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今朝から少しだけ身体が熱っぽい。

フェニモールはそれを自覚しながらも、長に頼まれた書物を探すために書庫へ来ていた。


「…ないなぁ」


なかなか目的の書物が見つからず、フェニモールはため息をつく。

時間だけが刻々と過ぎていく。

フェニモールは一冊一冊指でなぞりながら、本を探す。
その指が、不意に他の指によって阻まれた。


「…熱があるのか」


フェニモールは聞き慣れたその声のする方へと振り返る。
どうやら相当頭がぼんやりしているらしい。
いつもならすぐに気付くのに、今は全く彼に気付かなかった。


「いえ、少しぼーっとしてただけです」


笑顔で言えば、途端にワルターの表情が険しくなり、重ねられた指が強く握られた。
しまった、と思うが遅く、次の瞬間にはフェニモールはワルターによって横抱きにされていた。


「嘘をつくな。大人しく休め。本は俺が代わりに探す」


淡々と言い放ち、ワルターはフェニモールを抱え、歩を進める。

あぁ、やっぱり敵わないなと思いながら、フェニモールはワルターの肩口にそっと頭を預けた。
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