あの子が泣いてる理由
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「ここに居たんだ、みんなが」
CDショップの特設エリア、ネットで見まくった6人が並んだ写真と同じ場所…。
「うぅ~…」
イベント参加したかったんだよ、でも来られなかった。会いたかった。
雰囲気だけでも感じたくて来てみたけど、余計に寂しさが増してきた。
会えるチャンスだったのに、目と目を合わせて声を掛けられたのに…彼に…。
最初はそうとは思ってなかった。
切れ長の目が少し怖くて、気分屋なところが好きになれなかった。
でもね。
貴方の歌ってる姿を見たら、想いは180°変わったの。
切れ長で熱い眼差しは、観客席のファンの皆を真っ直ぐ見つめてた。
気分屋で怒りっぽいなって思ってたけど、自分に嘘つかない人なんだってわかった。
壁に書かれたみんなのサインを眺めながら、本当は嬉しいはずなのに会えない悔しさが込み上げる。
と同時に鼻がツンとして目頭が熱くなった。
他のお客さんの目もあるし、もう出よう。
写真を撮ってるファンの間をすり抜けてお店を出ると、溢れる涙を指で拭いながらビルの影で1人で泣いた。
何分くらいそこに居たのか、とりあえず涙は止まったけどきっとメイクはボロボロ。
立ち上がりトボトボと歩き出すと、スマートフォンで駅までの帰り道を確認した。
するといきなり左肩に衝撃が走り、後ろへと引っ張られた。
車のクラクションが鼓膜が破けるくらいに響いたと同時に、サングラスをした男性が目に飛び込んできた。
「オイッ!!」
「…!」
声にならない声が出た。
「危ないだろ!ちゃんと前見て歩け!」
「すみませんっ…」
赤信号だったのだ。
驚きはしたが、それよりももっと驚いたこと…。
としみつだ…。
なんでこんなとこにいるの…?
さっきまで見てたんだよ。あなたの写真とかサインとか見て、逢いたいなって…。
ダブルの驚きで荒れた呼吸をなんとか整えた。何度か深めの呼吸を繰り返す。冷静に、落ち着いて。
そんな私を見かねたのか、としみつは表情を変えて優しく話しかけてくれた。
「強く引っ張っちゃってごめんな、痛くなかった?」
「はい、大丈夫です…。ありがとうございました」
「あとこれ…」
さっきまで私が持ってたスマートフォン。ケースを開くと画面が割れてしまっていた。
「あ…」
「なんか逆に悪いことしちゃったな、ごめん」
「いえ、歩きスマホしてた私が悪いんです、大丈夫です」
「修理代出すよ」
後で連絡して、と言って名刺を手渡された。
出会えた、目が合った、会話した。
そんなドキドキより、さっき捕まれた左肩がまだジンジンしてる。別の痛みで。
さっきまでの惨めな感情は捨ててもいいですか?
奇跡を信じてもいいですか?
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