第二章 私の未練の話
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あのあと泉さんと晩御飯を食べて、洗い終わった自分の服を着て駅まで送ってもらった。
夜道だから家まで送ると言われたけど流石にそれは断った。
瀬名「俺の誘いを断るとか…贅沢ものだよねぇ」
『違います迷惑なだけです』
瀬名「チョ〜うざぁい」
『こっちのセリフです』
瀬名「あの時は可愛かったのになぁ〜泉さん泉さんって」
『言ってません!もうっ!それ以上言ったら連絡先消しますよ!』
駅までの帰り道、私が頑なに拒否するのをぐちぐちと歩きながら文句言う泉さんに言い返すと、流石に嫌だったのか口を閉じる。
連絡先を消されるのがそんなに嫌なのか、珍しくショボンとしている。
『嘘ですよ。借りは返します!律儀なんで私!』
瀬名「律儀な人は自分で言わないけど…」
『デート?楽しみにしてますよっ泉さん!』
駅について私は改札へと向かう。後ろで驚いたようにこっちを見ている泉さんを笑えば、彼はいつも通りの笑顔になって「わかってる、気をつけて帰りなよ」と小さく手を振ってくれた。私もそれに応えて、改札を越える。
振り返って見ると泉さんの姿はなくなっていた。そうそれでいい、そこらへんにいるカップルみたいに抱きしめて別れを惜しんだり、公共の場でキスをしたり、そんなことをする関係ではない。
私も進行方向に向き直り、電車が来るのを待つ。携帯を取り出して、泉さんにお礼のメッセージを送り、家にいる母に連絡を入れる。
ちょうどきた電車に乗り込み。外を眺めていた…
勘違いしていいのだろうか、あれから何度諦めようと努力したことか…自分の立場を考え、相手の立場を考え…何度貴方に相応しくないと自分を戒めたことか…。
2年前のあの時からもう二度と近づくことはないと思っていた。というか会うことなんてないと思っていたのにひょんなことをきっかけでまた昔のように会えるようになってしまった。
また…泉さんって呼べるようになった…。それを嬉しく思う反面、彼の近くでその名前を呼びたい人がこの世界にどれだけいることだろうかと後ろめたい気持ちになってしまった…。
*瀬名said
陽菜が入っていった改札を背にして俺はまた家路についた。離れた距離が近づいた気がする。俺は柄にもなく浮かれてた、彼女が急な雨でとはいえ自分の家に来たこと。それを彼女が受け入れたこと。一緒にご飯を食べたこと、名前を呼んでくれたこと…全てが望んでいたことだけどどこかもう無理だと思っていたこと…それが叶ったから浮かれても仕方ないよねぇ…
迷いなく進む足が一定のリズムを刻む足がどこかいつもよりもリズミカルに感じる。それはまるで俺のテンションを表しているように感じた。
それに極め付けは恩着せがましく強請ってデートの約束まで取り付けた。どこへ行こうかな…なに着ようかな…
あの子はどんな格好をしてくるだろう。今はどんなことが好きなんだろう、昔みたいに絵画は好きなままだろうか。
俺の心はあの頃に戻ったように彼女のことでいっぱいでそれと同時に幸せに包まれていた。
不意になった携帯に浮かれた気持ちのまま、携帯を開けば彼女からメッセージが届いていた。
『
今日は晩御飯ご馳走様でした
7/1予定空けておきますね
あと今度から職場には来ないでください!
約束ですよ!
』
なんて必要な文章だけのメッセージにも浮かれているのがわかってしまう。
勘違いしてもいいのだろうか、今日起きた全てを自意識過剰で片付けることは俺にはできない。彼女は確かに絆されやすいタイプだ、それは前から知っていたことだしそれを利用してやろうと思っていた我ながらなんて最低で愚かなことだろう。けど、そのくらい必死になってでも俺は彼女が欲しかった。この2年諦められなかったことがその証明だ。
何度も忘れようとした、何度もなかったことにできればこんな苦しい思いを抱え続ける必要は無いと思ったことか…。それでも忘れられなかった。彼女の笑った顔も泣いた顔も、口答えする生意気さも甘えるところも…暗闇で見た恥じらう顔も…俺の…俺だけの宝物…
神様はそんな俺を見捨てなかった。救いようのない未練に埋められた俺をまるで蜘蛛の糸を垂らすかのように、彼女と再会するきっかけをくれた。
救い出してくれた。俺はその糸を切れないように丁寧に辿ってきたから…だから今日のことが起こったんだ。神様は俺の味方ってこと…
瀬名「だから、絶対諦めてあげないからねぇ…」
デートの日は絶対満足いくものにしてみせる。彼女の好きな事、好きな物は知っている。彼女を喜ばせるためのデートプランを脳内で作り上げていく。すると、それを遮るように携帯の着信音が鳴り響く。携帯画面を確認して着信をとる
瀬名「もしもし、何?俺の楽しい気持ちを遮るほどの大事な用じゃないなら切るけど」
鳴上「あら、ごきげんナナメねェ…邪魔しちゃったかしらァ?」
瀬名「うん、チョ〜邪魔ぁ」
鳴上「そう言わずに聞いてちょ〜だいっ、7月の1日なんだけど凛月ちゃんの結婚祝いを買いに行こうと思うんだけど泉ちゃん早々に帰っちゃったでしょ?一緒に行ってくれないかなぁ〜って予定を聞かないとと思ったのォ」
瀬名「1日…ごめん、悪いけどその日は予定があるからなるくんが選んでくれていいから俺もお金は出すし」
鳴上「あら…先約があったのねェ…別日にしましょうか?」
瀬名「いや、予定も近いしいいよ。俺は俺で何か買うし」
鳴上「みんなで買うのに自分でも買うの?律儀ねェ」
瀬名「ん〜、まぁね。」
って言うより悪知恵が働いているだけなんだけどねぇ、1日は陽菜とデートだから…その時に…
鳴上「それで?なんでご機嫌だったのかしら、泉ちゃんがご機嫌って珍しいじゃない?」
瀬名「ん〜、まぁ春がきたってとこかなぁ」
鳴上「えっ!なにそれ詳しく!」
瀬名「はい、じゃあ俺はそろそろ寝るからぁ〜じゃあねぇ〜」
会話中についた我が家で寝る準備をするために話し続けようとするなるくんの声を遮って通話を切る。携帯を机に置いて寝る準備を始める、片付けは終わっているし歯を磨いてスキンケアだけしたら寝よう…。そう決めて、動き始める。
今日はいい夢が見れそう…
第十話
おやすみ、いい夢を
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