最終章 ナズナ
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月永さん達に誘拐されてどれほどの時間が経過したのかわかりません。
ただ、私はなぜか真っ白なドレスに身を包み全身鏡の前で最終チェックをされています。衣装さんが用意されたドレスを私に着せて、馴染みのメイクさんにメイクをされ…あれよあれよ…まるでドラマの撮影のごとくプロに着付けられ最終チェック…いつ運び込まれたか覚えていません。気づいたらこんなことになっていました。
『あの…月永さんは…』
メイク「…内緒です。話さないでグロスがよれる」
『なんてことだ…』
衣装「いいじゃないですか…本当に『天使様』みたいですよ」
『私なんて…』
そんな崇高なものでもない…。きっともう世界は私を純粋無垢な『天使様』だなんて見ていない…。チェックが終わって、スタッフさんに連れられたのは大きな木製の扉の前でそこには知っている人物が…
『ゆうくん…?』
悠人「ねえちゃん…似合ってるよ」
『…え、ゆうくん…これはいったい…』
悠人「母さんが「私より貴方の方がパパそっくりで絵になるから」って何が嬉しくて結婚してないのにヴァージンロード歩かないといけないんだか」
『…ゆうくん…』
悠人「なに?」
『かっこいいぃぃ…』
悠人「あのなぁ…中にいる人見てからいってくれよ」
そういうとゆうくんは腕を持ちやすように曲げてくれて私はそれを見て固まっていると「早く」と少し怒った顔で言われたので慌ててゆうくんの腕に自分の手をのせる。それと同時に扉の向こうからアナウンスの声が聞こえその合図で扉が開く。
そこには仲のいい友人や彼の家族、私の家族がいた。そう、朔間家と天崎家の結婚式だ。私はゆうくんに引かれるまま赤い床の道を歩く。あんなに憧れた結婚式のヴァージンロードの歩き方もいざ本番になればどちらの足を出せばいいのか、どんなリズムで…と混乱してしまう。やっとコツを掴んだ時にはすでに、彼が待っているところに辿り着いてしまう。
悠人「凛月さん…ねえちゃんのことよろしくお願いします」
凛月「…うん♪美羽子のことも、ゆ〜とのことも義母さんのことも…俺が守ってあげるよ♪
おいで、美羽子」
私は彼の声に導かれるように彼の差し出した手にゆうくんの腕を掴んでいた手を乗せる。少し軽く手を引かれて、彼の横に立つ。前にいた神父様が恒例の誓いの言葉をいっている間に、少しだけ彼のことをみる。いつもとは違う白をベースにしたタキシードに身を包んだ凛月は少し髪が巻かれていてどこかお兄さんを彷彿とさせる。
凛月「なにニヤニヤして」
『ううん、兄弟なんだぁって』
凛月「……だから嫌だったんだ…」
凛月は少しいじけて私から目を逸らす。それでも誓いの言葉をお互い誓いあえば自然と向かい合う。
『大丈夫だよ。私が好きなのは目の前にいる『朔間凛月』だけだから』
凛月「どうだかぁ…まぁ他の男には目移りさせないよ…」
『する予定もないけど…』
凛月「ねぇ美羽子」
『なに凛月?』
凛月「俺だけの『天使様』になってくれる?」
凛月はそう言って私の目の前にあるヴェールをあげる。お互いの顔をなにも阻むものがなくなって凛月の顔が少し微笑む。
凛月「ずっと言いたかった。君は世界中から愛される『天使様』だけど。もうこれからは…俺だけの『天使様』でいてほしい」
『……もうとっくに貴方だけの『
私が笑えば凛月は潤んだ目を隠すように私の口に自分の唇を重ねた。その唇は今までのどんな凛月より柔らかくて暑くて…喜びと幸せに溢れていた気がした。
なんて、素敵な日だ。初めて『Knights』の身内に本当になれた気がした。初めて家族にちゃんと「私は幸せだよ」と伝えられた気がした。初めてみんなに「私はこの人と一緒になります」と発表できた。
もう隠さなくていいんだ…彼と幸せになっていいんだ…誰がそう言ったわけでもないけど、でも誰かがそう言った気がした。
会場を後にするため扉を再びくぐればそこには階段に多くのESのアイドルの方々がフラワーシャワーの準備をしていて、さらに階段を降りたところには白いグランドピアノに紺色の美しいドレスを身にまとった月永さんが『Knights』の楽曲を奏でていて、凛月以外の『Knights』のみんながそれに合わせて歌声をのせていた。みんな同じく紺色のタキシードに身を包んで…
凛月「俺…初めてこんなサプライズされた」
『私も…ていうかこんなお金どこから…』
凛月「…まぁ…うちの王さまと女王様だろうねぇ…」
『…これはお礼しないと…』
凛月「…そうだね。とびっきりお返しがいるかもしれない」
凛月は少し呆れてため息を吐く。でもその後クスクスと笑い始めて、私もつられて笑いだす。凛月が「行こうか」と腕を曲げて私もそれに頷いて彼の腕に手を置く。ゆっくりと階段を降りていくとアイドルの皆さんが「おめでとう」と声をかけながら花びらを舞い上がらせる。それを浴びながら彼を見ると、彼も綺麗な黒髪に綺麗な花びらを乗せていた。それを組んでいない方の手で取ってあげると凛月が笑う。
凛月「ありがと」
『赤い花びら凛月っぽい』
凛月「じゃあ、この白い花びらは美羽子っぽいね」
『…白?』
凛月は私の頭から白い花びらを取って私に見せる。そんなに白のイメージがあったかなと頭を働かせる。階段の最後の段を降りきって『Knights』の皆さんがいるところへと歩いていく。
月永「リッツ!美羽子!改めておめでとう!お祝いサプライズ喜んでもらえたか〜?」
瀬名「全くあんたらがこんな盛大にしたら後に続く奴が大変なんだからねぇ…まぁでもおめでと、くまくん…美羽子も…」
鳴上「凛月ちゃんも美羽子ちゃんもおめでとう!これからはふたりのハッピーを全世界に届けるのよォ♡」
朱桜「凛月先輩、美羽子さん!おめでとうございます。お二人の喜ばしい日をこうやって多くの方が幸せに思ってくれることにぜひ自信を持ってください!」
凛月「みんな…」
『ありがとうございます…』
女王「凛月」
凛月「女王様…」
女王「おめでとう、幸せにしてあげるんだよ。貴方だけの『天使様』を」
凛月「うん、ありがとう…。お礼はちゃんと俺たち夫婦で返すから」
そう言って月永さんと凛月は笑いあった。月永さんは私の方を見て頭をひと撫でして「もう大丈夫そうですね」と笑ってレオさんの元へと戻っていった。ふたりは手を繋いで微笑んだ。
『はい、私もう大丈夫ですーー
だって、私は『本当の愛』を知ったから』
もう、私は全世界の『天使様』じゃない。
朔間凛月だけのたった一人の『天使様』になったからーー。
第十一話
『もう天使様って言葉を嫌とは思いません』
【ナズナ】
花言葉*あなたに私のすべてを捧げます
最終章 ナズナ end.
……To be continued
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