第一章 俺の恋の話
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月永「だからって…おれのとこに来て奥さんに連絡してくださいっておまえ何様?」
『お願いです…紡さんと連絡させてくださいいいい!え〜ん!』
私はあのあと泉さんから離れて足が進むままにれおさんが泊まっていると聞いていたホテルに駆け込んだ。
部屋のベルを鳴らせばれおさんは驚いた顔をしつつも中に入れてくれた。私は出されたココアを飲みながら、このまとまらない頭と自分の考えを正論で論破した泉さんに八つ当たりしてしまったことを…どうにか落ち着かせてほしくてれおさん経由で奥さんである紡さんに連絡をとってほしいと懇願した。
れおさんは呆れた顔でやたらでかいソファーに座ってブラックコーヒーをゴクリと飲み込む。
月永「おまえさぁ…やたら紡に懐いているよな。なんで?」
『紡さん、優しい…私…大好き…』
月永「旦那であるおれが仕事でこんなに真面目に嫁との時間を割いてまで働いてるのになんでおまえが連絡取るの?」
『……意地悪…いつでも紡さんに会えるせに』
月永「…むこう何時だと思ってるんだ」
『今夜の8時だから…朝の6時…?』
月永「違う、朝の4時だ」
驚いた。すごい人だとは思っていたけどそう言う常識的な点では頭のネジが飛んだ人だととても…とても失礼ながら思っていたから、私の回答をすぐ訂正されるとは思ってなかったので私は目をパチクリしてれおさんを見る。
月永「画家ちゃん、留学するくらいだからそこそこ頭いいと思ってたんだけど意外とバカだな」
『…勉強はできます。数学以外は平均ちょい上です』
月永「ふ〜ん、まぁどうでもいいけど☆」
『…今初めてれおさんを殴りたくなりました』
月永「殴っていいけど怒られるのはおまえだからな」
『……やめときます』
月永「それで話を戻すけど、向こうは早朝だ。だから、紡に連絡はしないしさせない。」
『はい』
月永「それに、どうして遠くにいる紡より先に近くにいるおれに相談しようと思わないのか疑問だ」
そう言ってれおさんは膝に頬づえをついて私を睨んだ。それには怒りというよりは呆れという感情を孕んでいた。
『だってれおさんって変な人…』
月永「おれ、画家ちゃんとそこそこ付き合い長くなってきた認識だけど、そんな風に思われてたのは誠に遺憾だ。おまえの前では意外といい子ぶってたのに」
『いい子ぶってたって…』
月永「おまえは『Knights』の末っ子と同い年だし、妹と歳が近いからさぁ…そこそこ大人ぶってたつもりだぞ?」
『出会いがあれだったので…』
月永「原点からか!」
そんな風に返したけれど、確かにれおさんの努力はわかる。出会った時は子供のようにはしゃぎながら作曲をしていたけど、親交を深めていくにつれ、彼の才能や実力。その実績は輝かしいものだったし、それに見合うほど仕事している彼は大人っぽくてかっこよかった。
でも、出会った時の彼や奥さんといる彼は仕事の時とは打って変わって子供っぽくて太陽のような人だった。
月永「とにかく!おれだって年上の男だ!人生の先輩だ!後輩が困ってるなら助けてやるし助言してやる!」
『……』
月永「安心しろ、セナには言わないでおいてやるから」
『え…なんで』
月永「どうせアイツになんか言われて逃げてきたんだろ?画家ちゃんはおれと似たとこあるからなぁ〜。セナに正論とか言われると言い返すか逃げるかだろ?」
確かに…れおさんのいう通り泉さんに正論言われてしまうと言い返して最終的に論破されて逃げてしまう。どうも立ち向かうことが苦手な私には言い逃げという選択肢をとりやすい。それはどうやられおさんも同じみたいでわかるわかると頷いたあとまたこちらに視線を向ける。
月永「それで紡を頼っちゃうんだよなぁ〜アイツ、セナのことよく理解してるし。おれが言葉にできないことをすぐ言葉にしちゃうから」
そう、私が泉さんに論破されても逆に紡さんが泉さんを論破する。素晴らしい語彙力と説得力を持った私の最高の味方。それが紡さんだった。付き合う前からも付き合ってからもお姉さんのようなその存在が私を何からでも守ってくれた。
それはれおさんもみたいで共感してくれるのが少し嬉しかった。
月永「おれは、アイツみたいに助けてやれないけど話くらいなら聞いてやるぞ?せっかくだからお兄ちゃんぶらせてよ!最近ルカたんにも会えてないしお兄ちゃんの感覚を取り戻させて!」
『…れおさんって…やっぱり変な人』
月永「似た者同士だろ」
『そうですね…じゃあ話を聞いてくれますか?』
月永「あぁ…話してみろよ」
そう言って向かい合わせに座った二人は温かいものを飲みながら先ほどあった話を語った。れおさんは意外と真剣に聞いてくれて、時折うなづいてくれた。
話終わる頃には、笑って頭を撫でてくれた。
月永「おまえもお年頃ってことだろ〜?進路で悩むのは悪いことじゃないぞ!」
『お年頃という表現が正しいのかはわかりません…でも、泉さんの言いたいこともわかるんです。…でも大学に行くのも私なりの答えだったから…』
月永「絵を描くのは?好きだろ?」
『好きです…でも絵画は描くのより見るのが好きなんです…。だから、将来絵を描いて食っていきたいみたいな願望は全然ないんです。』
月永「なるほど…じゃあ絵画を復元するとか、美術館の学芸員みたいな仕事は?」
『絵が作者以外の人間に触られるのってあまり気持ちよくないなって…美術館も…そういうのじゃないっていうか…』
月永「おまえ意外とワガママだなぁ…」
そう言ってれおさんはソファーの背もたれに深く沈み込んだ。伸びをしながら「ん〜」と声を出してから「あっ!」と声をあげまた私の前に顔をずいっと近づける。
月永「最近、こういうことしてみたい!って思ったことは…⁉︎」
『…それなら』
第16話
頼れる年上
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