現代人の松永さん
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強い日差しが肌を焦がす。
それでいて風が爽やかで思ったほどじりじりとした感じもない。
露出した肌がやや色味を帯びて赤くなっていた。
目の前には透き通った美しいガラス細工のような花々が心地好い波に揺れている。
温かくて南の島にいるようだ。
とても良い気分。
こんなに居心地が良いのは久々かもしれない。
「ゆき」
誰かが私を呼んだ。
温かい手。それが頬を撫で、包み込む。
引き寄せられて口付けを交わす。
目を凝らすが一向にその人が誰か分からなかった。
ただ気持ちよくてその人に全てを明け渡したいという思いになった。
男なのか女なのか分からないが頬に触れる掌の大きさから男だと思った。
私は身を捩ると抱き締められた。
そのまま、雪のようなキスが降ってきた。
柔らかく優しい、キスの雨にうっとりとする。
やめないでほしいと思うも、それは離れていく。
少し残念だと思ったが、それを越える手付きで体に触れる。
余りにも優しく愛撫するので、直接的な快感よりも気持ちの高ぶりによる快感が優っていた。
彼は胸、脇、そして大事な場所を丁寧に唇で愛撫した。
時折体が小さく跳ねる。脚の間に身を寄せた彼はついに私の陰部へと舌を這わせる。
その快感や、とてもじゃないが言い表せない。
「だれ?」
咄嗟に聞いた。
責め立てるなどないが、出来ればこの快感をくれる人の顔を見たかった。
自分ばかりが気持ち良くなる事への罪悪感のようなもので、せめて相手にも同じようにしてあげたいと思う気持ちの現れでもあった。
私は彼を引き寄せる。
答えないのはしょうがないとどこかで諦めて、せめてこの体を使ってほしいと願った。
「お願い」
「欲しいの? 良い子だ」
目の前に現れたのは、まるで腕の太さほどもある巨大な男性器。
おそるおそる触れれば蓮根か、大根と言っても過言でない固さ。
初めて見るその大きさに、私はゴクリと唾を鳴らした。
私は犬か何かになった気持ちでその愛しいものを丹念に舐め上げた。
私が舌を這わせると先の方から粘りのある塩気を含んだ透明な液体がじんわりと溢れた。
下に垂れる袋は優しく揉みしだくと、腹に引っ込んだり出てきたりと子供のように遊び出す。
そうやって準備万端になったそれは私を貫くために私の大事な入り口にあてがわれた。優しく侵食するように腰をおろす彼を抱き寄せた。
ある程度中に収まり、上下する度に気持ちが良い場所で一気に貫いて貰った。
喘ぐ間もなく、火花が目の前で散った。私は溺れた。
その人が問いかける。
「どこが気持ちいい? 教えて」
私はクリトリスの真裏を突かれる度に、他の箇所より大袈裟に喘いで見せた。
そこが一番気持ちいい。
そして時々、一番奥よりも少し腹に面したところを擦られると、えもいわれぬ快感を感じて息を止める。
上に乗る彼の顔は相変わらず見えない。
それが少し悲しくもあり、興奮した。
私の性器が真上にあり、それを組敷いて直角に筆を出し入れする男は誰なのか。
上手にポルチオを刺激されて私は快感で涙がボロボロと溢れてくる。
口は開けたままで閉じることができず乾いているというのに、この生理現象に無表情で驚いた。
彼が楽しそうに囁いた。
「すごいね……食いついて離れない」
口調に表情が付くなら「にやり」というのがぴったりだった。
彼は緩慢とした動作から、急に舵を逆に切ったように乱暴に腰を打ち付けてきた。
――ああ!
