第一章 俺の恋の話
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泉さんが手をひいて歩き始めて、どのくらいの時間が経過したかはわからない。けど特徴的なレンガの坂道を私の手をひいて前へ前へと進んでいく。一生懸命に彼についていくこと数分、彼は急に足を止める。
瀬名「ついた」
『ここは、?』
ついたのは、フィレンツェでも有名なミケランジェロ広場だった。学校の課外授業で一度行ったことがあったその場所を泉さんは慣れたように進んでいく「あぁおしゃれな場所が本当に似合う人だ」と感じながら私も彼の影を踏むように後を追いかける。
瀬名「この間ここで撮影があってさ、景色が綺麗で陽菜と一緒に見たいなって思ってたんだ」
彼のその一言が私を勘違いさせる。この間からそうだ…、泉さんがこの間からこぼす甘い言葉が恋に気づいた私を勘違いさせる。
『…そんな公園で景色見るなんてカップル…みたいですね』
そう言って揶揄うように笑って返すと、泉さんはいつもみたいな意地悪そうな笑顔でこちらを見る。
瀬名「そう思って欲しくて連れてきた」
『…え』
瀬名「あんたには正直、遠回しな物言いはしたくないって思ったの。だからさぁ……俺と付き合ってよ」
『つき…あう…えっと…』
瀬名「返事は」
『なんで…私…』
私なんて…、と言いかけると泉さんは深いため息をついた
瀬名「あんたの返事はハイかYESしかないから」
泉さんはドヤ顔で私に顔を近づける。驚いて一歩引いてしまうが、その自信満々な様子が泉さんらしくてクスッと笑ってしまう。泉さんは近づけた顔を離して腕を組む。
『私でいいんですか?』
瀬名「あんたがいいの」
『奇遇ですね、私も泉さんがいいなって思ってました』
そんな変な返しをしたら、泉さんは「はぁ?」って顔をしたのち意味を理解したのか真っ赤な顔でこちらを見る。今日はいつも以上にいろんな顔の泉さんを見ることができるなって少し嬉しくなる。
瀬名「俺が言うのもなんだけど、本当にいいの?」
『はい、泉さんがいいんです』
瀬名「…そう、まぁあんたがそこまで言うならぁ?付き合ってあげる」
『付き合ってって言ったの泉さんですけどねっ!』
泉さんは顔を真っ赤にしたまま私に背を向けて歩き出す。それがまた新鮮でクスリと笑ってしまう。
『泉さん…、あの時助けてくれてありがとうございました。』
瀬名「今度からは…、まずいって思ったら俺に相談してよね…
彼氏なんだから」
泉さんの言葉に自分の体が熱くなるのを感じる。あぁ…この人が…目の前にいるこんな綺麗に微笑む人が、私の初めての彼氏…なんだ…それが嬉しくて顔が緩むのを感じる。
『…はい、相談乗ってください』
瀬名「もちろん、いっぱい頼ってくれていいからねぇ」
泉さんは私の頭をグリグリ撫でてから手を取って歩き出す。そのまま、どこへとは言わず泉さんは歩く…きっともとの予定通り美術館に行くつもりなんだろうなと思って何も言わずについていった。
泉さんは口が悪くて、思っていることと裏腹な言動をしてしまうけど…本当は年上ぶるのが好きでお世話好きで…懐に入れた人間にはとことん優しくするツンデレさんだ。だから、泉さんの本質がわかる人にしか理解できないかもしれない…
私は泉さんの手を離し振り返った彼の顔をジッと見つめる。彼の綺麗な顔が私の顔を見つめ返してきて、胸の奥がくすぐったく感じる。まるでそれを拭うかのように言葉をこぼす。
『泉さん、私そのままの泉さんが大好きです』
瀬名「…俺も、そのままのあんたが大好きだよぉ」
『ふふっ、泉さん耳真っ赤』
瀬名「あんたは顔真っ赤」
『えっ!』
瀬名「う〜そ」
『なっ!も〜!』
泉さんは耳が真っ赤なまま、目的地であった美術館に入っていってしまう。私はそれに続いて美術館に入る。少し進んだところで泉さんは待っていてくれて横に並べば泉さんはソッと私の手を取って歩き出した。彼の耳はまだ真っ赤なままで、それがまた愛おしくてたまらなかった。
あのあと、美術館の館内を満足するまで歩き尽くして
彼のオススメのショップを回って
私の好きな画材屋によって
心ゆくまで『デート』というものを楽しんで、家の前まで送ってもらった。
泉さんと出会ってどのくらいの時間が経ったのだろうか。去年の夏頃だったか、あの時はただ綺麗な人がコーヒーを飲みにきたなくらいにしか思っていなかったけど…
誰が彼と付き合う未来を予想できていたのだろうか。私はできなかった…。でも彼と会うたび、彼を知るたび…彼の魅力に惹かれていった。
人生17年…何があるかわからないものだ…。モデルでアイドルの人がフィレンツェでモデルとして1から上を目指そうとしている人と出会って恋に落ちるなんてそこらへんの人間に起こるものなのだろうか…。私の人生を一瞬で変えた彼という存在は神様の気まぐれかそれともひたむきに生きてきた私へのご褒美か…。まぁ、ご褒美をもらえるほど徳を積んでいないし長生きした訳でもないのだけど…。
なんて考えながら自分のベットにモッソリと入ってしまえばあったかくなってきて自然と瞼が閉じられて、夢の世界へと旅立ってしまった。
夢の中では今日行った広場で泉さんとのんびり過ごす夢を見た。でも、今日とは少し違って泉さんは顔を隠していて…少し大人っぽく感じた。
そして、夕日をジッと見つめた後に私の方を見て悲しそうに笑った。でも……こっちを見て口にした言葉は私の耳に届くことはなかった。
第13話
何でそんなに悲しい顔をしてるの
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