恋煩いの短編集
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こまが我輩を誘う夢を見た。
白昼の夢であった。
「どうかね、霜台殿。私の腕は」
「良いものか悪いものかを聞いているのか? 悪いに決まってる。何処が悪いかは絶対に教えぬわ」
「お前さんに取って悪いのは当たり前だろう。その表情から察するにお気に召されたようだ。また来るから次回は酒なども用意しておいてくれよ」
「図々しい、二度と来るな」
にんまりと笑って戸口から去っていったのは因縁の幻術師だった。
久方ぶりに果心居士に会い、意地悪された雪辱を果たそうとして呼び止めた。
しかし何かされると踏んだのであろう。あやつがまた幻影を出したのだ。が、思いの外我輩にとってお気に召すものを具現化したのでむしろ金子を持たせて返したくらいだ。
あちらに乗せられているのは百も承知であるが、我輩が何を見たかなどは知るよしもなかろう。知られるのはまた恥でもある。
入れ替わりでこまが襖を開けた。
「久秀さま、今の方は?」
「果心居士だ」
「はぁ。あの人があの有名な」
「知っているのか?」
「久秀さまが嫌いな人は大概」
にっこりと唇が半月を描いた。
思わず、さっきの幻影が浮かび上がった。
背を向けて茶道具を片付けるこまの、ぴったりと密着した着物を脳内で脱がしていく。
鍛えられて無駄な肉を落としながらも、付くべきところに肉の付いた滑らかな曲線をもつ躰。
いついつ我輩はそれをものに出来るのやら、こまの丸い臀を眺めて顎に手をやった。
「考え事ですか」
「お主をな、頭の中で脱がしていた」
「ご冗談ばっかり」
警戒の無い爽やかな笑顔だった。我輩は身じろぎもせずにその屈託の無い笑顔を見ていた。
あれほど馴れ初めのころは物々しさもさもあらんというのに、今や信じきっているのか我輩の本音さえ冗談で片付けられてしまう。
戯れが過ぎるためこまでなくともきっとそう対応されるので有ろうが、少しばかり不服であった。
腕を伸ばし、こまに触れた。
不思議そうな眼差しであるが、その色に恐れはない。
日頃そのように遊びすぎた弊害であろうか。
相も変わらず掌でこまの腰や臀を撫で回すと、苦笑交じりに「動けませぬ」と子供を諭すように言われた。
「だってお主を抱きたい」
「どうして」
「お主が魅力的だからだ。我輩はこの家の主人だぞ。お主は我輩に金で買われてる」
「雇われている、です」
「こま……どうしても駄目なのか」
「久秀さま、御戯れはよしてくださいませ。こまは今、とても困惑しておりまする」
そのままするすると我輩の戒めをすり抜けて、土間の洗い場へと去ってしまう。乱雑だった物の悉くを持っていかれ、我輩だけがぽつんと取り残された。
それでも昼間見た夢が忘れられず我輩は悶々と過ごした。共に夕食を取り、他愛ない会話をしていても、その夢の残滓がしつこくまとわりついた。
寝屋に入っても、目を閉じても思い起こすのは昼間見た幻惑だった。
このままこまを襲いに行けば、果心居士の良いように弄ばれている気がして癪だが、抱かずに今まで通り空しさを秘めて自らを慰めるのも飽いた。
静まり返った夜更け。この小さな家屋には我輩とこましかおらぬ。
何に気を使うというのだ。何が我輩を踏み留まらせるというのだ。
らしくない。このように悩むなどらしくない。
決起したのは丑の刻を過ぎた辺りである。
夜中すやすやと眠るこまの部屋に入った。抵抗されぬように手首を布団に縫い付けて、体位をうつ伏せにする。
尻の割れ目から菊座がちらりと見え、更に下に目をやると、きちんと閉じられたこまの陰唇に視線が行く。
流れ出る快楽の果汁に今すぐ口付けて啜りたいと思った。桃のように弾む臀の間に顔を埋めるとこまの体が反射的にピクンと跳ねた。
暗闇の中で目を凝らすとただの寝相であると得心する。何度か身悶えしていたが大人しくなった。