野獣のように思わず叫んだら、彼はさらにスイッチが入ったかのように乱暴が狂暴へと姿を変えた。
滅茶苦茶だった。
男の力で無理矢理押さえ込まれるのは恐ろしくもあり、幸福でもあった。
怖いと感じるよりも、与えられる快感が脳のドパミン受容体を刺激する。
今や顔も知らぬ男の虜である。抜け出せないと思った。
「壊れる」
「やめる?」
「やだ、もっと」
幼子のように哀願した。
願いは簡単に聞き届けられ、もはや私は意志を持つラブドールに等しかった。
その人は限界値まで、私のうねる穢れた壺の中で自分の分身を扱いて扱き続けた。
耳元で小さな呻きを聞いた。
ビクンと彼が跳ねた。
「孕め」
熱い吐息が私に命じた。
注がれる体液を私は余さず飲み込みたいと思った。
*
目覚めは単調だった。しかし随分と卑猥な夢を見たものだ。
これも薬の影響なのだろうか。
側では松永医師が物書きをしていた。初めて来院したときにつけていた丸眼鏡を今もしている。
私はそっと起き上がった。
窓の外は相変わらず暗く闇に包まれている。
私に気が付くと彼はにっこりと微笑んだ。
「起きましたか?」
「ごめんなさい、寝てしまって……ずっと側に居たんですか?」
「ずっとではないかな。
あぁ、でも心配してるような事はないから安心して下さい。
あなたの貞操は守られてますよ」
「そんなことを聞いたわけでは……」
「すみません、冗談です。
年寄りは若い娘さんを苛めたいものなのです。
それに、私こそ何の役にも立てなくてすみません。
しかもわざわざ引き留めてしまった。
家はどこです?
外は暗いし送りますよ」
「いえ、近所なので歩いて帰ります。
少し眠ったら体調も良くなったみたいですし」
私はバッグと上着を探す。
近くにあったようでそれを身に付けてから医師に問いかけた。
「ピルは飲み続けた方が良いですか?」
そう言うと、医師は苦笑いで答えた。腕組をして「実は……」と内緒話をするように囁いた。
「副作用が出るというのは、その人間の体に必要ないものだからなんです。
だから我輩としては使用の継続はお勧めしない。
だが、君の場合は必要な活動が止まってしまってるからその薬が不必要とも言えない。
んん~……男の我輩が言ったところで何とも説得力が無い。実に悔しい」
また「我輩」と言った。
しかも敬語がとれて医師というよりその丸眼鏡と合間ってどこぞの小説家のようでもある。
私は自分を我輩などと格式張った呼び方をする人を初めて認識した。
そしてこの医師に、面白い人と言う新しいイメージの土台を確立した。
「先生って夏目漱石がお好きですか?」
「んん? ……あぁ、私の癖だよ。
昔から自分のことを言うときについ出ちゃうんだよ。
本当困っちゃうね」
歯を見せて、にかっと笑うその仕草が何とも可愛らしく見えた。
仕事の最中は冷たい印象すら感じたのに、オフになるとあどけない少年の様であった。
私は少しだけ、もう少しだけこの人と喋りたくて再び簡易ベットに腰掛けた。
「先生」
「はい、なんでしょう」
「やっぱり家まで送って下さいませんか」
「喜んで」
「それと、私ともう少し喋ってくれませんか?」
夜明けのコーヒーでも飲みながら、などとまるで昭和レトロなセリフが飛び出そうになったのを押し止めたのも束の間。
医師はこの展開を予見していたかのようにブラックコーヒーなど差し出したので、聞こえぬ程度に小さく笑ってしまった。
松永医師も口の端が何となく楽しげに上向いていた。
「幸い、明日は休診日ですから良いですよ。
誰かとこうして夜中に喋るなんて久々で少し緊張してますが……しかも女性ですし」
「そうですか? 奥様は……」
「妻はいません。ずっと前に離婚して、それっきりです」
「ごめんなさい、要らないことを聞いて……」
「構いません。うちのスタッフにも言われます。「先生は自分勝手だから」と」
苦笑する医師。
申し訳ないがそれには少し納得してしまった。
面倒だからといって自分を私の伯父と言ってみたり、半ば強引に自分のところに連れてきたりと自分の都合の良いことに、もしくは相手にとっての最良の選択に対して効率的かつ合理的なのだ。
ただし、相手にとっては自分の事情などお構い無しな節があったのだろう。
詳しくは人の過去なので知らないが、そう言った類いの人間はなかなか世の中で、とりわけ男女間では生きにくいだろうなと思った。
