生徒交換
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「俺様がトップバッターだ」
海外遠征組が帰ってきた翌日。
日本代表選手を決めるシャッフルマッチが開催されることとなり、4人も見学しようとコートへ集まってきた。高校生対中学生でのダブルスが始まろうとしていた。1番最初に出てきたのは、まさかの跡部景吾。そのダブルスパートナーは…
「行くぞ仁王」
「待っとったぜよ…」
立海大附属中3年、仁王雅治だ。
意外な組み合わせに周りがどよめく中、真里亜が仁王くん頑張ってー!と声を張り上げて声援を送った。びっくりした3人の視線は一気に彼女へと向けられ、愛音がうるさ…とポツリと文句を言っていた。それに仁王は気づいて、ちゃんと見とくぜよと真里亜に言ったら、彼女はうん!と大きく頷く。
対する高校生は、1年生の毛利寿三郎と3年生の越知月光ペアだ。そして仁王は早速、イリュージョンを使って手塚国光へと成り代わる。幻とされたダブルスの始まりであった。
越知の高速サーブに圧倒されながらも、跡部仁王ペアは確実にポイントを奪っていく。そして、仁王が零式ドロップショットを放つと、不二周助の口から確実に本物に近づいているようだと聞こえた。そして手塚ゾーンをも見せつける仁王には、真里亜も凄い凄いととても喜んでいた。しかし、何故ここまで彼に懐いているのだろうか…?3人も不思議に思っているようだが、謎は明かされそうにない。
それからしばらくして、ゲームスコアは4-4となり、1回目のチェンジコートを迎える。すれ違う際になにかがあったのか、その後の跡部のサーブがまったく入らず、時間とポイントだけが過ぎて加算されていく。すると突然、真里亜が越知に対して何かを感じ取ったのかどこか怯えたようにこう言った。
「あの背の高い人、なんだか怖いね…」
「どうしたんだよ急に?」
「だって、跡部様のことすっごい目付きで睨んでたよー?あたしだったら、一緒にテニスやりたくないなぁ~」
試合はいよいよ、タイブレークへと突入する。
跡部が得意とするタイブレークだが、越智のプレッシャーにどうやら冷静ではいられなくなってしまったようで、ボレーをミスしたりなかなかポイントが決まらず追い詰められる。その様子を見ていた妃香琉も、ソワソワしてしまい落ち着かないでいた。跡部が捉えようとしたボールが、ふと外へと逃げ始めた。仁王は手塚ファントムを駆使していく。腕への負担が大きすぎるため、とうとう仁王の肘が限界を迎えて、倒れ込んでしまった。ひとりになってしまった跡部は、プレッシャーから立ち直ったのか全てのボールに立ち向かう。それでも彼らが不利なのには変わらない。すると樺地が、ラケットを持って前に出てきた。跡部の様子を見て、助けないといけないとでも思ったのだろか。だが他選手の加勢は、規則上では合宿所退去となっている。菊丸や宍戸と鳳が服を掴んで引き止めようとする中、真里亜も一緒になって引き止め始めた。
「待って!ダメだよ樺ちゃん!加勢したら、規則違反でここに居られなくなっちゃうんだよ!?だから絶対ダメここにいて!」
「…!」
「真里亜…」
「やだわ。あなた…半泣きじゃない」
半泣きになりながら樺地を止める彼女に、梓がポケットに入れていたティッシュを差し出した。だがその制止を振り払い、樺地は跡部を助けるためにラケットを握ってコートへと入って行く。他選手が加勢したため、ポイントは無効になるはずが、越知の助言により有効となった。しかし、規則違反として樺地の合宿所退去は実行された。落ち込む真里亜を含めて、去っていく背中を誰もがただただ見つめるしか無かった。跡部が、誰にも聞こえないような声でバカヤロウと零した。
そして試合が再開。
完全に、仁王雅治は動けなくなってしまった。
地面に伏せる彼の変わりに、跡部はひとりコートを右へと左へとかける。そしてついに、同調(シンクロ)が始まった。メンタル面以外にも成長を見せる跡部に、コーチ陣もとても関心していた。