それから我輩は形振り構わず舌を這わせた。豊満な女の香りがする。一人の時ならば嗅ぎ慣れていたものだ。ただし、こまを屋敷に引き入れてからはご無沙汰であったせいか、犬か何かのように夢中で啜った。
まるで女を知らぬ小僧のように丹念に、熱心に暗闇の中で舌を使って観察した。
人前に出る者らしく処理された丘陵に、柔らかくなりつつある、短めの毛が時々ちくんと鼻の頭に触れる。
舌には淫水のとろみを感じ、己の下劣な行為に苦笑しつつも下腹に血潮が集中するのを自覚した。
煽れば煽っただけ、躰というのは素直に反応するらしい。時々唸るような小さな声がしたかと思うと、また寝息が聞こえる。
見知らぬ者を犯すよりもよっぽど気持ちが張り詰めていた。
それにしてもこのように弄ばれながら良く起きないものだ。
我輩は其を呆れつつ、また是とした。
しかし、長い人生の中で好いた女というのはこまを除いてそうは居なかったせいか、このまま貫こうという獣染みた欲望はなかった。
どちらかと言うと、頑なな守りを崩して自らを開示させたい欲望の方が何倍も強かった。
それに自分自身がこまを愛したいという、似合わぬ願いを持ってしまった以上、無理矢理手込めにするというのも本意に反していた。
起きぬのならしない。
しかし収まりがつかない我輩は、執拗なくらいこまの蕾のような核を嬲り責め、弾いては吸い、舌で転がした。
時折寝返りを打つ所作などで邪魔をされるが、こまが動いたならそれに合わせて我輩も股の間に顔を埋めた。
こまの核や、肉壺を舌で味わいながら我輩は自分の物をしごいた。
興奮した。
このような遊びは今までしたことがない。
しかも相手は好いた女だ。
起きた時にどの様になじられるのか、そう思うとますます興奮は増した。だが、目覚めたが最後、我輩は容赦なくこまを犯す。
もう決めていた。
かれこれ四半時はこまを玩具にして慰めた。しかしそろそろ爆ぜる限界を感じ、手を休めた。
しかし一向に起きる気配の無いこまに対し、いい加減苛立ちを感じ、散々痛め付けられ小指の先程に肥大した核を前歯で柔らかく噛んだ。
「……んっ」微かに声がした。
(おや……)
一瞬の反応で急に楽しくなった。
もう一噛みした。
今度は体を捩って逃げようともがく。
起きないのを良いことに次は脚を押さえつけて正面から核を弄んだ。
何度も先程よりも入念に食んだ。
すでに夜具を濡らすほどの洪水がこまの股の間で起こっている。
中指を入れて入り口近くの腹の下を撫でるように押し上げる。円を描くようにぐりぐりと攻めあげると、空洞だった中身が急に収縮を始めた。
きゅんきゅんと激しく動く中身に我輩は口の端を上げた。
(起ているな、こま)
ほぼ確信に近い推測のもと、核と中身を同時に擦りあげると躰の痙攣を伴った。
「あぁっ」
そして堰を切ったように声が発せられた。
ようやく手を止めた。ゆっくりとその顔を覗きこむ。薄目を開けて、すがるような眼差しがこちらを見ていた。
「……いつから起きていた」
「最初から……」
こまは涙を湛えながら、ふーふーと猫のように息を殺し、夜具を轡のように噛みながら声を押さえていた。
瞳はすでに快楽に染まって、辺りは暗くとも、その頬の色は赤に違いないと思った。
明かりの少ない部屋で、その欲情を押さえつけた表情がなんともそそった。額に汗し、その頬にはその汗で髪が張り付いていた。
どうして我輩は今まで気が付かなかったのだろうか。
良く見れば握りしめていたであろう夜具の端が皺になっていた。視線をすぐ下にやれば、感づいたはずだった。
「久秀さま……どうしてこんなこと」
「昼間に言ったろう。お主の魅力に勝てないから、抱きたいと」
「やめてはくれないのですか」
「やめるくらいなら我輩は最初からやらない」
御免、と一言呟くとこまを組み敷いた。そのまま濡れそぼった、熟れた肉壺へと、充血し硬直した鉾を一息に捩じ込んだ。
「だめ!」こまが叫んだ。
「無理だ」我輩は拒絶を却下した。
一瞬の間があった。
