瀬名泉
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白雪姫は毒りんごをバカ正直に食べて、深い眠りについてしまう。
そして王子様のキスで真実の愛が魔法を解いて目が覚める。
そんなのただの御伽噺にすぎない。
俺の白雪姫はどんなに俺が愛のキスを送っても目が覚めることはない。
アルビノという毒りんごは産まれたその瞬間から彼女の身体を蝕んでいった。彼女自身も彼女の両親もそして俺も神経を尖らせて注意をはらっていたのに紫外線という槍は彼女の体を串刺しにして彼女を永遠の眠りにつかせてしまった。
美人薄命とはよく言ったものだ。
つい先日まで楽しそうに海を見ていたあのキラキラの目を忘れられないでいた。それなのに今目の前にいる彼女はついさっきまで多くの管に囲まれていたのに、その1つがピーッと鳴れば気付いた時には彼女はベッドの上に身一つになっていった。
「ねぇ…起きなよぉ…」
そう言って何度も彼女に精一杯の愛をこめて口付けをする。冷たくなった彼女の唇は俺の与えた体温だけをまとい、自ら熱を持つことは無かった。それは今だけじゃなくてこれからも永遠に…
「あんた大好きだったじゃん。白雪姫…
だったら普通ここは起きるところでしょ…
なのになんで…ッ…なんで起きないかなぁ…っ!
俺の白雪姫は起きやしない…っ…くそっ…」
白に包まれた彼女はお話で聞いた白雪姫と同じ雪のように白い肌だった。しかし彼女は黒炭のように黒い髪の毛でもないし、真っ赤な唇でもない。所詮、白雪姫なんて御伽噺だということをつきつける君の頭を撫でる。
するとなまえの両親が病室に戻ってくる。2人とも悲しいはずなのに俺を気遣ってくれる。
瀬名「すみません…長居してしまって邪魔…ですよね」
なまえ母「泉くん…いいのよ…あなたが居たいだけいればいいわ…ねぇ…」
なまえ父「ああ…その方がなまえも嬉しいだろう…」
そう言って2人はこんな状況下でも俺へ微笑んでくれる。するとなまえのお母さんはこっちへと近づいて来てスっと箱を渡される「これは…?」とお母さんを見ると
なまえ母「なまえがね、渡せなくなったらママが泉くんに渡してって言ってきたの。そんな時が来るとは思ってなかったけど…」
よかったら開けて?とこちらをみるので開けてみる。そこには貝殻と2人で撮った写真と手紙が入っていた。
『泉くんへーー
これを見ているということは、私はこの世にはもういないということでしょう。
お母さんには苦しい思いをさせてしまいました。お父さんには辛い思いを強いてしまいました。
とんだ親不孝娘でした。それでも2人の元に生まれて、あなたと出逢えたことが私の最大の幸せであり奇跡でした。
泉くんと出会った時、実はすでに寿命が近いと言われていました。
瀬名「ちょっとレオくん!絶対安静って言われてるんだからベッドに戻ってよねぇ!」
月永「あはははっっ♪やっだねーー!俺は自由だーーっ」
瀬名「ああぁもう!!」
2年生のとき、怪我をした友人のお見舞いに来た泉くんは、疲れきったのか中庭のベンチに休みにきたね。お友達の"れおくん"は天真爛漫を絵に書いたような人で手を焼いてたね。結局”れおくん”とお話しすることはできなかったけど、いつかお話してみたかったな…。
そして、休みにきた泉くんにわたしが声をかけたそれが始まりだったね。
『あなたのお友達…?ふふっ、楽しそうでいいなぁ』
瀬名「…あんたは…?」
『私はなまえ、ここの患者、あなたは?』
瀬名「瀬名泉…。」
『せな いずみ…綺麗な名前だね。泉くん』
瀬名「あんたも…その…すごい綺麗…」
『それは名前が?それとも…この見た目?』
私はアルビノという病気で、まぁ珍しかったと思う。
色素が失われた身体は力なく伸びた
他人からは綺麗とも、気味が悪いとも言われてきたこの体を泉くんは「名前だよ…そんな姿別に普通だし」と言ってくれた。
ただの図星ってことを知るのはもう少し後だったんだけど、その時は私を普通の人だと言ってくれた気がして嬉しかった。
それからお友達のお見舞いついでに、私のところへ寄り道してくれるようになったことがどれだけ嬉しかったか…
瀬名「なまえはさ、外出るの好きなの?」
『こんな身体なのにおかしい?小さい頃からおてんば娘って言われてて、よく怪我して帰ったものだよ、家の中でね』
