第二章 私の未練の話
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*陽菜said
彼が出て行った非常階段の扉に背中を預けて
少し乱暴に撫でられた頭を押さえ込んでズルズルとしゃがみ込む。誰に言われなくてもわかるきっと私の顔は真っ赤になっていることだろう…。顔が燃えるように暑い…コンビニで買ったサイダーを熱くなった頬にあてて「ふぅ」と息を吐く。
わかってた。彼がそんな大人しく「はいそうですか、バイバイ」なんて言うタイプじゃないって、恋人はどうか知らないけど自分の懐に入れた人間にはとことん甘い人だって知ってる。そして、他人に興味ないフリをするけど本当は世話焼きで人をちゃんと愛せる人だとわかってる。わかってるからこそ…彼に相応しい人と付き合って…幸せになってほしかったのに…
『どうして…私なんか…』
数分後、暑さがひいた体を持ち上げて非常階段の扉を開ける。トボトボ歩きながらエレベーターホールを目指す。上をいくボタンを押してエレベーターが来るのを待っている間も頭の中は彼との会話が頭を巡る…
諦めない、見つけた…彼は明確に『好き』とは言わなかったけどその行動や言動の節々にそう言っている気がしてならなかった。それは自意識過剰とも言えることだろうか…。私の勘違いだと思いたい、私の未練が見せた幻覚だと思いたい…
真っ暗になっている自分のフロアについて煌々と光っている自分のデスクにつく。消えたモニターをつけて資料の続きを作成しながらコンビニで購入したお菓子を摘む。ポリポリと寂しい音がフロアに鳴り響く。その音をBGMに作業を進めるがやはり脳内に巡るのは先程までの出来事でやはり集中力に欠けると諦めてお菓子に集中することにした。
デスクチェアを先輩達がいないことをいいことにクルクル回りながらお菓子をボリボリとかじる。
『もう流石に来ないよね…』
いくら瀬名さんでももういい大人だし、自分の立場はわかっていることだろう…もう職場には来ないことを祈ることしかできない。あっても気まずいし…勘違いしてしまう。それは一番恐ろしくて悲しいことだとわかるから、思わせぶりはやめてほしい…
『やめよ…帰ろう…明日早出して終わらせよう。うん、寝て忘れよう』
決意すれば、即行動だ。作りかけのデータを保存し、パソコンをシャットダウンする。持ち帰りの書類をカバンに入れて残ったお菓子をデスクに忍ばせて身支度を整える。
今日のことはなかったことにしよう。私は誰にも会っていないし、なんだったら残業もしていないし、間食も取ってない。私は今から定時帰宅します。
『今から帰ります…、と』
家にいる母に連絡をとって帰路につく。会社から歩いて電車に乗って最寄りから家までまた歩く。今日のご飯はなんだろう…なんて考えながら家の玄関を開けるとお姉ちゃんがドシドシと怪獣のような足音を鳴らして私の目の前にやってくる。
姉「ねぇ!『Knights』がでる番組録画しておいてって言ったでしょ⁉︎なんでしてないの」
『えっ…あれママに言ってたんじゃないの?』
姉「ママが機械音痴って知ってるでしょ⁉︎」
『そんなテレビくらい…』
姉の結菜 は都内のOLで先日出張に行く前、私に『Knights』が出る番組予約をお願いしていたそうだが、うっかりうっかり忘れてしまっていた…うん、聞いてなくはない。聞いた記憶はあった。
姉「あんたのせいで司くんの活躍を見逃した!責任とってよね!」
『責任の前にご飯食べていい?』
姉「はぁ??何こいつ生意気!」
『生意気だよ〜ご飯ご飯…』
怒る姉を無視してリビングに入って母に「ただいま」と声をかける。もう出来ている晩御飯を食べるために荷物を自分の部屋に置いて部屋着に着替えてリビングに戻る。
姉「あんたはわかってない!『Knights』の活躍は一分一秒とて見逃せないの!」
『そんな大袈裟な…見ない日はないんだから他の番組でいいじゃん』
姉「はぁ⁉︎今日の司くんと明日の司くんは違うの!わかる⁉︎」
『…わからない』
姉「はぁ⁉︎あんたは何が好きなわけ⁉︎」
『絵画』