「女性はコミュニティを優先しますからね。
特に「二人の」とか「私たちの」とかって言う。
その上、自分優位のコミュニティでなければ納得しないという難しい生き物なのですよ」
「佐藤さん、悟ってますなぁ。
妻も良く言ってました。
「私たちのことちゃんと考えてる?」と。
まぁ、結局のところ仕事が多忙な上に妻より他人と遊ぶ方が好きだった事への警告だったんでしょうね」
「先生は素敵ですから男性より女性ともたくさん遊んで来たのでしょうね」
「お、鋭い」
にやりと面白いものを見るように瞳が光る。
そしてまた私に言った。
コーヒーの香りがその人の吐息に乗ってこちらにまで漂ってきた。
伏し目がちに彼は言った。
「私がそう言う感情に疎いのか、根っから女好きなのか分かりませんが、どうもガードが緩いらしいのです。
私の知人に言わせると「好きになるように仕向けておいて放置するから」女性が積極的に見えるだけらしいのですがイマイチ理解できずに困ります。
あっちの方はまだまだ現役だとしても、今やこんな年寄り誰も相手にしませんが」
ちょっとした自虐で自分を笑い者のように言うが、はたしてそうだろうか。
このように色気のある人を女性らが方っておくだろうか。
十代、二十代なら仕方ないとしても大人の女性なら憧れるのでは無いだろうか。
しかもその人の知人というのがなかなか観察眼に優れている。
今の状況がまさしく「仕向けておいて放置」という図式にすっぽりと嵌まるような気がした。
そしてそう言う感情に疎いというのも何となしに腑に落ちるような気がした。
「ちなみにお幾つなんですか?」
「五十二になります。もう良い歳ですよ。佐藤さんは?」
「二十六です」
答えると驚いたように「若いなぁ」としみじみとして言った。
カルテに目を通して、さらに「あぁ、本当だ」と驚いている。
しかし昔と違って今の人は、若い人はやはり若いのだ。
仕事の時分は確かに貫禄のようなものを感じて少し年を召しているようにも感じたが、話していくと気にもならない。
松永医師も他聞に漏れず、細かな皺やちょっとした加齢によるシミなど気になることもない。
四十代でまだまだ通るのでは無いかとすら思う。
私は冗談めかして言った。
「先生、もし私がデートに誘ったらしてくれますか」
「いきなり突飛な……。逆に私が相手で良いのですか? 年寄りですよ」
「余程でなければ簡単に誘ったりしませんよ。それとも嫌ですか?」
「そりゃあ、こんな若くて可愛らしい人に誘われたらおじさんは断るわけ無いじゃないか。ただ……」
「ただ?」
松永医師は困ったように眉根を下げて微笑んだ。
頬を中指で掻いて、呟く。
「患者さんの誘いに、簡単に乗っちゃう私は医者失格ですな」
「乗ったらダメですか?」
「基本的に医者は患者さんとはそう言う関係になり得ないのですよ。
まぁ、研修医時代の名残でしょうな。
若い頃は猿並の理性に歯止めを掛けるのに苦労しましたよ。
二十代の盛りの付いたオスが、女性器やおっぱいを観察させてもらい、かつ触らせて頂くのですから。
そんな中で魅力的な女性はいくらでも現れる訳です。
先輩方には、あれは野菜であるから対象にしてはならないと耳にタコができるほど言われたものですよ。ただ……」
「ただ?」
「君のように素敵な人を目にするとさすがに野菜とは思えないのですよ。
我ながらまだまだ修行が足りません」
彼は私に微笑んだ。
私は彼の女体に対する丁寧な言葉遣いに少し照れくさいような誇らしげな不思議な気分を味わっていた。
同時に、彼の目を眩ませた魅力的な女性とはどんな人かと思いを馳せた。
松永医師は窓の外に目をやって言った。
ますます闇が深くなった。
携帯の画面を見ると一時を回っていた。
「そろそろ送っていきましょうか。付いて来てください」
私は医師に促されてその後をついていく。
ロビーを出て、来客用の駐車場とは別にスタッフ用の駐車場が裏手にあった。
その中に一台彼の車が停まっていた。
遠目からは良く見えないが、近くまで来るとそれは外国車だった。
知らないメーカーだ。
車体を物珍しげに眺めていると松永医師が得意気に教えてくれた。
「アストンマーチン。
イギリスの老舗の車です。流れるようなフォルム、かっこいいでしょう?