下の口はほんの少しだけ抵抗し、後は待っていたかのように鉾を引き寄せる。
こまの上と下は全身全霊で抗おうとじたばたともがくのに対して、腹の中央は心待にしていたかのように最奥の扉まで一気に我輩を導いた。
腹の一番奥に収まった。歯を食いしばるこまの顔が暗闇の中でぼんやりと浮かんだ。
堪らなかった。
まるで引きちぎられるかのような痛みすら伴う快感だ。急激な収縮をするその名器にとてつもない射精感を伴ったがなんとか耐えた。
こまは入れた途端に痙攣した。
散々弄んで来た為かすぐに極めた。
獣のような咆哮を発しながら、牝である歓喜を叫んだ。
女になった悦びは本人よりも躰の方が素直に体現していた。
小さく震えるこまの中にゆっくりと腰を下ろしていくと、びくびくと中身がうねりをあげて、また締め付ける。
何人も抱いてきた。それ故分かる。
さめざめと泣いているこまを我輩は抱き締めた。
破瓜の血こそ流れずにいるがこれは間違いなかった。
「嬉しいな……本当に生娘か」
「最初からそう申し上げております」
「嘘だと思っていた。お前ほどの美貌だから」
こまはもはや抵抗を諦めたのか抱き締められても、腰を深く落としても何も言わなかった。
ただ浅い呼吸を繰返し、まるで鳥の雛のように震え、唇を噛み締めている。
「こま」
「はい」
すぅっと涙が溢れた。眉間には深く皺が刻まれていた。息をするのもやっとだと言うように、答える寸前に短くも深い息を吸っていた。
「痛むのか」
「引きつれるようです」
「すまぬ。止まらない」
抱き締めたまま、ゆっくりと動きを開始する。
男の悪い癖だろう。一度収めてしまうとどうにも本能が動けと命じるのだ。
この中で果てたいという欲望がすでに首筋までせり上がってきていた。
優しくしたいなど、何やら欺瞞のように思えてきた。
むしろぐちゃぐちゃに壊して、継ぎ接ぎで付け直してやろうかとすら思った。
一突きごとに図らずも女になっていくこまはこの傲慢な猛りを知る由もなく腹に衝撃を収めて行く。
すでに痛みは吹き飛んでいるのだろう。
先程から甘えるような鳴き声をあげながら背中の夜具を握りしめている。
堕ちていく恥辱に耐えようと、声を上げ無いように努めているが、漏れ出てしまうのを妨げる手立てなどない。
強姦しておいて威張れぬが男の冥利に尽きた。
張り上げるようなよがった声も好きだが、堪え忍ぶ先から滴のように聞こえる声こそ男心を満たしていく気がした。
純白の衣を赤にも青にも染められると思うとまた下腹に血が集まる。
涎洟を垂れ流し、快楽を拒みきれないこまに語りかけた。
「気持ちよくしてやるから我慢するな……声を、出せ」
「ふぅ……ぅっ」
「そうだ……上手だ」
強張った体からゆっくりと力が抜けていく。重さをこまに預けたまま、ゆらゆらと腰を動かして行く。
動く度にまだ本人すら聞き慣れぬであろう可愛い喘ぎがした。戸惑う表情が自分を持て余していると語っていた。
押さえきれず口付けた。
そのか細い喘ぎすら飲み干したいと思うほど、全てを欲しがった。
「くるしい」
「うるさい……もっと泣いて抵抗してみせろ」
「後生ですから……息を」
赤い顔でそう訴えるこまに、ずんずんと腰を打ち付ける。
容赦などしたら行けないのだ。
女にしてやる。ただの女じゃない。
我輩のすべてを注ぎ込んで、他に目移りせぬように覚えさせるのだ。
そう意気込みつつ、素人でも感じられるように的確な位置を突けば、腰を浮かせてこまは喜んだ。
止めていた堰が切って落とされたように、甲高い悲鳴を上げて「お止めください」ともがいた。
「変になりまする! やめて、やめて!」
「放すか。とっとと行って楽になれ」
縺れ合いながら、その腰を抱く。こまは渾身の力で這い、時々上下が逆転したり己のみが背を向ける形で逃げようとしたが所詮女の力である。
背後を向いたときにこれ幸いと、掴みやすくなった腰に思いきり小矛を叩きつけるとこまは小さく唸って目を白黒させた。
極めたのだろう。