瀬名「いや家の中なの…まぁ出れない…よね?」
『まぁ、そうだね。小さい頃から親の言うこと聞かずに外にフラっと出ては倒れての繰り返しだし、中庭の屋根の下が私の限界かな』
泉くんは気づいてたんだよね。私が病院という箱庭に飽き飽きしていることを、外に出てのびのび遊びたがっていた事をーーー
でも、許されない。わかってた。私も泉くんも
だからこの箱庭での逢瀬に、私は恋をするしかなかった。
『泉くん、大好き…』
瀬名「俺もだよ、なまえ」
あなたと会って会話する日々は私のつまらない生活を彩り、満たしてくれた。
あなたが辛い時も私が辛い時も話して楽になってお互いを支え合って普通の人からしたら短い時間だったかもしれない。それでも2人にとっては、濃密な時間だったことだと思う。
そして、惹かれて告白すれば、泉くんはそれに答えてくれた。これ以上の幸せはない。
永遠に続けばいいと、そう思ってました。
でも、私の時間はもう終わりが見えていました。
『泉くん…私バイクに乗りたい』
瀬名「はぁ!?そんなのお父さんとお母さんが許してくれないでしょ!?」
『やだ…泉くんのバイク乗りたい。』
瀬名「……はぁ…言っても聞かないんでしょぉ?許可とれたら乗ってもいいよ…」
私の最後のワガママでした。泉くんに対しても、両親に対しても、自分の体に対しても…
それでもあなたと2人で、カップルのように出かけてお喋りして過ごしてみたい、と思ったんです。
それを両親に話してお願いしたら2人もどうなるのかわかったうえで、了承してくれました。
久しぶりの箱庭から出れることに、貴方と外に出れることに、幸せを感じました。何をきていくか、どんな髪型にするか、お化粧してもいいだろうか…。
そこにいたのはただの18歳の恋する少女でした。
『海!綺麗だよ泉くん!泉くんの瞳と同じ色!』
瀬名「ちょっと!はしゃぎすぎ!落ちるよぉ!」
『あははっ!このくらいじゃ落ちないよ!泉くんにギュッてしてるもん!』
海を見たのは何年ぶりだったでしょう…あなたの瞳と同じ綺麗なアイスブルーでした。
バイクに乗せてくれてありがとう…最初で最後の楽しい経験でした。
泉くんにはきっと次があると思うけど、私にとっての最初で最後は全て泉くんです。
一緒にバイクに乗るのも海を見るのも、
ハグをするのも、キスするのも、
全て泉くんに捧げました。だから…だから泉くんは新しい人を見つけてその人に最後を捧げてね。
私はあなたの心の海で泡になって溶けるから
またいつかあなたの歌声に惹かれて出逢えると信じてます。
ずっと歌っていてね。
ーーーーーーなまえ』
水が手紙の上に落ちていき、自分が泣いているのがわかった。
なまえの両親も肩を寄せあって泣いていた。
何が泡になって溶けるだ…
瀬名「あんたが好きなのは白雪姫じゃなかったのぉ…」
それじゃまるで人魚姫じゃないか…なまえの冷たい頬を撫でる。
そっか…やっぱり残された時間は彼女にはなくて、その少ない時間を俺に与えてくれたのか、ワガママを言って彼女が本当に両親に無理を言って許可をとった時は本当に驚いた、けどそこにいた全員が彼女の限界を理解していたに違いない。
あのあと、海に行ったあと…帰ってから三日ほどはいつも通りだった…。でもなまえの体は明らかにおかしくなっていった。
1週間後、学校帰りになまえのところへ行くと病室になまえは居らず、いつもいる中庭かなと思って向かうといつものベンチになまえはいた。
瀬名「なまえ?さすがにこんな時間までいたら風邪引くよぉ」
『……っ…っつ…』
瀬名「なまえ!?なまえ…っ!」
彼女はいつものベンチに体を丸めて肺のあたりを押さえていた。体が冷える感覚を覚えた。俺は急いで医者を呼んでなまえの元へといそぐ。運ばれたなまえを次にみた時には体が管に囲まれていた。
そして、その姿を長く見ることはなかった。
彼女は目を開けることなく、そのまま深い眠りについてしまった。
その姿は本当に白雪姫のように美しく、まさに眠っているようだった。
瀬名「ねぇ…次はいつ会えるかな…俺の白雪姫…」
俺の白雪姫
「無理だよねぇ…あんた人魚姫だもん」
end.
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