生徒交換
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
4人がオーストラリアにやってきた翌日。
選手村にある大きなショッピングモールを散策していると、中にあるレストラン街で美味しそうなパンケーキを見つけた真里亜が、これ食べたい!と目を光らせて食品サンプルを眺めていた。3人にも、一緒に食べようよ~!とちょっとしたおねだりをしていた。まだ昼前だぞと、愛音が眠そうに返事をする。彼女が気になっているパンケーキは日本でも食べられそうだが、やけにサイズがデカいいわゆるアメリカンサイズだ。
「ねぇ、こんなおっきいのもしかしてひとりで食べるつもり…?」
「そうだよ?」
「……まてまて、お前の胃袋大丈夫か?」
「ひとりはキツすぎるんじゃない?…ちょうどお腹空いてきたし、みんなで分け合って食べましょうよ?」
それでも食べ切れるの?と心配しながらも、4人はパンケーキを食べようとお店の中へと入った。真里亜曰く、胃袋はブラックホールらしいのでほとんどを彼女が平らげてしまった。店を出たところで、妃香琉のスマホが着信を知らせる。白石から、コートの予約が取れたから1回だけ練習に付き合ってほしいという連絡だった。それを3人に伝えて、彼女は一旦部屋に戻ることにした。
「ごめん、白石くんに呼ばれたから行ってくるね。…部屋に1回帰るから荷物預かろうか?」
「んー、じゃあこれだけお願い!」
「頑張れよ」
「うん。それじゃあとで」
部屋に一旦帰って預かった荷物を机の上に置いて、ラケットバッグを持って部屋を出た。コートにつくと、ベンチに座っている白石を見つけた。水分補給をしているその横に彼女もお待たせ、と言って座る。妃香琉ちゃんも飲む?と差し出されたのは未開封のミネラルウォーターだった、オーストラリアでしか手に入らない限定品らしい。
「ありがと。なんか貰ってばっかりだね」
「気にせんでえいよ。ほな、始めよか」
「今日はなにする?」
「実はな、1個試したいことあるんやけど」
試したいこととは、彼が出る予定であるフランス戦に向けての対策らしい。ダブルスは高校生の君島と組む予定になっているらしく、足を引っ張りたくないからと今から特訓しておきたいのだとか。円卓ショットはもちろんのこと、今後の事も踏まえてパワーテニス的なものを覚えたいらしい。とにかく相手のコートにできるだけ強めにボールを叩き込むところから始まり、今日の練習も呆気なく2時間が過ぎようとしていた。
「ふぅー、疲れたぁ」
「お疲れ妃香琉ちゃん。あれだけのスマッシュよう堪えたな?」
「ほとんど横切ってっちゃったけどねっ」
「けどまぁ、流石やわ。……ひとつ、聞きたいんやけど」
「うん?」
「跡部クンと付き合っとるん?」
タオルで汗を拭きながらそう聞いてきた白石に、少し考えてからどうして?とミネラルウォーターを飲もうとした手を止めて、妃香琉は返事を返した。ラケットのガットの張りを確認しながら、ジャンケンをした時にと彼は何日か前の出来事まで遡る。
「ヒッティングパートナー決める時、ジャンケンで決めたやろ?ちらっと跡部クンの顔見たら、なんか落ち込んでる気がしてな…」
「…、そっか」
「いや……すまん、変な事聞いて。ほな、そろそろ本会場行こか。ドイツと日本のエキシビションマッチが始まるで」
「エキシビションマッチ?」
「せや。各国3チームずつのダブルスを、高校生と中学生で組ませてやるらしいで。しかも初っ端から日本とドイツの試合やし、楽しみやな」
「てことは、ボルクプロの試合も見れるかもしれないね」
それから程なく経った午後のこと。
エキシビションマッチとして、日本対ドイツの試合が行われようとしている。白石のヒッティングパートナーとしてのひと仕事を終えて、妃香琉が白石と一緒に試合が開催されているコートへ向い応援席に座ると、高校生選抜からはデューク渡邊、中学生選抜からは不二周助が出てきた。試合開始直ぐから、デューク渡邊の放ったサーブがドイツの中学生選抜の顔面に当たったのをみて、彼女は顔がへこんじゃうよ…とボソッと呟いていた。そこへあとから梓がやってきて、彼女の隣に座った。
「どう?白石くんとのヒッティングパートナーは?」
「うん、楽しいよ。いろいろ教えてもらったんだ~」
「いいわねぇ、私にも教えてちょうだいよ」
「ええ~ヤダよ。そういうそっちはどうなの?白石くん以外の中学生のヒッティングパートナーなんでしょ?人数多いし大変?」
「そりゃもう大変よ。愛音だけね、ついていけてるのは」
そんな会話をしていると、日本がリードを保っていた。デューク渡邊は、元々フランス出身のテニスプレイヤーである。試合の途中から突然人が変わったように豹変し、デストロイヤーと呼ばれていたらしくふたりも突然のことにドン引き状態だ。あんな温厚そうなのに…と同時に呟いた。その割にはドロップショットは優しくさらに驚かされた。トリプルカウンターを捨てた不二のおかげもあり、ドイツからさっそく一勝を手に入れた。
そして次は入江と跡部のダブルス。
対戦相手は、クオリティオブパーフェクトと呼ばれるドイツの最高傑作Q.Pと、プロになるためにドイツへと渡っていた手塚国光のダブルスだ。突然の手塚の登場にはふたりも目を丸くして驚いて、そっくりさん、だと思っていたらしく真田も似たような反応を見せていた。
「あれ?手塚じゃん。この大会出てたんだ?」
「ボルクプロに、この大会に出なさいって言われたんだと思うわ。それにしても、オーラが増してるわねぇフフフ」
「あたしも思った」
そして試合開始。
30分もしないうちに、手塚は圧倒的な技術と力を見せつける。入江と跡部の頑張りも通用せずに、とうとう跡部は地面に膝をついてバテてしまった。大石も、あの跡部が…と動揺しているようだ。手塚が跡部に、いつまで膝をついているのかと問いかけていた。
「手塚…凄いね…」
「ええ。なんだかめちゃくちゃ強くなってるじゃない?ボルクプロのところで相当練習してきたみたいね。けれど、入江先輩が演技っぽい所が気になるわ」
「そうなの?流石、すごい洞察力だね」
梓の意見に妃香琉もそうかもと、相槌を打って答える。彼女の洞察力には目を見張るものがあり、妃香琉もこれだけは勝てないかもしれないと思っている程だ。そして試合はあっけなく終わって、跡部と入江はコートを離れた。そしてテニスバッグを持って何故か跡部がどこかへ行こうとするのを、真田や入江が止めに入る。彼は、足りないものが見つかった、とか言い始めて制止も聞かずに歩き始める。すると跡部は突然妃香琉の前を通り過ぎて、お前も来い。と謎な事を言い出した。なんで?って顔をする彼女を無理に連れていくわけもなく彼はそのまま突き進んでいく。ちょっと行ってくるねと、梓に言い残して仕方なく席を外した。ボルクプロのテニスを見れる絶好の機会だと楽しみにしていた妃香琉が、ねぇどこ行くのー?と跡部に尋ねる様子を見ていた不二は、白石にこう問いかける。
「彼女、キミのヒッティングパートナーなのにいいのかい?」
「んー、えいんとちゃうかな、今日はもう練習付きおうてもろたし。試合を見学するのも大事やから」
ならいいんだけど…、という不二の表情はどこか不思議そうだ。ひとり残された梓のところに真里亜と愛音もやって来て、ふたりも不思議そうに妃香琉の背中を見ていた。
✻✻✻