かれこれ一刻以上を前戯に費やしていたのだ。極めぬほうがおかしい。
中身が収縮し、我輩の触角から精液を搾り取ろうと中身がうねっていた。
「背後からねじ伏せられるのがお好みかな? お姫様」
意地悪するように囁くと、かぁっと頬が赤くなった。
男を知ったばかりだと言うのに派手に極めたことを恥じているのだろうか。
我輩はまた仰向けにすると、その顔を見ようとする。
遮られたが、腕ごと縛り付けてまた口付けた。
その口内を舐め回しながら、問いかけた。
「こま……気持ちよかったか?」
「……聞かないで」
「それは良かったということか?」
「……久秀さまなんか嫌いです」
「お主に嫌われたら我輩は死んでしまう」
耳朶を食む。確りと顎を押さえつけて胸に抱く。左腕はこまの頭の枕とし、右手は下腹を滑って、柔らかな稲妻に沿わせた。
割れ目を開いて、その中央で赤く主張する粒をゆっくりと擦り上げた。
愛液の滑りを借りて、擦るとこまは胸の中で震えた。もはや一度果ててしまえば抵抗の意思など快楽にかき消されるのだろう。
幾分か緊張を失って、羽化するさなぎのように声も艶を帯びていた。
「お主はもう我輩の物だ。きっと昨日の自分には戻れまいよ。さぁ、もう一度だ」
溢れ出る洪水を塞き止める。
こまの中は深く我輩を導いた。
柔肌を味わうように重さを加えた。
一息すると、こまが恐る恐る背に腕を回した。
「久秀さま……」
「なんだ」
「怖い……抱きしめて」
「ああ」
頷いた。
その願いの通り力強く応えた。
こまの下腹もきゅんと跳び跳ねるように応えた。
ゆるゆると、優しく円を描くように筆を動かす。こまは、激しくされた時よりも顕著に喜びの声を上げた。
心もほぐれて来たのか「久秀さま」と幾度も名前を呼ばれた。
名を呼ばれると触角だけでなく、頭にまで血が昇った。
止めどない高ぶりに歯止めが利かない気がした。
「好きだ」
腰を打ち付けながら、元服前の子供のように思いを叫んだ。
理性など吹き飛んでいた。
ただ闇雲な交接に、我輩は酔いしれていた。
「好きだ」
叫んだ。
しかし返事はなかった。
こまは息を止め、白目を剥き、仰け反って、それどころでは無さそうだった。
美相が崩れて行く様は興奮する。
この表情は我輩だけが見ることが出来る、そんな独占欲が満たされたことに歓喜した。
獣のような叫びを上げながら、こまは身を捩った。
逃がすものか、と真上から突き刺すと「死ぬ」と言って悶えた。
「しぬ、しぬ、しぬ!」
もはやそれしか言えぬのでは無いかと喚き散らして、我輩の腕に噛みついた。
犬歯が刺さり、肉が抉れそうだ。
しかし男女のまぐわいとは、殺しあいに似ている。
何故か己の肉であるはずのものを俯瞰し「食いちぎれるならしてみろ」と眺めた。
もはや痛みなど感じなかった。
「行け、行け。極楽まで連れてってやる」
我輩はこまが行くのを見届けてから、沢山の子種をべっとりと中の隅々まで擦り付けた。
夜が更ける。
朝が来てもずっとまぐわった。
我ながら老いて益々盛んであると呆れた。
こまは目の下に隈を作りながら何度目かの快感を得て極めた。ふらふらと人形のように上に覆い被さったが、完全に腎虚である。
一方で我輩は若い女の精気を吸いとって、衰えることを知らない。
触角が固いままなのにも驚いている。
年を取ると快感はそのままに射精に至らぬことが重要だった。
「久秀さま……許して下さい。寝かせて下さいませ」
「許さん。どうやらお主の気に当てられて絶倫になってしまったようだしな」
「こまはどうすれば許して貰えるのですか」
「今夜も明日も明後日も明明後日も、我輩と番うなら許してやろう」
「分かりました……分かりましたから、どうか」
目が虚ろだ。きっと分かってはおるまい。我輩は苦笑して最後に一思いに極めさせると、気絶して動けぬこまにそっと夜具をかけてやった。
今夜もきっと眠れぬ夜となりそうだと思ってこまの横で、目を閉じた。
