生徒交換
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8月某日。
氷帝学園から直線距離で3キロ程離れた場所にあるお嬢様学校、私立乙女学園中等部。
スポーツ、勉強共に優れた生徒達が在籍し、社長令嬢も通う名門の女子校として名を馳せるこの学園には、全国屈指の強豪と言われるテニス部が存在する。中学女子テニス全国大会を2年連続優勝という輝かしい成績を残し、3年生は数ヶ月後には部活を引退する。夏休みももうすぐで終わってしまうという矢先、同じ私立中学である氷帝学園と、乙女学園が姉妹校締結をするという噂が飛び交い生徒達の間ではその話題でもちきりのようだ。それはテニス部も同じで……
「ねぇねぇ真由美聞いたー!?うちと氷帝学園が、姉妹校締結するらしいよ~!」
「うっそマジー!?氷帝学園ってあの跡部様じゃん!跡部財閥の御曹司っていう」
「そうなのそうなのーっ!てことは、あの跡部様とあたしらがお話できちゃうってことー!?チョーヤバくね!?ヤバいってマジで!!」
「それはほんとヤバい!ていうか妃香琉はそれ知ってんのー?」
「知ってるんじゃなーい?あの妃香琉だもん絶対知ってるって!つか今どこにいるんだろー?」
そんな会話を繰り広げているのは、そばかすがチャームポイントのギャル系女子と、髪の毛に派手なパーマをかけた同じくギャル系女子。そんな見た目だが、ふたりとも乙女学園中女子テニス部のれっきとした部員である。彼女達が探している女子は今ここにはいないようで、テニスウエアに着替えてから探しに行こうよと部室を出ていくがナイスタイミングであろうか、ふたりが探していたその女子がコートへとやって来た。どうやら軽くストレッチをしてから、走り込むために外周に出ていたようだ。その姿を見つけて名前を叫ぶように呼びながら、彼女の元へパタパタとふたりは駆け寄っていく。
「真由美~どうし…」
「ねぇ妃香琉聞いた!?氷帝学園との姉妹校締結!!」
「えっ?えっ?いきなりどうしたのかと思えば…。ていうか知ってたんだ?」
「あったりまえでしょー!この真由美さまの情報量舐めんじゃないわよー?今じゃほとんどの生徒がその話でもちきりなんだからさぁ!」
「そうそう!あの跡部様とお話できるかもしれないなんて~!これは一大事よ!!」
「そ、そう……だね、ハハ」
淡々と繰り広げられる話に耳を傾けながら練習メニューに目を通し始めた彼女こそ、乙女学園中女子テニス部部長にして生徒会長でもある園城妃香琉。赤毛のショートヘアーが特徴的で、中学女子テニスでは唯一無敗を誇る全国区プレイヤーだ。ちなみに、そばかすの女子が花柳真由美、パーマの女子が沢田リサという名前で妃香琉とはクラスメイトであり友人でもあり、いい所のお嬢様だ。もう少し姉妹校締結について話をしたいところだが、テニス部の顧問である佐野美和子から招集がかけられてしまい、渋々メインコートのど真ん中へと集められた。
「全員集まったわね~?先日は全国大会、お疲れ様。みんなの努力もあって、今年も優勝することが出来た訳だけど…、3年生が引退する12月までは、まだまだ他校との練習試合やら新人戦やら残ってるから、気を引き締めるように!」
『はい!』
「私からは以上ね。各自練習に戻って〜?それと、部長と副部長、大河内と時党は、部室に集まってくれる?」
『……?はいっ』
100人近く在籍する部員から、何故か指名されて呼び出される4人。そして、時を同じくしてここは氷帝学園中。男子テニス部は全国大会の準々決勝が終わり、学校へと一旦戻ってきたところであった。氷帝の中でも女子人気が高い男子テニス部には、たくさんの労いの言葉や、誰かに向けられた黄色い声援などで、外は大変賑わっていた。テニス部レギュラーの中でスクールバスを1番先に降りてきたのは、乙女学園で話題になっている氷帝学園中3年の跡部景吾、ふたりが跡部様と呼んで楽しそうにしていた張本人である。颯爽とテニスコートへ向かっている最中、どこからか可愛い声に跡部くん!と呼ばれて一旦足を止める。声をかけた女子は彼に近寄って、お疲れ様と労いの言葉をかけた。そして並んで歩き始める。
「全国大会、残念だったわね」
「あぁ。そういうお前こそ、初戦で敗退したんだろ、残念だったな」
「えぇ、そうね…もう少しであの部長さんと…、そういえば乙女学園と姉妹校締結するらしいじゃない?急な話ね?」
「あーん?知ってたのか」
「もちろんよ!今学校じゃその話ばっかりで…私たちも楽しみにしてるのよー?あの妃香琉ちゃんとテニスができるかと思ったら凄く嬉しくて」
そこで跡部は再び足を止めて、誰だそれ?と彼女に疑問の声をかける。彼女はえぇ!と驚いてから、跡部くんでも知らないことあるのねと茶化すと、彼はムスッとした表情を見せて話の続きを聞いていた。あの手塚くんとも知り合いなのよと聞いた途端、何かを思いだしたようであの女か、と呟いた。顔はよく覚えてないが、全国大会に行ってと関東大会の初戦で青学を応援している姿だけは覚えていたようだ。彼は不思議な縁だなと、ふと笑いが込み上げてきた。そしてその女子は、まだ練習が残っているからと女子テニス部の方へと走って行った。跡部が部室へ入ると、他のレギュラー達も集まってきてまたもや姉妹校締結の事で話が進められる。
