第二章 私の未練の話
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7月1日ーー。
ついに来てしまったこの日にため息しか出てこなかった。
結局あれから泉さんに直接会う機会がなかったし、メッセージで何度も断ろうとした。けど、そんな勇気もなかったし泉さんが忙しそうにしてたし…。それで結果的に当日を迎えてしまった
おろしてたのワンピースにUVカットの入ったカーディガンを羽織ってアイスブルーのポシェットをかけて、お気に入りのミュールを履いて待ち合わせへと向かった。
いつも見送ってもらう駅…つまりに会社の最寄り駅に到着する。待ち合わせには少し早いので流石の泉さんもまだ来ていないはずだと見込んで、近くのCDショップに入る。
店頭にはショップ店員お薦めのアイドルやミュージシャンの紹介が並んでいた。その1番大きなコーナーを飾っているのは『Knights』だった…「好きな人には同じものを好きになってほしい」そんな泉さんの言葉が忘れられない。じゃあ貴方が過去に『Knights』を教えてくれたのも友人のことを話してくれたのも私にそれを好きになってほしいと思ってくれたからなんでしょうか…あの時口にできなかった思いが頭を巡る。一つのCDを手に取り、ジャケットに写る泉さんを…そして『Knights』の皆さんを眺める。
??「へぇ〜姫さんは『Knights』好きなんだぁ」
『ひぃあああっ!』
??「ちょっ!静かにしてよね!」
急に後ろから声をかけられ大声を出したら、その相手に口を押さえられる。驚きのまま後ろを振り向けばそこには黒いキャップを深くかぶった男性だった。マスクして顔はあまり見えないが、黒いシャツに白のインナーというシンプルな格好だった。
しかし、その目を見た瞬間誰だかわかってしまった。
『さ…さくま…りつ……』
凛月「おぉ〜俺の名前知ってるの?嬉しい〜」
『…日本で名前知らない人の方が珍しいと思います…』
凛月「そっか…ふふ、姫さんはお買い物?」
『その姫さんってなんですか?』
凛月「君の名前…?あだ名?」
『なぜ疑問符なのでしょう…』
凛月「姫さんって呼んじゃダメ?」
呼んじゃダメ?って首を傾げる朔間さん…あれこの人って確か泉さんと同い年の23歳のはずだよね。こんな女子高生みたいなポーズかましてくるなんて…、怖い…怖いよぉ泉さん…
『いいですよ…好きに呼んでください…』
凛月「わ〜い、ありがとぉ〜」
あんなキュルンとした目で見られたのは小動物以来だ…。なにも言い返すことはできなかった。23歳の男性がすることじゃない…これが現役アイドル…
凛月「それでぇ?姫さんはお買い物?」
『いえ…暇つぶし…でしょうか?』
凛月「ふ〜ん、俺はねぇデートの待ち合わせ…♪」
『へっ⁉︎で…デート…⁉︎』
凛月「そっ♪」
え…芸能人ってそんなオープンな感じ…?
あれもっとコソコソってするものだと思ったんだけど、泉さんだっていつも変装してるしカフェも人の少ないところや個室とか…いや泉さんは今ど〜でもよくて…
『相手は…とか聞いても…?』
凛月「あれ?知らない…?俺の彼女」
『ごめんなさい…知らないです…』
凛月「そっか♪そう言うところがいいだろうねぇ…天崎美羽子って知ってる?」
『そりゃ…国民的女優なので知ってますけど………え』
凛月「今度結婚するんだよねぇ」
『まっ!えっ!』
衝撃のあまり持っていたCDを落としかける。この人…なに⁉︎予測不可能すぎる…初めて会う人種すぎてついていけやしない。
これから泉さんに会うのに、その前に体力が尽きそうだ。っていうか眩暈がする。
『私朔間さんのこと苦手かもしれません』
凛月「本人の目の前で喧嘩売るっていい度胸だよね」
『朔間さんも…初対面相手にズケズケと…』
凛月「朔間さんってやめてくれない?好きじゃないんだよね、苗字」
『じゃあくまさん』
凛月「せっちゃんと同じだ…面白いねぇ姫さん」
くまさんはクスクスと笑って私の頭を撫でた。大人っぽいのか子供っぽいのかわからないし、テレビで見る感じとも違う…。
ふと、長話をしてしまったと腕時計を見ると待ち合わせの時間が迫っていた…
『うわっ!やばい遅れる!ごめんなさいくまさん!私待ち合わせがっ…!さよなら!』
凛月「うん♪またね〜」
またはできれば来てほしくないけど…でもまぁ悪い人ではなさそうだし、苦笑いして振られた手を振り返す。
私はそのままCDショップを後にして待ち合わせの駅に向かう。泉さんきっともう来てる…きっと怒るんだろうなと思って足を早める。『Knights』の人と直接会ったのはあの会議以来だったけど、見た目に違わず個性的な人だった。唯一関わりのあるれおさんだって似たような趣味があったから比較的馴染みやすかったけど…初めて喋ったくまさんはまるで別の生き物のように思った。けど、これからデートなんだよねと笑った彼はすごく幸せそうで綺麗だと思った。れおさんも紡さんもお互いの話をする時はあんな顔をしていた気がする。
そんなことを考えていたら待ち合わせ場所に到着して泉さんがいないかキョロキョロとあたりを見渡す。
瀬名「おそぉい!」
『きゃあっ!』
瀬名「俺を待たせるとか何様ぁ⁉︎」
『時間通りじゃないですか!泉さんが早いだけ!』
待ち合わせ場所から少し離れたところにいた泉さんは私を見つけて背後から声をかけた。急に声をかけられてギギギと首を後ろに向けるとプンスカと怒った様子の泉さんがいた。綺麗な銀髪は少し大きめのキャップに隠れていてネイビーのマスクがそのご尊顔を遮っていた。グレーのシャツに濃いめのデニムを履いている彼はオーラが全然隠しきれていないと…思う。
瀬名「エスコートされるお姫様がいないとダメでしょ…」
『お姫様って柄じゃないです』
瀬名「…知ってる」
『もう』
泉さんはクスッと笑って私の手を取って歩き出した。それはまるでエスコートする騎士のように思えたけど、やっぱりその手の先にいる私はお姫様なんて柄ではないと思ってしまった。
やっぱり私は貴方に相応しくない…
第十二話
それでも『そういう接し方』をしてくれる貴方
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