昼間こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
20180220
白昼の夢であった。
「どうかね、霜台殿。私の腕は」
「良いものか悪いものかを聞いているのか? 悪いに決まってる。何処が悪いかは絶対に教えぬわ」
「お前さんに取って悪いのは当たり前だろう。その表情から察するにお気に召されたようだ。また来るから次回は酒なども用意しておいてくれよ」
「図々しい、二度と来るな」
にんまりと笑って戸口から去っていったのは因縁の幻術師だった。
久方ぶりに果心居士に会い、意地悪された雪辱を果たそうとして呼び止めた。
しかし何かされると踏んだのであろう。あやつがまた幻影を出したのだ。が、思いの外我輩にとってお気に召すものを具現化したのでむしろ金子を持たせて返したくらいだ。
あちらに乗せられているのは百も承知であるが、我輩が何を見たかなどは知るよしもなかろう。知られるのはまた恥でもある。
入れ替わりでこまが襖を開けた。
「久秀さま、今の方は?」
「果心居士だ」
「はぁ。あの人があの有名な」
「知っているのか?」
「久秀さまが嫌いな人は大概」
にっこりと唇が半月を描いた。
思わず、さっきの幻影が浮かび上がった。
背を向けて茶道具を片付けるこまの、ぴったりと密着した着物を脳内で脱がしていく。
鍛えられて無駄な肉を落としながらも、付くべきところに肉の付いた滑らかな曲線をもつ躰。
いついつ我輩はそれをものに出来るのやら、こまの丸い臀を眺めて顎に手をやった。
「考え事ですか」
「お主をな、頭の中で脱がしていた」
「ご冗談ばっかり」
警戒の無い爽やかな笑顔だった。我輩は身じろぎもせずにその屈託の無い笑顔を見ていた。
あれほど馴れ初めのころは物々しさもさもあらんというのに、今や信じきっているのか我輩の本音さえ冗談で片付けられてしまう。
戯れが過ぎるためこまでなくともきっとそう対応されるので有ろうが、少しばかり不服であった。
腕を伸ばし、こまに触れた。
不思議そうな眼差しであるが、その色に恐れはない。
日頃そのように遊びすぎた弊害であろうか。
相も変わらず掌でこまの腰や臀を撫で回すと、苦笑交じりに「動けませぬ」と子供を諭すように言われた。
「だってお主を抱きたい」
「どうして」
「お主が魅力的だからだ。我輩はこの家の主人だぞ。お主は我輩に金で買われてる」
「雇われている、です」
「こま……どうしても駄目なのか」
「久秀さま、御戯れはよしてくださいませ。こまは今、とても困惑しておりまする」
そのままするすると我輩の戒めをすり抜けて、土間の洗い場へと去ってしまう。乱雑だった物の悉くを持っていかれ、我輩だけがぽつんと取り残された。
それでも昼間見た夢が忘れられず我輩は悶々と過ごした。共に夕食を取り、他愛ない会話をしていても、その夢の残滓がしつこくまとわりついた。
寝屋に入っても、目を閉じても思い起こすのは昼間見た幻惑だった。
このままこまを襲いに行けば、果心居士の良いように弄ばれている気がして癪だが、抱かずに今まで通り空しさを秘めて自らを慰めるのも飽いた。
静まり返った夜更け。この小さな家屋には我輩とこましかおらぬ。
何に気を使うというのだ。何が我輩を踏み留まらせるというのだ。
らしくない。このように悩むなどらしくない。
決起したのは丑の刻を過ぎた辺りである。
夜中すやすやと眠るこまの部屋に入った。抵抗されぬように手首を布団に縫い付けて、体位をうつ伏せにする。
尻の割れ目から菊座がちらりと見え、更に下に目をやると、きちんと閉じられたこまの陰唇に視線が行く。
流れ出る快楽の果汁に今すぐ口付けて啜りたいと思った。桃のように弾む臀の間に顔を埋めるとこまの体が反射的にピクンと跳ねた。
暗闇の中で目を凝らすとただの寝相であると得心する。何度か身悶えしていたが大人しくなった。
それから我輩は形振り構わず舌を這わせた。豊満な女の香りがする。一人の時ならば嗅ぎ慣れていたものだ。ただし、こまを屋敷に引き入れてからはご無沙汰であったせいか、犬か何かのように夢中で啜った。
