第一章 スカビオサ
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドラマの件を、承諾して一ヶ月ほどが経過した。いよいよドラマの顔合わせ当日を迎えた。
今日はマネージャーが別の現場に挨拶に行くからと、稽古場の前に一人置いてかれてしまったため荷物を持ち直してトボトボと稽古場へ向かう。まずは、監督さんとプロデューサーさんに挨拶して…それからそれから…と頭を巡らせるとだんだん混乱してきて、足元がふらついたのを誰かが受け止める。驚いてバッと顔を上げると先日見た顔が目の前にあった
『あっ…さ…朔間さん…?』
零「天崎さん、ですよね?初めまして…」
『は…初めまして…』
『朔間零』その人だ。思った以上に丁寧な所作や言動にワイルドさのかけらもない、むしろ紳士的で物静かな人だという印象を与えられる。この人が、夢ノ咲学院で人気な『UNDEAD』のリーダー…朔間零…。支えられているのを思い出し、咄嗟に離れ「すみません」と頭を下げる。彼は笑って私の先を歩いた、私は少ししてからそのあとに続く。とりあえず、悪い人ではなさそうで安心した。
それに、こうやって稽古場のドアを開けて「先にどうぞ」って開けてくれるなんて紳士的っていうか…紳士だなぁ…同い年とは思えないや…
『ありがとうございます……おはようございます!天崎美羽子です!』
零「おはようございます、朔間零です」
監督「おはよう、まさか主人公ふたりが揃って入ってくるとはね仲良くなれたってことかな?」
『あはは…偶然助けてもらいまして…』
なんて零せば部屋全体に笑い声が溢れる。よかった、雰囲気は悪くなさそうだ…。とりあえず、知り合いのスタッフさんや役者さんに挨拶をしていると、スタッフさんが席に案内してくれる。
私の隣はもちろん朔間さんがいて、そして今後お世話になる役者陣が揃っていた。向かいには制作スタッフが並ぶ。少し緊張感があるなかで、監督が先陣を切って話出す。指示される通りにメインの役者が自己紹介をし、スタッフ陣もお偉いさんと言われる人たちが挨拶をする。
そして、監督がこのドラマの説明をする。このドラマは、朔間さんが所属するES(アンサンブルスクエア)が協賛をしているため、ゲストでESのアイドルが出ることもあるらしい。アイドルの方とお仕事もしたことがあるがここまで一つの事務所(?)を優遇しているのも珍しい…。と思いつつ、監督の話を聞きながら資料に目を通す。話が終わり、一度休憩を挟み本読みを行うようでみんながバラバラに立ち上がる。
私も台本を持って席を立つ。初めての現場はどうしても緊張してしまってそれを隠すように颯爽と稽古場を出て、一人になれる場所を見つける。高飛車に思われないように「ごめんなさい、緊張しちゃって…少し外の空気吸ってきます」とスタッフさんに声をかけ、外に出る。建物の隅にあるベンチに腰掛けて、深呼吸する。落ち着いたら台本を開いてセリフの確認…。
『この台本、やっぱり面白いなぁ…』
**「それ、面白いんだ」
『っへ…だれ…』
**「俺?朔間凛月、あんた天崎美羽子さんでしょ?今度兄者とW主演する」
『朔間…?朔間零さんの弟さん…?』
凛月「そう、あと追いかけてきたんじゃなくて俺が先客ね」
『あ…はい…』
ベンチに座った時は気づかなかったけど、その後ろの木陰に腰掛けていた朔間さん…凛月さんはゆっくりと立ち上がり私の元に歩み寄り、私の隣に腰掛ける。
『あ…のなんで、隣』
凛月「その台本、面白い?」
『…あ、はい。面白いです。シンプルな話って最近やってなくて、いつもやってる自分はついていけなくて…。役だけがついていってる状態だったんですけど、これはシンプルで自分も役もついていけます。あと、初々しい恋愛話は個人的に好きです…。』
凛月「へぇ〜それは素敵な感想だね。伝えとくよ」
『…伝えとく…?』
凛月「…俺も弟としてドラマ出るから、よろしくね。天崎さん♪」
『あっ…はい!よろしくお願いします!凛月さん!』
言いたいことだけ言って凛月さんは去っていった。時計を見ればもうすぐ再開する時間になっていて、私は急いで稽古場に戻っていった。伝えとくってどういう意味だったんだろう…。わからないけど、また会う機会があるみたいだしその時にでも聞いてみようかな。それにしても、兄弟揃って美形なんだなぁ…、羨ましい限りだ…。
私は稽古場に入って、戻ったことを伝えてから自分の席に着く。隣に座っていた朔間さんは少し伏せていて、仮眠しているのかなと思ってあえて触れないで台本に目を向ける。
監督「さて、そろそろ本読みを始めようか。」
『あっ…朔間さん…朔間さん、本読み始まります…起きてください…』
零「ん…んん…もう少し…」
『…ふふ、朔間さんもう朝ですよ〜♪』
紳士的な人かと思ってたけど、案外可愛いところもあるんだって感じると自然と笑いがこみ上げてきた。肩に触って揺すれば、朔間さんは眠気眼のまま体を起こす。私の顔を見て、驚いた顔をしてから口元を隠す。
零「すみません…。寝ぼけてました」
『いえ、可愛いとこがあって少し安心しました。同い年ですもんね、大人っぽくて少しビビってました。実は』
零「…安心してくれたのは嬉しいですけど、俺一つ年上です。」
『…え…えええええええ!』
もう少し真剣に共演者について知っておくべきだったと、とても後悔した瞬間でした。『朔間零』さん、貴方…留年生だったんですね…。
第二話
『年上の方に可愛いなんて言ってしまった』
→