生徒交換
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9月も始まりを迎え、今日からいよいよ氷帝学園での本格的な生活が始まる。
氷帝学園の正門前に8時30分集合と聞かされていた愛音が、さっそく氷帝学園の制服を着て現れた。慣れないネクタイにも落ち着かず、周りをキョロキョロ。他の3人は来ている様子がなく、彼女は氷帝学園の生徒達とすれ違う度に自分に視線が向けられることに、ため息をついていた。内心帰りたい…そう思った時、見慣れた顔が視界に入ってくると少し安心した表情を見せた。
「あら、早いわね?おはよう」
「はよ、あとのふたりはまだか」
「ええ。真里亜は今向かってて、妃香琉からは連絡無し………やっぱりねぇ」
「なら妃香琉は寝坊だな完全に」
「なんとなく予感はしてたわー、全くこんな時に…」
「あっ、真里亜が来た」
「おっはヨーロッパ!」
「「そのギャグいらん」」
「えええ~~!?あれっ?妃香琉はまだ来てないのー?」
「あいつは寝坊だ」
その愛音の言葉には納得しながらも、真里亜の渾身のギャグは完全にスベってしまった。あと5分ぐらいで約束の時間が来てしまうが、妃香琉が姿を見せる様子はなく、3人が仕方なく職員室へ上がろうとした時だった。目の前に黒塗りの高級車、リムジンがゆっくりと止まる。運転手らしき人が後部座席のドアを開けると、躊躇することなくスッと降りてきたのは氷帝学園中テニス部部長であり生徒会長でもある、3年生の跡部景吾であった。その瞬間、近くにいた女子生徒達が黄色い声をあげ始めた。グルっと正門を囲むようにほんの数秒の間で人が集まってきて、3人はただ驚くしかなかった。その様子に嫌な顔を一切せず、むしろ余裕の表情で立っている跡部はまるで芸能人のようであった。
3人は思わず驚いて、すごっ…、と言葉を零していた。そしてすぐ近くまで彼が来ると、真里亜だけが目をキラキラさせてわあ~本物だ~ととても関心している様子を見せていたのだが、あとの2人は若干引き気味だ。
「よう。ちゃんとうちの制服で来てくれたようだな、感謝するぜ」
「ええ、わざわざ持ってきてくれて助かったわ。あっちの制服じゃ、完全に浮いてたもの」
「真里亜氷帝の制服ださいからキラーイ」
「あーん?随分とバッサリじゃねえの。ところで1人足りてねえが」
「妃香琉は寝坊だからまだ来ないわ。もう時間になったし、私達だけでも職員室に…」
そこでなにかに気がついたのか、梓の言葉が途切れた。それには跡部も不思議そうな顔をしていてよく耳を澄ますと、遠くから微かに車が猛スピードでこちらへ向かって来ているエンジン音がするのだ。その音は段々近づいて来ていてそこにいた全員がその音のする方へ目を向ける。周りにいた生徒達も、なんだなんだと同じ方向に目を向けると、遠くから真っ赤な車が近づいてきている。その車は今度はブレーキ音を立てて3人と跡部の前で止まった。その車を見た生徒が、すげぇフェラーリだ!と驚きの声をあげた。氷帝学園ではスポーツカーが学園の前に止まることはなく、とても珍しい光景のようだ。
そこから悪びれもなく颯爽と降りてきたのは……
「ふぅ、お待たせっ(謎のモデル立ち)」
「「「なにカッコつけてんの」」」
「妃香琉お嬢様!呑気にカッコつけてないで、真面目にしてください!すみません皆様、お待たせしてしまって…!」
「気にしないでください明美さん、後で叱っておきますから」
運転席に座っていた女性が、妃香琉にそう喝を入れてから丁寧にも謝罪をしていたが、梓が呆れながらもファローを入れる、しかし彼女の目は笑っていなかった。寝坊して遅れてきたくせに、あの態度である。近くまでやってきた妃香琉の姿を見て跡部が口を開いた。
「やはりお前、あの時の…」
「…あれ?手塚と試合してた…、誰だっけ?」
「跡部景吾だ」
「あぁ、あんたが跡部様ね」
