生徒交換
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合宿初日。
氷帝学園中のスクールバスに乗って、4人も今日からU-17の合宿へ参加する事となった。他の3人が先にバスへ向かって、妃香琉はある人物と話をしていた。
「この前助けてもらったお礼、渡せてなかったから。良かったら皆さんで食べてちょうだい、大したものではないけれど…」
「…、いいの?ただ保健室連れてっただけなのに」
「お父様に話したら、ぜひにと言うから…。合宿、頑張ってきて」
「ありがと、郁ちゃんも無理しないでね」
彼女の背中を見送って、妃香琉もバスが待つ場所へと向かった。バスの中からその様子を見ていた跡部が声をかけたが、彼女は気がつかなかったようで、スイっとそのままバスの奥の方へと向かってしまった。後から来た忍足が、隣座るで~と言って跡部の隣の席に座ったら、彼は険しそうな顔をして窓の外に目線を外す。
「なんや、俺隣じゃ嫌なん?」
「別に?想定外だったもんでな」
「ふーん?」
なんのことか分からない忍足を他所に、バスは走り始めた。一番後ろの席を陣取って4人は座っている。30分ぐらいバスが走ってから、窓際でひとり寝ている愛音と、その反対側の窓際から順番に梓、妃香琉、真里亜と座って、3人は先程の彼女から貰ったお菓子を分け合っていた。
「愛音、お菓子食べるかな?」
「あんまり甘い物好きじゃないみたいだよー?」
「じゃあ少しだけ残しとこっか」
「それにしても、結構山奥なのね。夜は寒そうだわ」
「ほんとだー。ブランケットでも持ってくればよかったなー…」
「きっと、向こうで貸してくれるんじゃない?」
「あら?あそこにいるのって青学じゃない?」
その梓の言葉にふたりが窓ガラスを覗き込むと、スクールバスに驚いて立ち止まる誰かが見えた。それから少ししてからバスが止まって、愛音が丁度起きてきた。着いたよ!という真里亜の声に、欠伸をしてから席を立った。バスを降りて少し歩くと、そこには今まで見たこともないような数多くのコートがびっしりと並んでいた。既に高校生であろう選手達が練習に励んでいて、パッと見でも10面以上あるそのコートに4人が圧倒されていると、誰かに声をかけられた。
「そこにいるのって、もしかして妃香琉かい?」
「…、えっ幸村!?」
「あらほんと。立海も全員呼ばれてたのね」
「まさか、こんなところで再会出来るとは思わなかったよ。君たちもこの合宿に?」
「あー、まぁ。いろいろあって、見学みたいなものかな」
そしてそこへ、先程見かけた青学メンバーが揃って到着した。よく見ると、越前リョーマだけそこに姿がなかった。菊丸を見つけて、真里亜が駆け寄っていく。
「おおー!真里亜たちじゃんやっほー!」
「菊丸くん!久しぶり!」
「園城、久しぶりだな」
「手塚、元気そうだね。腕の調子はどう?」
「ああ、問題ない」
「ねぇねぇ菊丸くん、越前くんはいないのー?」
「越前なら、今はアメリカだよーん」
「そうなの?静かなはずだわ」
招待された中学生が全員揃ったようなところで、突然ここの戦略コーチである黒部由起夫が現れる。300名は多すぎるとのことでボールを取れなかった46名は帰れと言って、上空から大量のボールが降ってきた。関係ないはずの4人も慌ててボールを1個ずつ取って、近くにあった建物の屋根下に避難した。
「おいおいマジかよ……いきなりボール落としてきて取れなかったら帰れって…」
「みんなボール取れた?」
「ええ、バッチリよ」
「真里亜も取ったよちゃーんと!」
「私たち、これからどうするのかしらね」
「貴方達ですか、氷帝学園中に体験入学しているという、乙女学園中テニス部の女性陣は」
するとそこへ、先程の黒部コーチが現れた。
高みの見物とはいきませんが、とかなんとか言って4人をとある部屋の中へと案内する。案内された部屋には、無数のモニターが設置されている。コート内や建物の中、外などの監視カメラを設置している場所は、全て見られるとのこと。選手達の練習の様子も監視しているらしく、無駄話や関係のないことをすると即降格としていると聞かされ、4人にも緊張が走る。
「貴方達にも、一緒にトレーニングなど参加していただきますが、無理をする必要はありません。女性ですから、具合が悪い時などは遠慮なく休んでください。将来テニスを続けるのであれば、必ず努力は報われますから。今日からよろしくお願いしますね」
「「「「よろしくお願いいたしまーす」」」」
「さっそくですが、先に施設の案内をしておきましょう。人手不足なので、申し訳ないですがこの案内図を見て自由に回ってください。終わったら、ここへ帰ってきてもらえますか?」
