第一章 俺の恋の話
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れおさんとお話しした翌日、私は泉さんの家にお邪魔してコーヒーを入れていた。
実はあのあと大人しく家に帰宅し携帯を開くと泉さんから大量の着信とメッセージの通知が来ていて驚きのあまり怒りや気まずさも忘れて折り返しの連絡をしてしまった。電話に出た泉さんは感情の読めない声で「明日学校終わったら迎えに行くから」と端的に言われて通話を切られた。
そして、泉さんは宣言通り放課後の校門で待ちかまえていて、私を見つけるなり腕を掴んで歩き始めて、自らの家へと足を進めた。
家に着くなり、彼に「コーヒー入れて」とキッチンに押し込まれて今に至る。
お湯を入れて浮かび上がった豆の粉がフィルターを通ってポツポツと液体と一緒に底へ落ちて行くのをぼーっと見つめる。泉さんはリビングでソファーに座って少し難しい顔をしていた。
私はそんな泉さんから目を離し、ただコーヒーの水滴が落ちて行くのを見つめ続けた。
コーヒーを入れ終わって、私もリビングに迎えば先ほどまで難しい顔をしていた泉さんがふうっと息を吐いて私をみた。私はそんな泉さんをジッと見つめつつ、彼の前にゆっくりとコーヒーを置いた。
「『昨日はごめん』」
瀬名「…え?」
『そう言うと思ってました。』
瀬名「……」
『気にしないでください。私こそ八つ当たりしてしまってごめんなさい』
瀬名「それはいいけど…でも、俺の考えを陽菜に押し付けようとした。そこは謝らせて、どうなっても陽菜の人生だよ。自分が正しい、これでいいと思える人生を歩んでいいから……だからさ」
『はい』
瀬名「別れようなんて言わないで…」
泉さんはそう言うと不安そうな顔をして足元に座っていた私の腕をギュッと握った。
泉さんは私の生き方、人生を否定したことで私に嫌われて私と別れることを恐れていたようで言葉からも表情からも不安な気持ちを受け取って、私の心がゾクゾクと震える。こんな完璧な人に愛されていることを実感すると、自らの身の丈にあっているか不安だが、それ以上に嬉しい。私は握られた手に自らの手を重ねてできるだけ安心させるように笑う。
『別れようなんて思いません。それに、泉さんは何も間違ってない。私が子供で…世間知らずだった。それだけなんです。』
瀬名「そんな風には思ったことないよ…」
『でも、気づかせてくれました。このままじゃダメだって…
私甘えようとしてました。目標も夢も何もないまま、甘えさせてくれる両親の優しさを甘受してみんなと同じような歩幅で歩こうとして…
普通に大学へ行って社会人になって…それで泉さんがそばにいてくれればそれでいい。なんて思ってました。
…そうじゃないんですよね。泉さんが一緒にいてくれるのは嬉しいけど、それでも私の人生だから。誰かに依存して生きるのは違う。みんなと同じように同じ色をしてればそれでいい。それはつまらない人生だと気付きました。
私…夢を見つけました。泉さんのおかげで』
瀬名「俺の…おかげ…?」
『はい、泉さんのおかげです。ありがとうございます』
そう語ると泉さんは綺麗なアイスブルーをまん丸にしてこっちをみている。その顔がなんだか可愛くて泉さんの首に腕をかけて顔を近づける。目線が合うようにソファーに座った泉さんの膝の上に向かい合うように座る。
『夢を見つけたので、私進学します。今度は誰かがそうだからとかみんなが行くからとか…親に行けと言われてたからとかじゃありません。私の意思で私のやりたいことをするために学校へ行きます。』
瀬名「そう…応援するよ。あんたのやりたいこと」
『はい!だから…泉さんとは一緒に帰れません。泉さんは泉さんの目標を達成したら泉さんのために日本に帰ってください』
瀬名「…うん、わかった」
泉さんは私の言葉に頷いて優しく頭を撫でてから私の唇にその柔い唇を重ねた。あぁ…理解してもらってよかった。この人に認めてもらえれたという事実だけで、私はきっとこれから先も頑張れると思った。
『泉さん…私…頑張ります。
夢を追ってここに来た泉さんの姿を今も思い出します。初めてお店に来た時…綺麗に歩く人だと思ってました。綺麗に笑って、綺麗に話す方だと思っていました…。
私もそう思ってもらえるように頑張ります』
瀬名「…そう、俺に負けないくらい綺麗になりなよぉ」
『…頑張ります』
瀬名「まぁ?あんたは俺が認めた女なんだから十分自信持っていいけどねぇ…」
泉さんは少し聞きにくい声で呟いたのが案外詳細に聞こえてクスリと笑ってしまう。さらにそれに気づいた泉さんが「なぁに?」と少し怒ったように言って私を少し強い力で抱きしめる。
瀬名「いつか、向こうに帰ったら『Knights』のライブにもおいでよ。すっごい素敵な時間をあげるから」
『…チケット当たったら行きます』
瀬名「身内チケットに決まってるでしょぉ?」
『ダメですよ!向こうでは人気アイドルなんですから!高いものはいただけません!』
瀬名「俺のプレゼントがもらえないっていうのぉ⁉︎」
『えぇぇ!なんでそうなるんですかっ!』
瀬名「大人しくもらっておきなよぉ…一応さぁ…
あんたは俺の彼女なんだから」
第17話
こんなに素敵な人…私には勿体無いと思います
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