まるで女を知らぬ小僧のように丹念に、熱心に暗闇の中で舌を使って観察した。
人前に出る者らしく処理された丘陵に、柔らかくなりつつある、短めの毛が時々ちくんと鼻の頭に触れる。
舌には淫水のとろみを感じ、己の下劣な行為に苦笑しつつも下腹に血潮が集中するのを自覚した。
煽れば煽っただけ、躰というのは素直に反応するらしい。時々唸るような小さな声がしたかと思うと、また寝息が聞こえる。
見知らぬ者を犯すよりもよっぽど気持ちが張り詰めていた。
それにしてもこのように弄ばれながら良く起きないものだ。
我輩は其を呆れつつ、また是とした。
しかし、長い人生の中で好いた女というのはこまを除いてそうは居なかったせいか、このまま貫こうという獣染みた欲望はなかった。
どちらかと言うと、頑なな守りを崩して自らを開示させたい欲望の方が何倍も強かった。
それに自分自身がこまを愛したいという、似合わぬ願いを持ってしまった以上、無理矢理手込めにするというのも本意に反していた。
起きぬのならしない。
しかし収まりがつかない我輩は、執拗なくらいこまの蕾のような核を嬲り責め、弾いては吸い、舌で転がした。
時折寝返りを打つ所作などで邪魔をされるが、こまが動いたならそれに合わせて我輩も股の間に顔を埋めた。
こまの核や、肉壺を舌で味わいながら我輩は自分の物をしごいた。
興奮した。
このような遊びは今までしたことがない。
しかも相手は好いた女だ。
起きた時にどの様になじられるのか、そう思うとますます興奮は増した。だが、目覚めたが最後、我輩は容赦なくこまを犯す。
もう決めていた。
かれこれ四半時はこまを玩具にして慰めた。しかしそろそろ爆ぜる限界を感じ、手を休めた。
しかし一向に起きる気配の無いこまに対し、いい加減苛立ちを感じ、散々痛め付けられ小指の先程に肥大した核を前歯で柔らかく噛んだ。
「……んっ」微かに声がした。
(おや……)
一瞬の反応で急に楽しくなった。
もう一噛みした。
今度は体を捩って逃げようともがく。
起きないのを良いことに次は脚を押さえつけて正面から核を弄んだ。
何度も先程よりも入念に食んだ。
すでに夜具を濡らすほどの洪水がこまの股の間で起こっている。
中指を入れて入り口近くの腹の下を撫でるように押し上げる。円を描くようにぐりぐりと攻めあげると、空洞だった中身が急に収縮を始めた。
きゅんきゅんと激しく動く中身に我輩は口の端を上げた。
(起ているな、こま)
ほぼ確信に近い推測のもと、核と中身を同時に擦りあげると躰の痙攣を伴った。
「あぁっ」
そして堰を切ったように声が発せられた。
ようやく手を止めた。ゆっくりとその顔を覗きこむ。薄目を開けて、すがるような眼差しがこちらを見ていた。
「……いつから起きていた」
「最初から……」
こまは涙を湛えながら、ふーふーと猫のように息を殺し、夜具を轡のように噛みながら声を押さえていた。
瞳はすでに快楽に染まって、辺りは暗くとも、その頬の色は赤に違いないと思った。
明かりの少ない部屋で、その欲情を押さえつけた表情がなんともそそった。額に汗し、その頬にはその汗で髪が張り付いていた。
どうして我輩は今まで気が付かなかったのだろうか。
良く見れば握りしめていたであろう夜具の端が皺になっていた。視線をすぐ下にやれば、感づいたはずだった。
「久秀さま……どうしてこんなこと」
「昼間に言ったろう。お主の魅力に勝てないから、抱きたいと」
「やめてはくれないのですか」
「やめるくらいなら我輩は最初からやらない」
御免、と一言呟くとこまを組み敷いた。そのまま濡れそぼった、熟れた肉壺へと、充血し硬直した鉾を一息に捩じ込んだ。
「だめ!」こまが叫んだ。
「無理だ」我輩は拒絶を却下した。
一瞬の間があった。
下の口はほんの少しだけ抵抗し、後は待っていたかのように鉾を引き寄せる。