姉「ゴッホのひまわりだって今日と明日じゃ違う魅力があるでしょ⁉︎」
『私は昔から今まで変わらない魅力があるから絵画が好き』
姉「こいつ…!」
屁理屈を返せば、姉は怒ったように私を睨む。けどそれを無視してお味噌汁を啜ってお米を食べる…。「はぁ」と息を吐いて、改めて怒る姉に目を向ける。
『録画してなかったのは謝るよ。ごめんなさい…、けどそんなに大事なら前日に再確認してほしい。忘れっぽいのはお姉ちゃんと一緒なんだから』
姉「……今度チケット戦争の時は協力してよね」
『うん、わかった』
素直に謝れば、姉も納得したよう顔を逸らす。姉は私が留学から帰ってからいつも『Knights』を勧めてくる。それが悪いとは言わないが瀬名さんと別れて忘れようとしてるのに…と思ってしまう自分もいる。しかし姉はそんなこと知らないのだから止めようもなく、されるがままだった。今日はあんなことがあったものだから気が立ってしまって姉にあたってしまった事実を反省する。
チケット戦争に協力するくらいお安い御用だ。そしたら姉も一先ずこの話からは手を引いてくれるのだから…
『ねぇお姉ちゃん』
姉「何?」
『友達がね、元カレと再会しちゃって「俺は諦めない」って言い逃げされたらしいんだけど。どう思う?』
姉「え、キモい…」
『キモいの…?』
姉「だって、友達は好きじゃなくなったから別れたんでしょ?なのに相手が未練たらたらって最悪でしょ」
『…そっか、やっぱそうだよね〜』
私は姉の答えに、苦笑いで返す。そのキモい元カレ…あなたの好きな『Knights』の人ですよ〜なんて口が裂けても言えない…。でも、やっぱり普通ではないよね…。瀬名さんは未練があったのだろうか、私自身はそれを自分に都合の良い考えだなんて思ってしまうのは私だけで、第三者から見るとやはり彼に未練があるのではないかと判断するだろう。
『ごめん、明日早いから…今日はもう寝るね』
姉「…え、あぁ…そう」
私は姉を残してリビングを後にした。もう考えることをやめよう…。そう、いつも思うようにしていたじゃないか…
これはやっぱり私の未練が見せている幻覚だ。
第七話
これは全て私の勘違い
→
彼が出て行った非常階段の扉に背中を預けて
少し乱暴に撫でられた頭を押さえ込んでズルズルとしゃがみ込む。誰に言われなくてもわかるきっと私の顔は真っ赤になっていることだろう…。顔が燃えるように暑い…コンビニで買ったサイダーを熱くなった頬にあてて「ふぅ」と息を吐く。
わかってた。彼がそんな大人しく「はいそうですか、バイバイ」なんて言うタイプじゃないって、恋人はどうか知らないけど自分の懐に入れた人間にはとことん甘い人だって知ってる。そして、他人に興味ないフリをするけど本当は世話焼きで人をちゃんと愛せる人だとわかってる。わかってるからこそ…彼に相応しい人と付き合って…幸せになってほしかったのに…
『どうして…私なんか…』
数分後、暑さがひいた体を持ち上げて非常階段の扉を開ける。トボトボ歩きながらエレベーターホールを目指す。上をいくボタンを押してエレベーターが来るのを待っている間も頭の中は彼との会話が頭を巡る…
諦めない、見つけた…彼は明確に『好き』とは言わなかったけどその行動や言動の節々にそう言っている気がしてならなかった。それは自意識過剰とも言えることだろうか…。私の勘違いだと思いたい、私の未練が見せた幻覚だと思いたい…
真っ暗になっている自分のフロアについて煌々と光っている自分のデスクにつく。消えたモニターをつけて資料の続きを作成しながらコンビニで購入したお菓子を摘む。ポリポリと寂しい音がフロアに鳴り響く。その音をBGMに作業を進めるがやはり脳内に巡るのは先程までの出来事でやはり集中力に欠けると諦めてお菓子に集中することにした。
デスクチェアを先輩達がいないことをいいことにクルクル回りながらお菓子をボリボリとかじる。
『もう流石に来ないよね…』
いくら瀬名さんでももういい大人だし、自分の立場はわかっていることだろう…もう職場には来ないことを祈ることしかできない。あっても気まずいし…勘違いしてしまう。それは一番恐ろしくて悲しいことだとわかるから、思わせぶりはやめてほしい…
