第一章 俺の恋の話
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*瀬名said
明確に好きと感じたのはいつのことだろうか。たぶん、出会った時から…カフェでよく話すようになった時…?れおくんと一緒にいるのを見た時…?どの時かはわからないけど好きなのは事実。
彼女の笑顔を守りたい柄にもないけどそう思った。誰の力でもなく俺の力で…
だから、彼女が誘拐された時俺が守らないといけないと思った。俺が悪から彼女を救いたい、そう思ったんだ。
瀬名「ほんと…年下の女にな〜んでこんな翻弄されるわけ、ちょ〜うざぁい…」
彼女を送った帰り道に独り言が漏れる。
二人で男の家を後にしてから彼女が俺の手を取って言ったことが頭をずっとループする。その言葉はまるで告白のようにもとれて、でもファンの子に言ってもらうことにも似てる。男の俺はやっぱり都合のいいように解釈してしまいそうでそれがまた勘違いな気もして確定に捉えることはできなくてモヤモヤしてしまう。
家に帰ると、先ほど別れた二人が俺の家で待っていた。
月永「あ〜っ!『画家』ちゃんをお持ち帰りしてったやつだ!」
紡「協力した人間に感謝もせず、お姫さまだけ連れて行った愚か者だ」
瀬名「なんで、ウチにいるわけ」
月永「お前のこと心配で待っててやったんだろ〜泣いて帰って来たらどうしようと思ったのに!」
瀬名「…なんの心配なわけぇ?俺は全然心配いらないけどぉ?」
月永「…ふむふむ、その顔はいいことあったなぁ?セナ!何があったの!」
瀬名「別に〜…?」
俺は突っかかってくるれおくんを無視して冷蔵庫から水を取り出し、ゴクリと飲み込む。すると、大人しくソファーに座ってた紡がクスリと笑ってれおくんの腕をひく。
紡「帰ろ、レオ」
月永「えっ⁉︎なんで、紡は気にならないのか?」
紡「気になるけど、いう気がないならいいでしょ。ねぇ…?」
瀬名「…なにそのニヤケ顔。チョ〜うざぁい」
紡はれおくんの腕を引いて玄関を出る。そして、扉が閉まる前にこちらを見て…
紡「それに、泉はこれから『デート』に着ていく服でも選びたいだろうしねぇ…?」
その言葉を聞いた瞬間、扉はバタンと音を立てて閉まる。
…なんで知ってるわけ、アイツ…意味わかんないんだけどぉ…
でも、もうそんなこと言っても誰も返事してくれるわけではないから俺は鍵を閉めてからリビングに戻ることにした。
確かに陽菜とデートできることになったんだし、どうせならかっこいいとか思ってほしいわけで、言葉通りなのはムカつくけど…コーヒーでも飲みながら着ていく服でも決めようかな…
そんな事件があった日の夜のことだった。
=数日後=
公園の時計塔の下で飲み物片手に待っていると、彼女はやってきた。
『泉さん…!お待たせしました!』
瀬名「ううん、今来たところ」
彼女は、サックスカラーのシャツに黒のプリーツスカートを風になびかせて現れた。文学少女と言った感じのファッションがそれまた彼女らしくて似合うなと純粋に感心してしまう。
黙って自分を見る俺に疑問を抱いたのか彼女は首をかしげる。
『…?変、ですか?』
瀬名「いや、似合ってる。可愛いよ」
柄にもなく思ったままが口からこぼれて「しまった」と思いつつ彼女を見ると林檎みたいに真っ赤になっていて恥ずかしそうに下を向く様子がまた愛らしくて、つい悪戯心が働いてその手を取る。
瀬名「ほら、いくよ。まずは美術館行こうか」
『あっ…!泉さんも…すごく、かっこいいです…』
瀬名「……当然でしょ…」
当然、だけど彼女に言われると嬉しくて照れ隠しに手をギュッと握って少し早足に歩くと一生懸命についてくる陽菜が面白くて歩いた。
『泉さん、足早い…』
瀬名「頑張ってついておいで〜♪頑張れ頑張れ♪」
『うぅ…意地悪…』
あんなことがあったあとで元気が無くなってしまうのではないかとか、バイトをやめてしまうのではないかとか不安に思うこともあったけど今の彼女の笑顔を見たらそんな心配は必要なかったのだと感じた。美術館に向かう道中で学校での話や今度バイトに復活する話などなんてことない日常会話をしてそれにも安心した。
それから、あんなことがあったにも関わらず彼女はマルコと教室でも話すようになったのだと嬉しそうに語った。それを喜んでいいのか悲しんでいいのか俺の心には変なモヤモヤが残ってしまった。
瀬名「よかったよね、あんたが平和主義者で」
『平和主義者っていうか、そこまで酷いことはされたって思っていないので…それに泉さんが助けに来てくれそうなそんな気がしたんです。だから、最初は不安だったけどちゃんと彼と向き合おうって思えました。ありがとうございます、泉さん』
そうやって、素直に感謝できるところとか…なんでも受け入れていくところがどこか女王様に似ていて彼女を嫌いになれない要素なんだと思う。
重ねているわけではないけど、ふとした時に「あぁ似ている」と思う部分が多くある。だからこそ俺の知らないところで二人が仲良くなるのも頷けるし、あのれおくんがちゃんと個人を認識しているのもわかる気がする。
いつかの彼女が自分より紡の方が俺には相応しいって言った時、昔の俺だったら嬉しかったと思う。あの頃の俺は幼馴染を失った彼女を支えあわよくば自分のことを見てほしいと心の底から望んでいたから、きっと第三者にそう言われたらさぞ喜んで自信に変えていたかも知れない。
でも、今は違う。紡の幸せを、れおくんの幸せを…ふたりの幸せを見届けることが俺の幸せでもある。それに、今俺が幸せにしたいのはこの目の前の女の子なわけで…
瀬名「…俺がバカみたい」
『急になんですか…?』
瀬名「…ねぇ、やっぱり買い物も美術館も今日はなし」
『へっ⁉︎なんで!』
瀬名「行きたいところができた」
俺は足を向けた方向を変えて、歩き出す。陽菜は文句をたれながらも大人しくついてくる。
難しく考えても仕方ない。どっかのバカみたいにバカ正直に思ったことを伝えて、楽になりたい。そして、この平和ボケした馬鹿娘の顔を真っ赤に染めてやりたい。さらには、幸せって言わせてやりたい。
そう思った時点で、俺の負けなのかもねぇ…
第12話
「いいところに連れてってあげる」
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