第一章 俺の恋の話
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あれから私は日本の専門学校を受けるために必死で勉強した。
もちろん、こっちの学校の課題や勉強にも手を抜くことはなく…アルバイトも無理のない範囲で続けて来た。
泉さんとも仲良くし続けているしたまにデートをしたり…泉さんが日本に帰っている間は鍵を借りて部屋の掃除をしたり…帰ってくる日はお泊まりして…まぁ仲良くさせていただいているわけで…
そんな生活を続けながら行くつくかの季節イベントを越した頃には…泉さんは出会った頃みたいに外で遊べるような人ではなくなっていた。
大きな通りの一番目立つ看板を大手ブランドのバレンタインコスメをモデルの女性に塗る色男が綺麗なアイスブルーを流し目でこちらに向けている。
『本当に泉さんだ……』
「おぉ〜!すごいなぁ!」
ひとりごとのようにポツリと呟いたつもりが元気な声が帰って来て驚きのあまりその声がする方に顔を向けると、帽子をかぶったれおさんが目をキラキラと輝かせて泉さんのポスターを見ていた目をこっちに向ける。
『れお、さん…?あれ…?今『Knights』はバレンタインツアーだって泉さんが…』
月永「そうだぞ〜!ツアー中だけど霊感(インスピレーション)のためにポスター見に来た!」
『言ってくれれば写真送ったのに…』
なんて言えばれおさんは「その発想はなかった!」とでも言いたげに目を見開く。それがなんとなく面白くて携帯を取り出して「写真撮ってあげましょうか?」というと「うん!」と笑った。
れおさんは帽子を撮ってポスターの前で手を大きく広げて笑うので「行きますよー」と声をかけて携帯のカメラでその姿をおさめる。
月永「わはは☆ありがとなっ!セナに見せてやろ〜っと」
『いい写真ですよね』
そのポスターには「新しい愛の伝え方」とバレンタインらしいキャッチフレーズが書かれていてきっと自分の好きな色や彼女に似合う色を買って彼が彼女に「君は僕の」なんて甘くささやくことを想定したことから来たキャッチフレーズなんだろう。
いいなぁ…このモデルさんは泉さんにこんな丁寧にグロスを塗ってもらえて…顎を持ち上げられてこんな近くに…
月永「お前はそれ以上のことしてるのに嫉妬するんだな」
『えぇ⁉︎ど…読心術…?できたんですかれおさん…』
月永「いや、しっかり言葉になってたぞ」
『うっ…うそ…』
月永「…まっ!おれには関係ないけど!」
『れおさんがそういうタイプの人で助かりました。』
月永「なぁ…もうすぐ春だろ?セナはそろそろ日本に帰る目処を立ててるけどお前は本当に一緒に帰らないのか?」
れおさんは、少し悲しそうな顔をして私を見る。それでも私の答えは変わらない。どのタイミングで泉さんが日本へ帰っても私は私のタイミングで日本へ帰る。自分のために…
『れおさん、私は私のために日本に帰るの。泉さんのためや親のため…そういうことじゃないの…。』
月永「あぁ…そうだな。悪い!忘れてくれ!」
『私も…いつか…』
月永「…ん?」
『なんでもない!泉さんが日本に帰ったら泉さんのことよろしくお願いします!』
月永「あぁ!任せろ!」
れおさんは勢いよく頷いてから高価そうな腕時計を見ると肩をビクリと揺らして「おれ行く時間だ!写真ありがとうな!」と手を振って去って行った。きっと日本に戻る時間だったのだろう…忙しない彼のスケジュールを心配しつつも手を振り返してその後ろ姿を見送った。
私はもう一度泉さんの写るポスターを見てからアルバイト先へと足を進めた。泉さんはもうすぐ日本へ帰る…この春『かさくん』が卒業して泉さんの所属する『Knights』が完全体になるんだと嬉しそうに語っていた泉さんを忘れられなかった。
でも、『Knights』が本格的に活動が始まれば泉さんは今以上に忙しくなって、私なんかにかまっている暇はない。…というより、瀬名泉という存在に彼女というものがいるのも結局よくない…
…だから
瀬名「…じゃあ、あんたも帰るときは連絡するんだよぉ?」
『泉さん忙しいから迷惑かかりますって』
瀬名「俺が迎えに行きたいって言ってんの!そうじゃなきゃ一緒に帰れば良かったんだよ」
『何度も話したじゃないですか。秋に帰るって』
あれからまた一ヶ月ほどが経過して、泉さんが日本に帰る日がやって来た。きっと明日には彼の仲間が笑顔で日本に帰って来た彼を迎えてくれることだろう。
私は逆に笑顔でお見送りするのが仕事だったはずなのに、彼はギリギリまでそれを渋っている。
『そんなウジウジ言ってるとコレあげませんよ?』
瀬名「なにそれ…」
『…プレゼントです』
コレは彼の門出を祝うと同時に彼に現実を突きつけることになるかもしれない。けど、そんなことは露知らず彼は目をキラキラさせつつそれを見せないように逸らす。
瀬名「そ…そういうのがあるならさっさと渡しなよねぇ…まぁあんたが受け取ってほしいって言うなら?受け取ってあげるけど」
『じゃあ受け取ってください。ただし、受け取ったら大人しくゲートに入って飛行機に乗ってください。』
瀬名「なにそれ…チョ〜うざぁい」
『じゃああげませっ……むぎゅっ!』
瀬名「じゃあそれ受け取って大人しく行ってあげるから…少し充電…」
そう言って泉さんは私をギュッと抱きしめる。私もそれに応えるように彼の背中に腕を回す。お互い充電するように別れを惜しむように…この温もりを忘れないように…
少しの時間を経て、私たちはゆっくりと離れる。約束通りプレゼントの入った紙袋を渡して泉さんからまた一歩離れる。
『泉さん…今までありがとうございました』
瀬名「なにそれ…別れの挨拶?」
『日本に帰っても頑張ってください』
瀬名「そりゃあ…頑張るけどさぁ…」
『じゃあ約束してください。日本でも泉さんは…『瀬名泉』の為にこれからも頑張るって』
瀬名「…俺は俺のために頑張るよ…あんたに誓って」
泉さんはその言葉を最後に空港のゲートに足を進めていった。約束どおりそこからは振り返らずに前へと進んでいった。そう…それでいいんです。これからもずっと前をまっすぐ見据えて…綺麗に歩く貴方のままでいてくださいね。
第18話
……瀬名さん
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