第二章 私の未練の話
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
美術館を後にして少しお高めのブランドが並んだ街並みを歩く。
雑誌でセレブがよく着ているファッションブランドが立ち並び、ウィンドウにはトレンドのワンピースやシャツ、ブランドマークが大きくデザインされたTシャツを着たマネキンがポーズを決めて立っている。
泉さんはそんななか目的の店があるのか一直線で歩いていく。私もそれに大人しくついていく。
すると止まったのは、これまた大手ブランドの店でドアマンが店舗の扉を開く。そこに並んでいたのは、指輪などのアクセサリーやガラス細工がキラキラと並んでいた。
瀬名「この間言ってた買い物なんだけど」
『あぁ…女性に贈り物ですよね』
瀬名「女性っていうか…う〜んお祝いなんだけどねぇ」
『誕生日ですか?それか記念日…?』
瀬名「まぁ記念日かなぁ」
胸がざわついた。女性、贈り物、記念日…そんなワードが並べば思いつくのは告白やプロポーズとかそういうことしか思いつかない…。そんな人間が私みたいな一般人を連れ回していいものだろうか…。ならその相手とプレゼント選びをした方が勘違いもおきなくていいじゃないか。なのに、どうして彼は私にそんな手伝いをさせるのか。
『そんな…そんな大事なもの、私じゃない方と選んだ方がいいんじゃないですか』
瀬名「それじゃサプライズの意味がないでしょ」
『だからって…私にそれの手伝いをさせるなんて…!失礼すぎます!』
瀬名「はぁ⁉︎あんた何そんなに怒ってるわけぇ⁉︎」
『最悪です!失礼します!』
そう言ってお店から駆け出そうとするが、扉の前で何かにぶつかってその足を止められる。
その相手は「いたっ」と声を出してので咄嗟に謝罪を述べて顔を上げる
『ご…ごごごごごめんなさい!』
??「お店の中で走るのは危ないわよォ?」
『失礼しました!』
??「あら…噂の姫ちゃんじゃない」
『鳴上…さん…』
鳴上「あらあらっ!アタシのこと知ってるなんて嬉しいわァ」
私がぶつかってしまったのは『Knights』の鳴上嵐さんで、私の顔を見るや否や目をキラキラさせて肩を掴まれた。
私は目を白黒させながらただ嬉しそうな鳴上さんの顔を見つめることしかできなかった。なんだこの周辺は…『Knights』御用達なのか…?くまさんだけでなく鳴上さんにまで会うなんて…
瀬名「ちょっとぉ!急に走り出すとかマジでガキ!」
『ヒェ!』
鳴上「あらやだ…泉ちゃんじゃない…、ご機嫌ナナメ?」
私を追いかけてきた泉さんに捕まる前に近くにいた鳴上さんの後ろに隠れる。ちょろっと顔を出すと、泉さんは「なんで隠れるの」と不機嫌そうな顔をしていた。
瀬名「なるくん、いいからソイツを渡して」
『やぁあっ!』
鳴上「ちょっとォ!乱暴はダメよ!」
私の腕を引っ張ろうとする泉さんから鳴上さんが守ってくれた。鳴上さんは間に入って「ここじゃ迷惑になるから」と私を庇ったままお店から出るように促した。泉さんも居心地が悪くなったのかそれに大人しく従った、鳴上さんは私の手を引いて街へと歩き出した。泉さんはその後を静かについてくる。
鳴上「姫ちゃんは、どうしてあの店にいたの?」
『泉さんに連れられて…』
鳴上「あら…泉ちゃんの用事ってあなたとのデートだったのねェ」
『デートではないです…』
鳴上「あらそう?それで、何であんなに悲しそうだったの?アタシにお話ししてくれない?」
『泉さん…プレゼントを選ぶって…』
鳴上「うんうん」
『女性に…贈り物をするって…お祝いだから…っ…うっ…』
悔しくなって…止まらない感情が溢れ出すように涙が溢れてきた。私は絆されやすいにも程がある、完全に絆されていた私にこの現実が苦しくて未練の呪いが私の心をどんどん黒く染めていく。
鳴上「それは…泉ちゃんが悪いわァ」
瀬名「そんなつもりじゃ…ただあんまり公にするまでは言わない方だいいと思ったのぉ!」
鳴上「そりゃあ…こんな勘違いだってするわァ」
瀬名「陽菜…あのねぇ…プレゼントっていうのは結婚祝いなの。それで旦那はあんまり興味ないから奥さんの方に合わせたものにしようって思ったのぉ」
『じゃあ結婚するんですね…』
鳴上「もうっ!言葉足らずもここまで来ると呆れるわァ!」
瀬名「はぁ!?なんで俺が怒られないといけないわけっ」
鳴上「姫ちゃん…違うのよォ。結婚するのは泉ちゃんじゃなくてウチのメンバーである凛月ちゃんなの」
『…へっ』
鳴上さんの言葉でモヤモヤしていた心が晴れていく。そして、今日出会ったくまさんの言葉を思い出す。たしかに彼は幸せそうな顔をして「結婚するんだよねぇ」と語っていたのを思い出す。
そうか、泉さんが送る相手を言えなかったのは相手が芸能人同士のビックカップルだったから一般人の私に容易には言えなかったんだ。
奥さんに合わせるのはそっちの方がくまさんが喜ぶってわかっていたから…私はなんて恥ずかしい勘違いをしてしまったんだろうか…恥ずかしいけど…一度流した涙はなかなか止まってくれない。
鳴上さんがそれを拭おうと手を出すがそれを横にいた彼が遮る。
瀬名「勘違いさせるような言い方してごめんね。泣かせるつもりはなかったのに…」
『私こそ…っ…ご…ごめんなさい…泉さん…勝手に勘違いして…っ』
瀬名「くまくんの結婚祝い…一緒に選んでくれる?」
『…っ、私でよければ…!』
泉さんは私の涙を拭ってから微笑んだ。私も気付けば涙が止まっていて、ざわついた心も穏やかになっていた。
鳴上「きゃあんっ!可愛いわねェ貴女!気に入っちゃったわァ♡」
瀬名「ちょっとぉ!なるくん、ソイツに近づかないでくれる⁉︎」
鳴上さんは私を抱きしめて泉さんから遠ざける。男性にハグされることなんて慣れていなくて私は固まってしまい、ただ離れていく泉さんを見ることしかできなかった。
鳴上「泉ちゃんは凛月ちゃんの結婚祝いを買いにきたのよねェ?じゃあ姫ちゃんも一緒にいきましょっ♪」
瀬名「はぁ⁉︎なんでなるくんが一緒になるわけぇ⁉︎」
『鳴上さんもお祝いを買いに来たんですか?』
鳴上「鳴上さんなんて他人行儀だわァ!お姉ちゃんって呼んでいいのよォ♪」
瀬名「なるくんがお姉ちゃんとかないない」
『じゃあ…なるさん…?』
鳴上「……うふふっ♪これからはそう呼んで頂戴っ♪」
鳴上さんは私の手を取って歩き出した。泉さんは大きなため息を吐いてまた私たちの後ろをついてくる、どうやらこのままお買い物に行くみたいだ…まぁ勘違いをしてしまって少し気まずいところだったし…なるさんは話しやすそうだし助かったかも…
第十四話
瀬名「なんで俺と同じ呼び方するかなぁ…」
→