こまの上と下は全身全霊で抗おうとじたばたともがくのに対して、腹の中央は心待にしていたかのように最奥の扉まで一気に我輩を導いた。
腹の一番奥に収まった。歯を食いしばるこまの顔が暗闇の中でぼんやりと浮かんだ。
堪らなかった。
まるで引きちぎられるかのような痛みすら伴う快感だ。急激な収縮をするその名器にとてつもない射精感を伴ったがなんとか耐えた。
こまは入れた途端に痙攣した。
散々弄んで来た為かすぐに極めた。
獣のような咆哮を発しながら、牝である歓喜を叫んだ。
女になった悦びは本人よりも躰の方が素直に体現していた。
小さく震えるこまの中にゆっくりと腰を下ろしていくと、びくびくと中身がうねりをあげて、また締め付ける。
何人も抱いてきた。それ故分かる。
さめざめと泣いているこまを我輩は抱き締めた。
破瓜の血こそ流れずにいるがこれは間違いなかった。
「嬉しいな……本当に生娘か」
「最初からそう申し上げております」
「嘘だと思っていた。お前ほどの美貌だから」
こまはもはや抵抗を諦めたのか抱き締められても、腰を深く落としても何も言わなかった。
ただ浅い呼吸を繰返し、まるで鳥の雛のように震え、唇を噛み締めている。
「こま」
「はい」
すぅっと涙が溢れた。眉間には深く皺が刻まれていた。息をするのもやっとだと言うように、答える寸前に短くも深い息を吸っていた。
「痛むのか」
「引きつれるようです」
「すまぬ。止まらない」
抱き締めたまま、ゆっくりと動きを開始する。
男の悪い癖だろう。一度収めてしまうとどうにも本能が動けと命じるのだ。
この中で果てたいという欲望がすでに首筋までせり上がってきていた。
優しくしたいなど、何やら欺瞞のように思えてきた。
むしろぐちゃぐちゃに壊して、継ぎ接ぎで付け直してやろうかとすら思った。
一突きごとに図らずも女になっていくこまはこの傲慢な猛りを知る由もなく腹に衝撃を収めて行く。
すでに痛みは吹き飛んでいるのだろう。
先程から甘えるような鳴き声をあげながら背中の夜具を握りしめている。
堕ちていく恥辱に耐えようと、声を上げ無いように努めているが、漏れ出てしまうのを妨げる手立てなどない。
強姦しておいて威張れぬが男の冥利に尽きた。
張り上げるようなよがった声も好きだが、堪え忍ぶ先から滴のように聞こえる声こそ男心を満たしていく気がした。
純白の衣を赤にも青にも染められると思うとまた下腹に血が集まる。
涎洟を垂れ流し、快楽を拒みきれないこまに語りかけた。
「気持ちよくしてやるから我慢するな……声を、出せ」
「ふぅ……ぅっ」
「そうだ……上手だ」
強張った体からゆっくりと力が抜けていく。重さをこまに預けたまま、ゆらゆらと腰を動かして行く。
動く度にまだ本人すら聞き慣れぬであろう可愛い喘ぎがした。戸惑う表情が自分を持て余していると語っていた。
押さえきれず口付けた。
そのか細い喘ぎすら飲み干したいと思うほど、全てを欲しがった。
「くるしい」
「うるさい……もっと泣いて抵抗してみせろ」
「後生ですから……息を」
赤い顔でそう訴えるこまに、ずんずんと腰を打ち付ける。
容赦などしたら行けないのだ。
女にしてやる。ただの女じゃない。
我輩のすべてを注ぎ込んで、他に目移りせぬように覚えさせるのだ。
そう意気込みつつ、素人でも感じられるように的確な位置を突けば、腰を浮かせてこまは喜んだ。
止めていた堰が切って落とされたように、甲高い悲鳴を上げて「お止めください」ともがいた。
「変になりまする! やめて、やめて!」
「放すか。とっとと行って楽になれ」
縺れ合いながら、その腰を抱く。こまは渾身の力で這い、時々上下が逆転したり己のみが背を向ける形で逃げようとしたが所詮女の力である。
背後を向いたときにこれ幸いと、掴みやすくなった腰に思いきり小矛を叩きつけるとこまは小さく唸って目を白黒させた。
極めたのだろう。
かれこれ一刻以上を前戯に費やしていたのだ。極めぬほうがおかしい。
