現代人の松永さん
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そろそろ太陽が白から赤色を帯はじめていた。
いつの間にか時間は過ぎていたらしい。
着信音が鳴り、ハッとした。
外を見ると、松永さんが車から降りて手を振っていた。
「お疲れ様です。ごめんなさい、ぼうっとしてたみたい」
「いいんだよ。それより……んん~。
なんというか、今すぐ剥いでしまいたいね。
とても可愛いお嬢さんで、おじさん困っちゃう」
松永さんは神妙な顔付きで唸りながら言った。
私はそれが可笑しくて笑った。
「ホテルまで持つかなぁ。車じゃ狭いし、いっそのこと君のお部屋でしてから行こうか……んー、悩ましい」
「ふふ。せっかく先生の為に可愛くしたんだからもう少しゆっくり見てください。
それに私、お腹空いちゃった。先にご飯食べたいです」
「確かにそれもそうか。じゃあ、近場のショッピングモールでも行こう」
そう言うと、また彼は愛車に促すように乗せてくれた。
まだ、このコックピットに私は乗り慣れない。
しかし優秀な操縦士のお掛けで心地よさだけを受け止められる。
幸せ、とはこういう快を受けられる事柄なのかも知れない。
暫くして、私たちはモールの中のステーキ屋に入った。
松永さん曰く「スタミナを付けるため」と言っていた。
「人間は食ったもので出来ている。
砂糖や菓子ばかり食っていれば自分に甘く、体型まで締まりが甘い。
野菜ばかりの人間は牛のように穏やかであるが、持久力がない。
肉ばかりなら性格も肉食獣のように攻撃的である。
何でもバランスが大事。
良い女とセックスするためにはバランスの良い食事が重要なのだよ」
「松永さん……もう少し小さな声で喋って下さい。
その……恥ずかしいから」
「むっふふ~。ゆきちゃん、君は可愛い。
でも安心したまえ。
皆、食うのに夢中な上、今日は休日だ。
子供の叫び声や、各々の会話できっと聞こえんよ」
にっこりと微笑んだ彼は、優しい表情なのにとても意地悪だと思った。
少し窺うような目をしながら彼との食事を取った。
彼が何か言う度にドキドキしなければならないのだろうか。
こんなのでは心臓がいくつあっても足りないような気がした。
「松永さん……」
「何かね」
「緊張すると味がしなくなっちゃう」
そう言うと彼は苦笑してから「ごめん」と呟いた。
その後、彼とそのモールの中を歩いた。というよりも歩かせてくれたと言った方が良い。
服屋、雑貨屋、本屋……目移りする自分の為に彼は不満一つ言わず「待っているから行っておいで」と時間を差し出してくれる。
しかも私が気に入って買おうかどうかと迷っている品があると、「見せて」と言ってどこかに消え、かと思うと商品が綺麗に包装されて手元に戻ってきた。
嬉しくてビックリしたのと同時に、申し訳ない気持ちになってしまった。
それが短い間に二、三度とあり、私は彼と小休憩を取った折りに言った。
「ありがとうございます。でも、こんな風に良くして貰って悪いです」
少し困った表情が出てしまった。
こんな風に物を買ってくれるのもそうだし、ワガママを聞いて時間を作って貰ったことにも、ありがたさと申し訳無さが入り交じっていた。
しかし松永さんはクスクス笑うだけだった。
「んん? 何が悪いんだい?」
「だって、こんなに……」
「気にしなくて良いんだよ。だって、そう言う気持ちにさせたくて色々と買ってあげているんだもの」
面白そうな物を見る表情で松永さんは
言った。
そして、宙を眺めながらふーっと深い息を吐いた。
「君みたいに可愛い子がね、おじさんみたいな老い先短い男と本当に付き合ってくれるのか不安だからね。
小心者だから君の本心が見たくてやってたんだよ。
あ、でも何かプレゼントしたいって気持ちは嘘じゃなくて本当だから気にする事はないよ」
「だからといって……」
「我輩は君の言う通り、意地悪なんだよ。
だって他の女ならお金だけ巻き上げて感謝すらせずにトンズラしちゃうなんてこともあるだろう?
だから君が我輩と一緒にいてどんな気持ちなのかとか知りたいんだよ」
平然と言ってのける彼の表情は至って穏やかである。
しかし私はその言葉に若干の冷たさがあるのを感じた。
おかしなものだ。
だって、昨日も、一昨日も私と松永さんは互いの大事なところに触れた。
それでもこの人は未だに私を信じていないとでも言いたげだった。
「私は松永さんに……恥ずかしいけれど、触って欲しい。
私は、あまり経験が多い方ではないけど、そう思った人はあなただけだから」
きゅっ、と目をつぶる。
そんなことを言わせる彼のせいで頬が熱い。
わざわざ言う私もどうかしているが、本心を聞かせろと言われたのだ。
例に出したような女と思われたくない。
疑われるくらいなら、言ってしまえというところだった。
「だ、だから……その」
「待て待て、そんな泣きそうな顔をするな。
おじさんが悪かったよ。実はそう言う事があった奴が直近にいてな。
君の気持ちは良くわかってるよ。何せ、昨日の今日だ。
襲われるのを分かってて君はこうやって我輩の側にいてくれる。可愛いじゃないか」
そう言うと私の頭を抱き抱える。少し、きつくて戸惑った。
だけど冗談だと言ってくれたお陰でやっと緊張の糸が解れてきた。
彼がそっと呟いた。
「ま、申し訳無いって気持ちにさせてセックスまで持っていくっていうのが、悪い男の常套手段だから。
我輩以外に手を出されないようにしてね、ゆきちゃん」
いたずらっぽい口調だったが、私は彼の腕に閉ざされながら「はい」と囁いた。
*
日が暮れた。二人でモールから少し離れたホテルに入った。
休日ということもあり、満員御礼というところであるようで、私たちが最後の一部屋であった。
「おやおや……皆さん精が出て何よりですなぁ。それ、ポチっとな」
自動式のようで、画面にタッチすると部屋番号が書かれたレシートが出てきた。
松永さんは口笛を吹きながら、その紙を人差し指と中指に挟んでヒラヒラと靡かせた。
「んん~。我輩はついている。
ゆきちゃんとイチャイチャしなさいという天のお告げかな」
「くすっ。お告げなんて……そんな」
「いいや、これは絶対そうだね。安心したまえ。
君の毛穴の隅々まで我輩でいっぱいにしてやるぞ?」
「やだ……もう」
部屋につくと、彼は真っ先に風呂に湯を張りに行った。
その間、私はベッドに腰掛けてつけっぱなしのアダルトビデオを顔を赤くしながら観賞していた。
ものの数分だったがやはりこの手のメディアには不慣れなようだ。
浴室から松永さんが帰ってきた。
「以外と綺麗な部屋で良かったね、むっつりゆきちゃん」
「あ……お帰りなさい」
「おっと、顔を背けるなんてダメ。
その真っ赤な顔にちゅうしてあげよう」
そう言うと、彼は上着を脱ぎながら唇を重ねた。
柔らかくて、気持ちが良い。
まるで水の中にいるように苦しい時でも、羽毛にくるまれているように穏やかな気持ちになる。
頭が真っ白になる。
昨日からのお預けのせいか、アダルトビデオのせいなのかキスだけで体の芯が蕩けそうだと思った。
--幸せ
霞の中にいるような気分の中で思った。
唇を放すと糸が引いた。
「ゆきちゃん。年甲斐もなく、我慢が利かない我輩をどう思う」
「良いの。して……。いっぱいにして」
私はすがるように彼の腕を引き寄せた。