「なんや、みんな姉妹校締結の件知っとるんやな?」
「乙女学園といや、全国大会の常連校なんだろ?女テニで唯一無敗の女がいるらしいぜ」
「そうなんですか?知ってますね宍戸さん」
「あさみがよく話してんだよ、この前の全国大会で次の試合で当たるかと思ったら負けた~!ってよ。けど名前が思い出せねぇわ」
「あー、女テニは初戦で敗退だったんだよなぁ…」
「俺らも負けてられへんで、岳人」
「だな!」
そこで、跡部のミーティングを始めるという掛け声と共に部室の別の部屋へとレギュラー達が移動を始め、榊監督も加わって反省会が行われた。その傍ら、跡部は妃香琉のことをこっそりと調べ始めていた。
一方その頃、部活を終えた妃香琉が、あのギャル系女子ふたりと一緒に学校の近くにあるファミリーレストランへと来ていた。席へ通されて早々に、山盛りポテトふたつとドリンクバー3つと注文を入れる。真由美が3人分のドリンクを机の上に置きながら、先生に呼び出されてなんの話だったのかと妃香琉に問いかけると、返って来た言葉にリサと一緒に声を荒らげた。
「氷帝に体験入学してもらうことになったから~って言われた」
「「へえぇ氷帝学園に体験にゅ…体験入学ぅぅ!?!?」」
「ちょ…っ!声デカいってば!」
「あっ…!ごめんごめんっ」
ふたりの驚いた声は店内の端の方にまで聞こえていたようで、一部のお客さんはなんだなんだと目を向ける。妃香琉はとりあえず喉が乾いたと、真由美が持ってきてくれたドリンクを半分くらい飲んでからまた話を進める。梓ちゃん達もついていくんだ?とリサが口を開いてからスマホを見て時間を確認していた。
「ふたりが言ってる跡部様って、跡部景吾のことだよね?」
「えぇっ!?あんたあの跡部様を知らないの!?」
「跡部様といえば、“俺様の美技に酔いな”じゃないのよー!知らないのはまずいよ時代遅れだって!」
「いや、知らないわけではないけど」
「アッハハ!真由美ちょー似てる!ヤバいってマジ鬼やば~!」
「だっしょーー?氷帝に知り合い通ってるからたまに偵察行くんだけど、まーじーでかっこいいから!あと忍足侑士くん、イケボ。耳死ぬから!」
なにそれちょー気になるー!と更に盛り上がる真由美とリサの姿を、アハハハ…と少し呆れながらも笑って流す妃香琉。そのあと山盛りポテトがふたつ運ばれてきたのだが、当たり前にその量は多い。リサが1本だけポテトを食べた後、今度はいつから行くのかと質問する。
「新学期からだって」
「…ってことは再来週からじゃん!4人もいないとなると寂しいじゃんね~!」
「たまには顔出してよね妃香琉~!」
「うん、そうするよ。そういえば、氷帝からも4人うちに来るみたいだから仲良くしてあげてよね?」
「もっちのろんよー!この真由美さまにまっかせなさーい!」
「リサもリサも!めちゃくちゃ仲良くするしぃ!」
ふたりからぱっちりとウインクまで飛んできて、妃香琉は安心できるとほっとした表情を見せた。その後は1時間近くだべって各自宅へと帰って行った。
その翌日、夏休みにも関わらず部活のため妃香琉が登校してくると、うしろから聞きなれた声に名前を呼ばれた。声をかけたのは、幼なじみでありテニス部副部長の風咲梓。彼女もレギュラーに選ばれる程の実力者である。艶のある茶髪で、妃香琉とは幼少期からの幼なじみだが、中学生とは思えない程落ち着いた雰囲気を持っている。彼女の口からも、さっそく姉妹校締結について聞かされた。
「氷帝学園との姉妹校締結、なかなかおおごとになってるみたいね?」
「そんなに騒がなきゃダメー?」
「みんなびっくりしてるのよ、まだ1年も終わってないのに話が決まるから。けど、あなたはすぐに男の子と仲良くなれそうだけどね」
「え?そう?」
「ふたりともー!おっはよー!」
「妃香琉がこの時間に来るの珍しいな」
立ち止まったふたりに声をかけたのは、同級生であり同じテニス部の大河内真里亜。4人の中では1番小柄な前髪パッツンがトレードマークのおてんば娘で、見た目通りの中学生。彼女もテニス部ではレギュラーとして全国大会に出場していた。学校指定のリュックサックを背負って、右手をブンブン振りながら駆け寄ってきた。一緒にいるのはポニーテールでオレンジ色の髪をまとめている、時党愛音。一瞬男性かと思ってしまうほど中性的な顔立ちをした、いわゆるイケメン女子。彼女もまたここのテニス部のレギュラーであり、乙女学園では生徒会長である妃香琉をも凌いで人気がある。4人が集まっている姿を見つけて周りの生徒達が嬉しそうにはしゃいでいる、それに気づいた梓がにこやかに手を振れば、その生徒達はキャア~と言いながら騒ぎ始めた。
「早く部活行こうよ!妃香琉!あたしと勝負だよ~!」
「よーしコテンパンにしてやる~!」
それを聞いた真里亜がええ~やだよぉ~と焦って逃げようとするのを、梓と愛音が笑いながら見ていた。
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