中身が収縮し、我輩の触角から精液を搾り取ろうと中身がうねっていた。
「背後からねじ伏せられるのがお好みかな? お姫様」
意地悪するように囁くと、かぁっと頬が赤くなった。
男を知ったばかりだと言うのに派手に極めたことを恥じているのだろうか。
我輩はまた仰向けにすると、その顔を見ようとする。
遮られたが、腕ごと縛り付けてまた口付けた。
その口内を舐め回しながら、問いかけた。
「こま……気持ちよかったか?」
「……聞かないで」
「それは良かったということか?」
「……久秀さまなんか嫌いです」
「お主に嫌われたら我輩は死んでしまう」
耳朶を食む。確りと顎を押さえつけて胸に抱く。左腕はこまの頭の枕とし、右手は下腹を滑って、柔らかな稲妻に沿わせた。
割れ目を開いて、その中央で赤く主張する粒をゆっくりと擦り上げた。
愛液の滑りを借りて、擦るとこまは胸の中で震えた。もはや一度果ててしまえば抵抗の意思など快楽にかき消されるのだろう。
幾分か緊張を失って、羽化するさなぎのように声も艶を帯びていた。
「お主はもう我輩の物だ。きっと昨日の自分には戻れまいよ。さぁ、もう一度だ」
溢れ出る洪水を塞き止める。
こまの中は深く我輩を導いた。
柔肌を味わうように重さを加えた。
一息すると、こまが恐る恐る背に腕を回した。
「久秀さま……」
「なんだ」
「怖い……抱きしめて」
「ああ」
頷いた。
その願いの通り力強く応えた。
こまの下腹もきゅんと跳び跳ねるように応えた。
ゆるゆると、優しく円を描くように筆を動かす。こまは、激しくされた時よりも顕著に喜びの声を上げた。
心もほぐれて来たのか「久秀さま」と幾度も名前を呼ばれた。
名を呼ばれると触角だけでなく、頭にまで血が昇った。
止めどない高ぶりに歯止めが利かない気がした。
「好きだ」
腰を打ち付けながら、元服前の子供のように思いを叫んだ。
理性など吹き飛んでいた。
ただ闇雲な交接に、我輩は酔いしれていた。
「好きだ」
叫んだ。
しかし返事はなかった。
こまは息を止め、白目を剥き、仰け反って、それどころでは無さそうだった。
美相が崩れて行く様は興奮する。
この表情は我輩だけが見ることが出来る、そんな独占欲が満たされたことに歓喜した。
獣のような叫びを上げながら、こまは身を捩った。
逃がすものか、と真上から突き刺すと「死ぬ」と言って悶えた。
「しぬ、しぬ、しぬ!」
もはやそれしか言えぬのでは無いかと喚き散らして、我輩の腕に噛みついた。
犬歯が刺さり、肉が抉れそうだ。
しかし男女のまぐわいとは、殺しあいに似ている。
何故か己の肉であるはずのものを俯瞰し「食いちぎれるならしてみろ」と眺めた。
もはや痛みなど感じなかった。
「行け、行け。極楽まで連れてってやる」
我輩はこまが行くのを見届けてから、沢山の子種をべっとりと中の隅々まで擦り付けた。
夜が更ける。
朝が来てもずっとまぐわった。
我ながら老いて益々盛んであると呆れた。
こまは目の下に隈を作りながら何度目かの快感を得て極めた。ふらふらと人形のように上に覆い被さったが、完全に腎虚である。
一方で我輩は若い女の精気を吸いとって、衰えることを知らない。
触角が固いままなのにも驚いている。
年を取ると快感はそのままに射精に至らぬことが重要だった。
「久秀さま……許して下さい。寝かせて下さいませ」
「許さん。どうやらお主の気に当てられて絶倫になってしまったようだしな」
「こまはどうすれば許して貰えるのですか」
「今夜も明日も明後日も明明後日も、我輩と番うなら許してやろう」
「分かりました……分かりましたから、どうか」
目が虚ろだ。きっと分かってはおるまい。我輩は苦笑して最後に一思いに極めさせると、気絶して動けぬこまにそっと夜具をかけてやった。
今夜もきっと眠れぬ夜となりそうだと思ってこまの横で、目を閉じた。
昼間こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
20180220