第一章 俺の恋の話
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あれから少しの日にちが経過した。
あの日、家に帰ってからパパやママに相談して警察にも相談した。ただ、写真が送られてくるだけで実被害はないからと追い返されてしまった。
私個人としては、問題ないが友人や周りの人間に被害をおよぶそれだけが私にとっての不安要素だった。そして、その矛先は今の所泉さんに向かっていると予想している。
パパもママも心配してくれて学校の送り迎えをしてくれるし、この件が落ち着くまでは外出を控えるようにと言われてしまいそれに従った。泉さんとは携帯で連絡をとるようになったものの、会う回数は前よりも減ってしまった事実だ。
そんなある日、泉さんから「久しぶりに買い物にでも行かない?」とお誘いがあってパパとママに相談したら日が暮れる前に帰ってくるという約束で許可をもらって、家を出た。待ち合わせ場所の公園に到着すると、泉さんが待っていた。黒い帽子を深く被っているけど滲み出るオーラとファッションセンスで泉さんだとすぐにわかった。
『泉さん!お久しぶりです!』
瀬名「ほんと、なんだか久しぶりだねぇ」
『最近は学校の往復ばかりで…正直、カフェにも行けてなくて』
瀬名「じゃあ今日は息抜きに目一杯楽しもうねぇ?」
『はい!よろしくお願いします!』
勢いよくペコリとお辞儀すると泉さんは私の頭を撫でてて「体育会系なのぉ?」とクスクスと笑った。
『…あまり、こういう経験ないので…』
瀬名「…へぇ〜デートしたことないんだ」
『…で…でーと…』
瀬名「…エスコートしたげるから、お手をどうぞ?」
『…はい』
聞き慣れない言葉に絆されてついその手をとってしまう。引かれるままに歩いていくと、泉さんはいつものように世間話をしながら歩いていく。私もそれに応えていく、泉さんと会話するのは楽しい。少し口下手さんだけど、ちゃんとそこには優しさがあるとわかっているから多少強い口調になっても気にすることはない。
こんな平和な時間がもっと続けばいいのに…。
*瀬名said
市内のショップ通りにつけば四十崎さんはキョロキョロとショップを見回す。その様子がなんだか子供みたいで微笑ましくてじっと見ていると、急に四十崎さんが振り返る。
『泉さん、笑った?』
瀬名「…笑ってないよ」
『…嘘だぁ…』
四十崎さんは二ヘラと笑ってまた前を向く。俺は繋がった手に引かれるままに前へ進む。それと同時に先ほどの彼女の笑みが俺の胸の奥をひどく焼き焦がして、脳にあの映像を刻みつけた。あぁ…これが『恋』というものかと妙に納得してしまった。それを隠すように俺は前を向いた彼女に話しかける。
瀬名「四十崎さんはどこに行きたいの?」
『別に、行きたいところはないですね…!あっ画材屋さん行っても?』
瀬名「それはいいけど、行きたいところないのに出てきてくれたの?」
『…?はい、泉さんに会いたかったので』
さらっと言ってのけた四十崎さんは行きつけの画材屋さんに向かうためにレンガの道を進む。さっきから道を歩いているだけなのにいろんなことがありすぎて心が休まった気がしない、天然なのかなんなのか彼女は気にした様子もないだから俺の悪戯心が働いてしまう。やられっぱなしは性に合わないからねぇ
瀬名「陽菜、走ると怪我するよ」
そう一言呟くと走っていた足が急ブレーキをかけて前の人物が振り返る。その顔は真っ赤でまるで茹で蛸みたいで笑えた。陽菜は「なっ…ぁ…あ…あ…」と意味を成さない言葉が漏れ出していた。俺は悪戯に「どうしたの?」と言うとまた顔に赤みが増した。
『名前…なんで…』
瀬名「なんで?陽菜が俺のこと下の名前で呼ぶなら俺もそうするのが道理でしょ?」
『そんな道理聞いたことないです…』
瀬名「じゃあ一つ学んで偉くなったねぇ…?」
俺が陽菜の頭を撫でるとその手をゆるく払いのけられる。自分の腕がなくなってから見えた陽菜の顔は真っ赤なままでいじけたように目を逸らした。
俺は照れを隠すように彼女より前に歩みを進めていく、きっと彼女は真っ赤な顔のまま固まっているから少ししたら振り返って「早く行こうよ」と声をかけてあげよう。それまではその真っ赤な顔は見ないでいたあげる。
『子供扱いしないでください』
瀬名「俺よりは子供でしょぉ?」
『そうですけど…』
彼女がどんな顔をしているのかなんとなく予想できてしまってそれが面白くってどんどん前を進んでいく。少ししてから陽菜が付いてくるような音がして少し親鳥になった気分だ。俺が気分良く歩いていき少ししてから、もういいだろと思って後ろを振り向く。
瀬名「ほらぁ〜…画材屋いくんでしょぉ?案内…して…よ…」
しかし、振り向いた先には彼女はいなくて視線の先にはただ歩いてきた道が続いているだけだった…
瀬名「…陽菜?…ちょっと…冗談キツイよ?隠れんぼとか本当に子供っぽい…」
そう言って先ほどまで彼女がいた場所まで戻って左右を見回しても彼女はいなかった。
俺の中では焦りがましてきて、頭の中がぐわんぐわんと揺れる。まるで地面との平衡を失ったように正しい立ち方も保っていられない。とにかく、彼女と歩いた道を引き返すために駆け出す。左右を見渡しても彼女はいなくて後悔の念が押し寄せてくる。その感情を打ち消すように俺は携帯を開いて彼女の電話番号に電話をかける。やっぱり応答はなくて。今度は違う番号に電話をかける。
瀬名「もしもし…っ」
月永「セナ?どうしたんだ?今日はデートって…」
瀬名「助けて…、れおくんっ!」
月永「…とにかく帰ってこい、話はそれからだ」
俺は急いでれおくんが待っている家に帰っていった。恐れていたことが起こったこと。俺が近くにいたにも関わらず彼女を守れなかったこと…いったいどこから話していいかわからないし、どう言葉にしていいかもわからない。ただただもし彼女が泣いているならその涙を拭うのは俺でありたい。彼女を悲しみから救い出したい、俺が…この手で。
第8話
王子様には程遠い愚かさだ
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