第一章 スカビオサ
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ドラマの撮影は順調に進んだ。零さんとはあの時からよく話すようになったし、お互い話し方も崩れてきた。話が進むなかで、ESのアイドルの方とも少しだけお話しする機会があって、その度零さんが紹介をしてくれた。今日は話も中盤、ゲストの人も入るそうで今日も今日とて緊張のあまり撮影現場の大道具の隙間に座って台本を読んでいた。
『やっぱり、今回も面白い…。』
零「やっぱり、ここか『天使様』」
『あっ…零さん。見つかりましたか』
零「今日は隅っこって言ったらこのへんかと思ってな…。また隅っこで台本読みかえ?我輩も手伝おうか?」
『いえ!読み終わったので、そろそろリハですか?』
零「いや、今日は面白い子が見学に来ておるからな。紹介しようと思ってな」
『見学?今日ってゲストの方って1人ですよね?』
零「そうじゃ、凛月がおるユニットの子がゲストなんじゃよ。おっ、噂をすれば…、り〜つ〜!」
零さんは変な話し方に加えて重度のブラコンで、凛月さんを見つけるとテンションがいつもの三倍くらい上がる。逆に、凛月さんはカメラの前以外で零さんに会うとテンションがいつもの三倍くらい下がる。飛びつこうとする零さんを避けて、凛月さんが赤い髪の毛の子を連れてくる。
凛月「美羽子、この子。朱桜司っていうの俺の所属する『Knights』のリーダー」
朱桜「初めまして、朱桜司です。」
『初めまして、天崎美羽子です。』
凛月「後、今日は見学でもう一人来てるんだけど。自由な人でね?ちょっと捕まえられなかった。あとで紹介するよ」
『?自由な人…まさか!月永さん!』
凛月「そうだけど、月ぴ〜のこと知ってるの?」
『知ってるも何も、この脚本月永さん!』
凛月「あぁ〜…その脚本の人はね」
月永「おれじゃないぞ!」
『っきゃあ!』
急に後ろから少し高めの男性の声が聞こえ隣にいた零さんの腕にしがみつく。心臓がばくばくしているのを片手で抑えつつ顔を上げるとオレンジ髪の男の人が笑顔で立っていた。
零「月永くん、いくらなんでも後ろから知らな人が話しかけたらびっくりするじゃろう?」
月永「すまんすまん!面白そうな話をしていたからついなぁ〜!それで、さっきの話だけどこのドラマの脚本はおれじゃないぞ!あと、おれ月永レオ!よろしく〜」
『…あ、よろしくお願いします。』
凛月「この人も、俺とス〜ちゃんと同じ『Knights』のメンバーで美羽子とは同い年だよ」
『同い年…』
月永「今子供っぽいって思っただろ〜!これでも天才作曲家なんだからな〜!」
『そうなんですね…えっと、月永さんは脚本家さんじゃなければなんで現場に…?』
月永「ん〜?敵情視察!」
『敵…?』
不思議な言動をする、脚本家ではなく作曲家の月永さんは私のことをジーッと見つめるので緊張してつい零さんの服の裾を掴む。すると零さんが前に出て月永さんを止める。
零「月永くん、その言い方じゃあまるで美羽子ちゃんが敵みたいになるじゃろう。ちゃんとストレートな物言いをした方が良かろう」
月永「あぁ…悪いなぁ癖でさ!美羽子がどんな人か知りたいって言われておれが代わりに見学しに来たんだ!」
『代わりに…?』
月永「お前、その脚本を面白いって言ってくれたんだってな!ちゃんと作者には届いてるぞ!そうなれば自分のこと褒めてくれるやつがどんなやつか知りたいのが作者心ってやつだ!」
『じゃあ、脚本家さんってことですか…?』
月永「あぁ!あいつ忙しくてさ、でも男じゃなくてよかった!女の子で一安心だし、リッツとも仲良くしてくれてるみたいで安心安心!」
『えっと…月永さんと…関係って…』
月永「…あ〜、内緒!」
月永さんは触れてほしくない部分だったのか。周りの人も苦笑いしていたので、私も触れないことにした。私たちは他の共演者も混ぜて世間話を楽しんでいると準備ができたのか、スタッフさんの声掛けで各々の場所へと移動していく。本番を前にして、カメラの向こう側を見ると月永さんとジッとこちらを見てニヤリと笑ったので肩がビクリと揺れる。
何だか、監視されているみたいで少し怖いと思っていると隣にいた零さんが肩を叩く。
零「安心していいぞい。あれはただ恋敵じゃなくてよかったと安心しておるだけじゃ」
『恋敵…?ま…まさか!』
零「おっと、それ以上は内緒じゃ。くくく、独占欲が高いのは相変わらずじゃ…我輩が言ったことは内緒じゃよ『天使様』」
零さんは意味深な言葉を残して自分の立ち位置へと戻っていった。なんだ、このドラマが始まってから零さんとの距離感が近ずいてきているのは薄々気づいていた。あの時、慰めてもらってから零さんのことを頼りにしているのは確かだし、気になっているのも確かだ。でも、そんなことがあってはいけない。共演者しかも今をときめくアイドルに…そんな感情を抱くのはいけないことだ。ママにもあってはいけないと注意された。それに、スタッフの人たちはきっと私にはそういうスキャンダルを起こさない、という信頼があるからこの役をもらえたのに…。
『だから、私は『天使様』なんて言葉の似合わない女だよ…』
そんな私と零さんのやりとりを凛月さんが見つめていることにも気づかず、私は去っていった零さんの方を見つめていた。
第四話
『きっと惹かれていたのは、もっと前からだったのかも』
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