだ。
審神者の潜在的能力が高ければ高い程、強い刀と出会う確率が高くなる。
強い刀に出会えば、それだけ審神者にとって、戦いに有利になる。
そして、その刀と相性もよければ、審神者と刀、共に能力の伸び率が、飛躍的に早くなるという仕組みだ。
だが、出会う刀が、最初から能力の高いモノばかりでは無い。
その場合は、実戦や、鍛錬等により、能力を高めてゆくのだ。
実戦や鍛錬などで、審神者の能力が高くなれば、自ずと刀剣の能力も上がる。
逆も、然り……だ。
「それにしても、いつまで続くんだろ……この草原……」
かなりの時間歩いている気がするのだが……。全く景色が変わらない。
ナオトは、一抹の不安を感じていた。
それも其のはず、まだ1本も刀剣に出会ってはいないのだ。
(マズイな……。こんな時、敵に遭遇でもしたら……)
草原を歩きながら、恐ろしい想像をする。
そう考える自分は、臆病者なのかも知れない。
(ダメだな……。覚悟してきたはずなのに……)
自分自身に突っ込みを入れる。
正直……怖い。
怖いのだ……。
ナオト自身、自宅の道場で幼い頃から、剣術の稽古はしてきた。
というのも、祖父 信兼は、剣術の達人であり、道場も経営していたからだ。
祖父 神月(こうづき)信兼は、剣術にも優れ、その上で審神者としても、優れていた。
一方、ナオトはといえば……。
確かに幼い頃から、祖父や父に鍛えられてきたから、多少の腕の覚えもある。
だが、それはあくまでも道場での稽古や、試合での事……。
実戦経験は、皆無。
その上、祖父から指摘されたのだが……。
ナオトには、致命的な欠点があった。
その欠点が、後の彼を苦しめる事になるとは、その時のナオトは、夢にも思っていなかった……。
さて、話しを戻す。
「やばい、やばい……。ここで弱気になるなんて、命取りになりかねないのに」
首を左右に振って、気持ちを切り替えようとする。
「…………ん?」
また暫く歩いていると、ある気配に気が付く……。
それは、ナオトから少し離れた場所からだったが、背中に嫌な気配が段々と大きくなるのを感じる。
(ま、まさか……!?)
心臓の音が、警鐘を鳴らし始める。
背中から、嫌な汗が止まらない。
「はっ……」
ナオトは、小さく喉を鳴らすと、静かに歩きながらゆっくりと肩越しに振り返った……。
青黒い……というか、なんと説明したらいいのだろうか……。
黒と青、そして紫が交錯している巨大な球が、ナオトの目の前に出現したのだ。
「これは…………」
まだ見た事が無いのに、彼の審神者としての血が教えてくれている……。
『敵』が来る!!!!
その巨大な球から、今度は何か形のあるモノが上から、少しずつ、少しずつ姿を現そうとしていた。
ナオトには、その姿が袴を着ている、もしくは落武者のように見えていた。
「くっ……!」
その姿を目の端で確認したナオトは、全速力で走り出した。
《続く……》
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