この試合は、なんとか中学生ペアが勝利したが、動けなくなってしまった仁王は、救護班によって担架で運ばれて行った。勝った跡部が高校生側のベンチに一旦腰を下ろしたが、落ち着かなかったのか中学生側に帰ってきて座った場所は、何故か愛音の横だった。残念ながら妃香琉の横はガードされていて座れなかったようだ。
「あら、お顔の整った人が並ぶと迫力あるわね?」
「こいつと一緒にするな」
「あーん?随分な言い方だな」
「(朝からなにも食べてなかったな)はーあ、お腹空いた」
「珍しいな、妃香琉がそう言うの」
「ココ最近やっと食欲戻ってきたみたいでさ、お昼はなんだろうね」
「そういや、真里亜がおでんがなんとかって言ってたな…?」
「おでん?そっかもうそんな時期だね~」
そんな会話をしてから妃香琉と愛音が立ち上がると、梓も少し遅れて立ち上がりついていく。まだいくつか試合が残っているが、朝ごはんも食べずに外へ出てきてしまった為、まだ昼前だがレストランへと向かった。今日は何があるんだろうと少し背伸びしてレストランの方へ目を向けると、先にせっせと行ってしまっていた真里亜がトレーを持ってひとりワイワイしていた。何か言っているのをよくよく聞いてみると、はんぺん、を連呼していた。
どうやら本当におでんが用意されているらしい。
「おじさん!はんぺんたっくさんちょうだい!あとこんにゃく!」
「ハッハッハ、お嬢ちゃん、はんぺんが好きなのかい?それじゃ今回だけ特別に5個入れといてあげるよ!」
「わぁ~!ありがとうおじさん!」
「「…なにしてんの」」
「あっ!みんなもおでん食べようよ!はんぺん!」
「なに、はんぺんに取り憑かれたの?」
違うよ?大好物なの!と、さっそくはんぺんを食べ始める真里亜。もっと他にないのかよといつものように愛音がつっこむ。ツボにハマってしまったのか、ゲラゲラ妃香琉が笑っている。あとから来た梓が、はんぺんばっかり食べてるとまた太るわよとお母さんのように心配していた。それから、おでんの中で好きな具はなにか、という話に流れていく。
「そうねぇ。やっぱり、味の染みた大根じゃない?」
「あたしは餅入り巾着かな、餅好きだし」
「あたしもやっぱりはんぺんかなぁ~」
「やったぁ!妃香琉と一緒!」
「おでんと言えば、玉子やろ」
すると突然、ぬっと、忍足侑士が彼女らの元へやってきた。間から顔を出された梓と真里亜が驚いていた。俺も一緒にええか?と聞いてから椅子に座った。器には玉子が多めで盛られていて、ここにも真里亜みたいな人がいると妃香琉がボソッと呟く。
「そういえば、関東と関西じゃおでんの味って違うんだよな?」
「せや、関西は薄口醤油、関東は濃口醤油やねん。俺はどっちも好きやけどなぁ、けど牛すじが入ってないのは納得いかへんな」
「へえ、具も違ったりするんだね」
そして今度は跡部がやって来て、物珍しい顔をしておでんを見ていた。真里亜がこんにゃくあげる!と竹串に1個だけ刺して渡せば、それも物珍しそうに見つめてから口に入れた。なんだこの食感は?と驚いていた、どうやらおでんは食べた事がないらしい。そしたら妃香琉が、お腹いっぱいだから部屋に帰るねと、そそくさとその場を離れてしまった。その手前で、彼女が跡部に1度視線を送っていてあまり良さげな表情をしなかった様子を、付き合いの長い梓が気づいていた。
「跡部が来た途端にあの子いなくなっちゃったわね、なにかあった?」
「妃香琉に何したんだよ」
「なんもしてねぇよ」
「あらおかしいわね?あの子案外社交的な所あるから人間でもあまり好き嫌いはしないのだけど…?」
「俺様には関係ねぇ」
「「「ふーん?」」」
真里亜以外の3人が納得いかなそうに相槌を打つから、跡部は俺様を疑ってんのかと嫌そうな顔で言う。空気が読めない呑気な真里亜は、おでんおかわりしよ!っとスタッと立ち上がってシェフの元へと駆け寄っていた。
✻✻✻