007のジェームズ・ボンドがこれの車に乗っていたのです。
さすがに当時の私の目を奪ったDB5には乗れませんが若い頃からの憧れと同じメーカーに乗れているのが私の数少ない自慢です」
シルバーの車体を彼は撫でる。
DB 11とマークされたそれは余程大事に乗っているのか、目立った汚れが少ない。
私はそのまま助手席に促される。
ただ、その位置は左側である。
車を運転する機会が無い私は何気なくその疑問をぶつけると彼は丁寧な言葉で答えた。
「これらはディーラーに言えば好みのものを探してくれます。
輸入車なのでどちらが良いかと言われても日本で左ハンドルはなかなか不便なので、私は右が良いんです。
国産の軽から癖の強いアメ車まで何でも乗ってきたのですが、BMWのセダンに乗っていた時が一番心地よかったので、同じタイプを乗っています」
「車がお好きなのですね」
「まぁ、車くらいしか思い通りに動かせないのでね」
私は隣に座った松永医師が車体を発進させるのを待った。
「仕事も女性も人間は私の気持ちとは裏腹ですから。
機械は良いですよ。
我輩の思いのまま」
ボンネットにライトの明かりが反射する。
にやっ、と笑うその表情が私の目を奪った。
ジェームズ・ボンドもアストンマーチンも私にはちんぷんかんぷんだが、男の魅力には素直に感化される。
仕立ての良い黒いレザーとそれを結い上げる強靭そうな糸のステッチをそっと撫でる。
その内装はまるで車というより戦闘機の操縦席のように思えた。
「佐藤さんのアパートは幸町ですね?
ご近所さんですな」
はい、と頷くと前方にハンドルを切る。
その流れるような発進は今まで乗ってきた大衆車など比較にならない。
まるで私を包み込むように動き出すこの子に感嘆の溜め息が出た。
「凄い」
一言そう言うとさらに嬉しそうにスピードをあげる。
アクセルを踏むときに分かる、急発進の嫌な感じがない。
もっと乗っていたい。
初めて、私は車という無機質なものに恋をした。
さらにそう仕向けた隣人に尊敬の思いと、好意がこんこんと湧水のようにこみ上がる。
「先生」
「はい、なんですか」
「デート、いつしましょうか?」
私がうつむきがちに問いかけると嬉しそうな困ったような笑い声が聞こえた。
ハンドル捌きもとても見事だった。
「君が良いならいつでも」
赤いランプが停車を促したところでメモ用紙にさらさらと番号を記入する。
「090-***-***。松永久秀先生」
「先生はもうよして下さい。
番号を渡してしまったら、私は君を一人の女性としてしか見れなくなってしまった。
ダメ医者ですみません」
「じゃあ……松永さんも、こんな小娘に敬語なんか使わないで下さい。「我輩」って聞きたいです。猫さん」
「猫ね……。
我輩は医者である。女に目がない」
「まぁ」
呟いたその言葉が予想以上に面白くて私は吹き出した。
言った本人もしてやったりと破顔していた。
しかし急に真面目な顔をして問いかける。
瞳が少し緩んでいる。
「佐藤さん、こんな私の何が良いんです?」
前方を確認しながら私の手の甲に掌をのせる。
皺が深い。
私の手と違って年輪を重ねて来た、渋味のある手の甲に見とれる。
当たり前だが親の手を見てもこんな感情は起こらぬというのに、こんな短時間で急激に惹かれるのはホルモンとか言う人体に作用する脳内麻薬のせいだろう。
ピルにはFSH(卵胞刺激ホルモン : エストロゲン)LH (黄体刺激ホルモン)とか言うホルモンに似せて作った合成物質が入ってる。
だから妊娠したと体が勘違いするのだが、FSH:エストロゲンはその名の通り卵胞を刺激し、排卵を促す。それは女性の気分に作用し、LHから作成されたPG(プロゲステロン)というのは仮に妊娠したならそれを維持させる働きを持つ。
難しい言葉の羅列にこちらが混乱しそうになるが要するに、毎月一回排卵させるのが前者である。
それで妊娠しなければ生理が来るし、妊娠すれば後者の出番だ。
子宮内膜とか言う胎児の為のベッドが、種もないのに浮き足だって準備されていると思うと面白いが滑稽だ。
だからなのか。
こんなにも体はそこに無い種を欲するものだろう。
そこに来て女の本性は強欲であると初めて思った。
原罪とは良く言ったと思う。
「何でしょうね?