『やめよ…帰ろう…明日早出して終わらせよう。うん、寝て忘れよう』
決意すれば、即行動だ。作りかけのデータを保存し、パソコンをシャットダウンする。持ち帰りの書類をカバンに入れて残ったお菓子をデスクに忍ばせて身支度を整える。
今日のことはなかったことにしよう。私は誰にも会っていないし、なんだったら残業もしていないし、間食も取ってない。私は今から定時帰宅します。
『今から帰ります…、と』
家にいる母に連絡をとって帰路につく。会社から歩いて電車に乗って最寄りから家までまた歩く。今日のご飯はなんだろう…なんて考えながら家の玄関を開けるとお姉ちゃんがドシドシと怪獣のような足音を鳴らして私の目の前にやってくる。
姉「ねぇ!『Knights』がでる番組録画しておいてって言ったでしょ⁉︎なんでしてないの」
『えっ…あれママに言ってたんじゃないの?』
姉「ママが機械音痴って知ってるでしょ⁉︎」
『そんなテレビくらい…』
姉の
姉「あんたのせいで司くんの活躍を見逃した!責任とってよね!」
『責任の前にご飯食べていい?』
姉「はぁ??何こいつ生意気!」
『生意気だよ〜ご飯ご飯…』
怒る姉を無視してリビングに入って母に「ただいま」と声をかける。もう出来ている晩御飯を食べるために荷物を自分の部屋に置いて部屋着に着替えてリビングに戻る。
姉「あんたはわかってない!『Knights』の活躍は一分一秒とて見逃せないの!」
『そんな大袈裟な…見ない日はないんだから他の番組でいいじゃん』
姉「はぁ⁉︎今日の司くんと明日の司くんは違うの!わかる⁉︎」
『…わからない』
姉「はぁ⁉︎あんたは何が好きなわけ⁉︎」
『絵画』
姉「ゴッホのひまわりだって今日と明日じゃ違う魅力があるでしょ⁉︎」
『私は昔から今まで変わらない魅力があるから絵画が好き』
姉「こいつ…!」
屁理屈を返せば、姉は怒ったように私を睨む。けどそれを無視してお味噌汁を啜ってお米を食べる…。「はぁ」と息を吐いて、改めて怒る姉に目を向ける。
『録画してなかったのは謝るよ。ごめんなさい…、けどそんなに大事なら前日に再確認してほしい。忘れっぽいのはお姉ちゃんと一緒なんだから』
姉「……今度チケット戦争の時は協力してよね」
『うん、わかった』
素直に謝れば、姉も納得したよう顔を逸らす。姉は私が留学から帰ってからいつも『Knights』を勧めてくる。それが悪いとは言わないが瀬名さんと別れて忘れようとしてるのに…と思ってしまう自分もいる。しかし姉はそんなこと知らないのだから止めようもなく、されるがままだった。今日はあんなことがあったものだから気が立ってしまって姉にあたってしまった事実を反省する。
チケット戦争に協力するくらいお安い御用だ。そしたら姉も一先ずこの話からは手を引いてくれるのだから…
『ねぇお姉ちゃん』
姉「何?」
『友達がね、元カレと再会しちゃって「俺は諦めない」って言い逃げされたらしいんだけど。どう思う?』
姉「え、キモい…」
『キモいの…?』
姉「だって、友達は好きじゃなくなったから別れたんでしょ?なのに相手が未練たらたらって最悪でしょ」
『…そっか、やっぱそうだよね〜』
私は姉の答えに、苦笑いで返す。そのキモい元カレ…あなたの好きな『Knights』の人ですよ〜なんて口が裂けても言えない…。でも、やっぱり普通ではないよね…。瀬名さんは未練があったのだろうか、私自身はそれを自分に都合の良い考えだなんて思ってしまうのは私だけで、第三者から見るとやはり彼に未練があるのではないかと判断するだろう。
『ごめん、明日早いから…今日はもう寝るね』
姉「…え、あぁ…そう」
私は姉を残してリビングを後にした。もう考えることをやめよう…。そう、いつも思うようにしていたじゃないか…
これはやっぱり私の未練が見せている幻覚だ。
第七話
これは全て私の勘違い
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