第一章 俺の恋の話
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引っ張られていた腕をゆっくりと離される。
泉さんは手を離してからもゆっくりと歩みを進めていくので私もそれに合わせて歩く。
『泉さん…?』
瀬名「もう、泉って呼ばないの?」
『あれは、勢い余って…』
瀬名「俺は別にあれでいいけどぉ?」
『…呼びません…』
瀬名「そう、ざ〜んねん」
あぁ、いつもの泉さんだ。よかった…いつもの私の知ってる泉さんだ…
ゆっくり歩く泉さんの片手を私の両手で包むように持つと泉さんが慌てる。それがなんだか面白くてギュッと握る。
瀬名「ちょ…ちょっとぉ…なぁに」
『……よかったです。泉さんが人を殴らなくて』
瀬名「…」
『泉さんが誰かを傷つけるのは似合いません。』
瀬名「…どうしてそう思うの」
『私はずっと綺麗な顔で笑って前を見る泉さんが好きだから、その笑顔で他の誰かを笑顔にする泉さんが好きだから…他の人を怒った顔で殴ったり…傷つけたりする泉さんは……見たくないんです。』
瀬名「…そう」
『えっ…わっぷ…』
泉さんは私の手を引き込み私の体をギュッと抱きしめる。あまりの急展開に驚いて手が宙を彷徨う。泉さんは私の肩に頭を預けて私の体を締め付ける。
少し痛いけどそれを拒むことはできなくてただそれを受け入れる。
瀬名「本当によかった…!無事で…、居なくなった時は心臓が止まるかと思った。もっと早く相談してくれれば…陽菜があんな不安な所にいくこともなかったのに!守ってあげられたのに!」
『いいんですよ。泉さん、マルコは結局あれが悪いことだって気づいてくれました。それが私も自分もダメにしていることだって気づいてくれました。私はそれだけで充分です。それに泉さんは助けに来てくれたじゃないですか、これ以上望んだらとんだ贅沢者です。』
瀬名「…もっと贅沢言っていいのに」
『じゃあこれからのために取っておきます…。それでもいいですか?』
瀬名「…はぁっ…いいよぉ…でもこれからはちゃんと俺にいいなよねぇ」
『あっ!泉さんも贅沢言ってください!助けてくれたお礼したいです!』
瀬名「へぇ…なんでもいうこと聞いてくれる?」
『えっ!なんでも…ですか…』
肩に乗せていた頭をゆっくりと持ち上げて私の顔を向き合わせる。泉さんはニヤリと笑って、「どうしてやろうかなぁ」と呟く。
『えっ!何をするつもりですか!』
瀬名「…なんでもするんでしょぉ?」
『なんでもするとは言ってません!贅沢を言ってくださいって言っただけで!言うだけです!やるとは言ってない!』
瀬名「はぁ⁉︎今更怖じ気ずくなよ!弱虫!」
『弱虫ですよ!て言うか泉さん何言うかわからないから怖い!』
泉さんは私から離れて数歩足を進めてから先ほどとは違い、少し照れた顔でこっちを見る。
瀬名「コーヒー、一緒に飲みに行こう」
『…えっ』
瀬名「そのあと、今日行くはずだった服屋見に行って…家までちゃんと送らせて」
『そんなことでいいんですか…?』
瀬名「そんなことでいい。今日みたいに急に消えたりしないで最後まで俺といて…」
『…』
私は、彼が好きだと気づいた手前ここまで言われると恥ずかしいし勘違いしてしまう。急に抱きしめられたり、私の為に本気で怒ってくれて…こんなことされたら好きじゃなくても勘違いをおこしてしまいそうだ。
『泉さんは…その…日本では有名人なんですよね…』
瀬名「…そうだって言ったらなに…?」
『そんな人が…こんな…私なんかにかまってていいのかなって…』
瀬名「…それと俺の贅沢となんの関係があんのぉ?」
『私より…ほら…紡さん…知り合いなんですよね?紡さんの方がその…お似合いです…』
バイト先で知り合った紡さん、助けに来てくれたから知ったけど二人は知り合いだった。ずっと綺麗な人だと思ってて、でもそれを鼻にかけてなくて気さくで…そして何より綺麗に笑う人だと思った。その笑顔が人に伝染して笑顔を増やせる人…あんな人の方が泉さんにはお似合いだ…私みたいな普通の女より…と考えていると泉さんは深いため息を吐いて腰に手をあてる。
瀬名「あれと俺がお似合いぃ?ハァ〜、ないない。あいつはもう成約済みだよ」
『えっ…紡さんって泉さんと同い年ですよね?』
瀬名「…そうだけど、でも結婚してる」
『…』
嬉しいような悲しいような…複雑な感情の顔をした泉さんが私を見る。あぁ…きっと好きだったんだ。私はきっと余計なことを言ってしまったと後悔する。自分が勘違いしないようにと遠回りしようとして、私は好きな人を傷つけてしまった。だからなのか、私は口走ってしまった…
『泉さん…私も贅沢言っていいですか…?』
瀬名「…?いいけど」
『私と…デート、してください』
瀬名「贅沢は取っておくんじゃないのぉ」
『今、言いたいと思ったんです』
瀬名「…ふ〜ん、まぁ俺のも叶うし一石二鳥って感じだよねぇ」
『じゃあ!』
瀬名「いいよ、デートしてあげる。でも今日は帰ろう、疲れたでしょ」
そういって泉さんは私の手を取って家の方に歩く。背中を向けた泉さんの耳は少し赤らんでいて、きっと私も同じような顔をしているんだろうと感じて俯いて手を引かれるままに歩いた。
あぁ…、自覚したら恋は急加速するなんて誰かが言ってたけど。それは本当みたいだ、いろんな顔をする泉さんに一喜一憂する私。
彼が笑う為に何かしたい、彼を喜ばせたい。そう思って動き始めた時点で私も恋する乙女の仲間入りなんだと思った。この想いに気づかせてくれたマルコには申し訳ないけど、感謝してしまう。もし、バイト先に来てくれた時があれば…とっておきのコーヒーを入れてあげようと心に誓った。
瀬名「デートするときはとびっきりオシャレしてよね」
『…えっ』
瀬名「俺の隣を歩くんだから当然でしょぉ?じゃあ日にちはまたおって連絡するから」
『は…はい』
第11話
瀬名「ほんと、面白い子だよねぇ」
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