別におじさんがタイプって訳でもないし、医者という肩書きにも興味はないですし、車のことも良くわかりません。
ワガママな人は好きじゃないですし」
「むぅ……我輩は悉く好みの外ではないか」
「でも、今のところ松永さんの顔と手と香りが好きです。
一目惚れなのですから、それで許して下さい」
「セックスにおいて一番重要な項目は満たしているのなら許そう」
尊大な物言いだが、茶目っ気のある口調だったためかあまり気にならない。
重ねた掌を厭らしく絡める。
あまりに自然だったので当たり前のように受け入れてしまったが、ただセックスという単語に少し身を強張らせた。
「婦人科のお医者さんでも欲情しますか?」
「君は積極的だな。いや、我輩は嬉しいが」
「どうなんですか?」
「そりゃあな。
我輩は男だからな。
けど仕事で見るものは所詮は標本に過ぎない。
目に映ったものは灰色で我輩にとっては何の意味も成さない。
ただし「このおまんこは好きにして良い」とお許しが出たなら、それは途端に鮮やかな色彩を放ち始める。
考えただけで我輩は勃起して、それを力任せに突っ込んでかき回し、その赤く充血した肉壺に吐精したいと思う」
「……」
彼の言葉に私は苦笑する。
というよりどう言葉を返せば良いか困惑していた。
なぜなら、彼の率直な欲望に私の熟れた肉壁が急激にうねり始めたからだ。
擬音語で言ってやるのなら、きゅんきゅんと尿意を伴って内側から締め付ける。
さて私が彼の言う「お許し」なるものを出したなら、松永先生はその言葉の通りに、突っ込んでかき回してくれるのかと期待した。
そんな感情はおくびにも出さないが、こんなことは初めてだ。
体の収まりが効かない気がした。
私は内腿を固く合わせた。
じんわりと熱いものが背筋を通って脳天までにじり寄ってくる気がした。
答えた松永さんは少し照れたように「なんてね」と舌を出していた。
アパートにつくと彼は助手席のドアを開けて手を差し伸べた。
私はその手をとって身を預ける。
ひょいと持ち上げられたような錯覚を感じた。
私は下心を気取られぬように努めて冷静に問いかけた。
「松永さん、土日は空いてますか」
「土曜日は昼まで仕事で、それを過ぎたらフリーです」
「仕事が終わったら迎えに来てくれませんか? ご飯、一緒に食べましょう」
「えぇ。喜んで。終わったら連絡しますね」
彼は去り際にウインクをすると、また来た道を去っていった。テールランプのすぐ下が二度光った。
私はすぐに自分の部屋に戻ると、いつも通り手を洗い部屋着に着替える。
そしてそのままソファに横になると、この疼きの冷めやらぬうちに指を股間に滑らせた。
――あぁ。
溜め息が零れた。
濡れている。私は浅く呼吸し満たされるまで自慰に耽った。
*