このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

希望





『…だ、………何故だ…』


身体が言う事を聞かない。

何故、どうしてこんな所で。



まだ、


まだ果たしていない。


与えられた役目を、


俺の唯一の生きる目的を──



『…何故だ…』


地に伏せる自分の身体。頬に当たる感触は、絶望。

何故、お前は奪う。


息をすることすら困難になったその口から、何故、と掠れた自分の声が聞こえた。


奴は俺に手を差し伸べた。



──屈辱 だった



何故、俺から全てを奪ったお前が、


殺したいほど憎いお前が、


手を───




『…何故…』


メルネスが選んだのは


貴様だったのだ …… !



『セネ…ル……』





「────!」



目を開けると、暗闇だった。

ここは、どこだ?

ワルターは起き上がろうとするが、動かそうとした自分の右手に触れる温かい感触に気付いた。


「…?」


見ると、手を握りながら頭をワルターの身体に預けて眠るフェニモールの姿があった。

ようやく目が暗闇に慣れたのか、ぼんやりと周りが見えてきた。
見慣れた家具や物に、どうやら自分の部屋にいるらしい事をワルターは把握する。


「何故ここに…」


フェニモールの反対側の手には、タオルが握られていた。
視線を上に移すと、溶けかけた氷の入った容器が置いてあった。
状況から察するに、彼女が看病をしてくれていたのだろう。

看病を───

今自分がここにいるのは、倒れたからだ。
その理由も、先程まで見ていた夢は夢ではなかった事もワルターは理解する。

俺は、失った。

何もかも、すべてを。


「……は、」


自嘲気味に笑う声が零れる。
フェニモールの手を解き、ワルターは部屋から出て行った。






3/5ページ
スキ