突然の自己紹介に驚くこともなく妃香琉は名前を聞いた瞬間に、あの関東大会で手塚国光と試合をしていた人物だということを直ぐに思い出した。だがしかし長話をする間もなくすでに5分オーバーなので、跡部は4人を連れて職員室へと向かう。校舎に入っても、氷帝学園の生徒達は見たことのない彼女達に自然と足を止めて見入っていた。応接室で教頭先生がある程度学校の説明をするという事で、そこで跡部は先に教室へ行くと足を向けて離れる。学校のパンフレットを渡された後、妃香琉は跡部がいるA組、梓は忍足がいるH組で、真里亜と愛音は向日がいるD組、というクラス分けになっているらしく担任の先生が迎えに来てくれた。先生の後ろをついて行きながら、D組は騒がしくなりそうねと梓が心配していた。そして教室が近づくにつれて段々緊張してきた4人、特に真里亜は、友達ができるかとしきりに心配していた。その前に勉強にもついていけるかを心配して欲しい、真里亜は赤点の常習犯だ。
「じゃ、後でねー」
「ばいばーいっ」
コンコンとノックをし、開けられたA組の前方ドア。
すると突然、教室の中が拍手で溢れる。どうやら妃香琉を歓迎するための、小さなサプライズだったようだ。先生に手招きをされ中に入り軽く自己紹介をして指定された席に移動していると、彼女に興味津々なのか、クラスの生徒たちはヒソヒソと盛り上がっていた。妃香琉が席に着くと隣に座っている人物に対して明らかに嫌そうな顔を見せた。
「そこまで嫌な顔をされるとは、俺様もまだまだだな」
「まさか跡部様が隣の席とはね。しばらくお世話になりまーすっ」
「フン、歓迎するぜ。ひとりぼっちで可哀想にな、まっ、テニス部の部長同士、仲良くしようじゃねーの」
「ふん、どうせクラス分けも仕組んだのあんたでしょ?」
「なんのことだかな?そんな拗ねんなよ」
「拗ねてないし」
その頃のH組。
ちょうど梓が挨拶を済ませ、席についた頃であった。なぜか様をつけて梓に敬意を示す女子生徒と、中学生とは思えない程大人っぽい雰囲気の梓に目を奪われている男子生徒。こちらでも緊張し過ぎないように気を使ってくれたのか、彼女の隣の席は同じテニス部でもある忍足侑士であった。このクラスでは、ふたりによるテストの成績で争いが起きようとは誰も思っていなかったであろう。
「あなたが忍足侑士ね、よろしく」
「梓やったか、こちらこそよろしゅうしてや。いつか手合わせ願いたいもんやな」
「ええ、私も楽しみにしているわ」
それから時は流れ、昼休み。
クラスメイトから声をかけられて一緒に昼食を済ませた妃香琉は、梓のところへ遊びに行こうと教室を出た。その途中にあるD組の前には、なぜか人だかりが。なんだろうと彼女も足を止めると、人だかりの中からある会話が聞こえてきた。
「あれほんとに女の子?すごいイケメン」
「顔整い過ぎててやばい…!」
「うちにはいないよね~あんなにかっこいい女の子」
「あれが女とか俺勝てる気しねえわ……」
ここにいる生徒全員、どうやら愛音の情報を嗅ぎつけてここへやってきたらしい。3年生のクラスに、とんでもなく顔の整った女子生徒がいるとかなんとか。
彼女は乙女学園でも人気のある存在で、テニス部の練習でも、彼女見たさにわざわざ他校から人が来るほどであった。男子とほぼ変わらないぐらいの高身長に、綺麗にしっかりとまとめ上げられたポニーテール。無口で愛想が無い分、余計にかっこよく見えるのかもしれない。周りを気にしないようにしているのか、向日と真里亜と情報交換をしている。とりあえずそっとしておこうと、そのままH組へと向かった。
「梓~?いる~?」
「あら妃香琉、いらっしゃい。ご飯はもう食べたみたいね?」
「うん。席近い子達が一緒に食べよーって」
「良かったわ。私も今食べ終わったところなの。あなたに挨拶をしたいって子が、目の前にいるわよ」
「あなたが園城妃香琉ちゃんね!女テニで唯一の無敗プレイヤー、会いたかったわ!」
「えっと…誰?」
「はじめまして。私氷帝学園女子テニス部部長の、橘あさみ。明日からよろしく頼むわね!」
「よ、よろしく……?」
妃香琉に挨拶をしたいという女子生徒。
彼女の名前は、橘あさみ。ここ氷帝学園中女子テニス部の部長である。明るめの茶髪を短めのポニーテールでまとめてあり明るい性格をしている。差し出された手を、彼女は握り返した。明日から3日間の言葉にはピンときていなかったが、女子テニス部と3日間の練習をした後で男子テニス部と合流するらしい。妃香琉と梓は知らされていなかった情報に、目を丸くして驚いていた。
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