「わかりました(急に投げやりになったな……)」
妃香琉が内心そう呟いて、黒部コーチからパンフレットを預かった。パンフレットの中身を見ながら、施設の中を回ろうと部屋を出た。結構広いねなど談笑しながら、トレーニングルームから順番に回って行く。外の様子が気になって、真里亜がなんだかソワソワし始めた。
「ボール取れなかった人達と、揉め事にならなかったらいいね~」
「あら、そんなこと気にしてたの?」
「46人って聞くと、少なく感じるよな。もっと減らされるかと思った」
「あ、ここ温水プールもあるじゃん」
「妃香琉泳ぐの~?」
「あはは、まさかっ」
施設の見学も終わって先程の部屋に帰ると、モニターに越前リョーマの姿が映っていた。4人がアメリカにいるんじゃ?と疑問に思いながら、経緯はわからないが高校生と何故か試合をすることになった越前の様子を、心配そうに見ていた。ここでは野良試合は厳禁なんですが…と黒部コーチは頭を抱えていた。
「コーチ、施設内の見学終わりました」
「お疲れ様でした。広くて疲れたかと思いますのでさっそく貴方達の使う部屋へご案内しましょうか。4人部屋なので、安心してください」
それから施設のスタッフに連れられて、4人が共同で使う部屋へと案内された。女性なので、とのことで男子が使うフロアとは違う場所を用意しているそうで、セキュリティは万全らしい。併設されているレストランは18時~夕食が始まるということで、それまで4人はくつろぐ事にした。
「真里亜、上の段がいいなー!」
「とか言いながら、さっそく登ってるじゃねえか」
「妃香琉はどっちにする?」
「じゃあ、あたしも上で。…ちょっとだけ、寝てもいいかな?」
「いいんじゃない?まだ夕食まで3時間ぐらいあるし、なにかあったら起こすわ」
「うん、じゃあよろしく」
と言って、妃香琉は着の身着のまま布団に潜ってしまった。
それから平穏に1日が過ぎた翌朝。
4人がさっそく割り振られたコートへ向かっていると、なにやら外が騒がしい。シャッフルマッチ、がどうのこうの聞こえてきてなにやら名前が張り出されたボードを見に行くと、そこには青学の桃城武の姿があった。真里亜が率先して明るい声で話しかけた。
「桃ちゃん!」
「おっ、真里亜さん達じゃないっすかー!どこか行くんすか?」
「あっちにあるコート借りて練習しようかと思って。桃ちゃんは何してるの?」
「俺はこれからシャッフルマッチに出るんすよ。対戦相手は高校生なんすけど…」
「もう高校生と試合するんだ!」
「目ぇ付けられないように頑張れよ」
「上等っすよ!それじゃっ」
「「いってらっしゃーい」」
「大丈夫かな、桃ちゃん」
「心配なら見に行く?」
その妃香琉の声で、4人はシャッフルマッチが始まるコートへと向かった。桃城の対戦相手は、鬼十次郎。5番コートに在籍し、地獄の番人、と呼ばれているそうな。手に持っているラケットは、漢数字の十と張られたガットのみだった。なんかヤバそうね、と梓が呟いた。
「桃ちゃーん!頑張ってー!」
「真里亜さんちゃんと見ててくださいよー!」
「ていうか、なんで女が4人紛れてんだ?」
両手を大きくブンブンと振る真里亜を見て、そう口を開いたのは不動峰中の神尾アキラ。彼女達とは初対面で、彼女達もテニス部だということを知らないが、内心真里亜を見て、この子めちゃくちゃ可愛い…!と思ったのはここだけの秘密である。同じ不動峰中の橘桔平が続けて口を開いた。
「何言ってるんだ神尾。彼女達は、中学女子テニスでも強豪の中の強豪、乙女学園中のメンバーだぞ?。確か、今年は去年に続いて優勝したんだったよな?」
「ええそうよ、ご存知なのね」
「俺には妹が居てな。今年も、めちゃくちゃ強かったって驚いてたぞ」
そこで、いきなりコートの周りが騒がしくなる。
桃城のジャックナイフが全く効かず、両手が使えなくなってしまったようだった。周りの心配もよそに、桃城は防戦一方。それでも諦めない桃城だったが、やはり手が使えないのには有利になることができず、負けに終わってしまった。ベンチへ帰ってきた桃城に、妃香琉がタオルを、真里亜がスポーツドリンクを渡した。渡されたそれを、桃城は器用に腕に挟んで飲み干した。
「お疲れ桃ちゃん。はいタオル」
「ドリンクもあるよ!」
「二人ともどもっす(真里亜さん、相変わらず可愛いなー)」
この後に行われた試合では、まさかの出来事に4人も振り回されることになる。
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