最終章 ナズナ
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拍手が鳴り響いた先ーー
そこには零さんと月永さんが並んでいた。
零さんはなぜか涙目で花束を握りしめていてその隣にいる月永さんも目をウルウルさせながら必死に拍手をしていた。その周りに『Knights』の皆がいて、会場はよりざわめきが大きくなる。そりゃそうだ…こんな豪華キャストな結婚会見が今までにいあっただろうか…会場全体が唖然としているなか女王様の拍手にならって『Knights』の皆が拍手をする。
零さんが近づいて、凛月に握りしめていた花束を渡す。それに合わせてシャッターの音が鳴り響く。その音に消されてふたりは小さな声で会話する
零「おめでとう、凛月。大変なことがあってもちゃんとふたりで乗り越えるんじゃよ。そして、困ったことがあればいつでも俺を頼ってくれよ」
凛月「あんたに美羽子のことで聞くことなんて一生ないけど…、でもありがとう…‥
お兄ちゃん…」
凛月は恥ずかしそうに花束を受け取って、少し視線をずらした。零さんは私に向き直って頭を少し乱暴に撫でる。
零「凛月のこと頼んだぞい…美羽子ちゃん、これからもその綺麗な心を失わんでおくれ」
『…うん、零さんもその野暮ったい話し方そのままでいてください』
零「…凛月の入れ知恵か」
『……』
凛月「あんまり俺の奥さんに触らないでくれる?」
乱暴に撫でられる手を取り払ったのは凛月で初めて言われた「奥さん」という言葉にドキリとしたけどそんなことを言える雰囲気ではなくてだんまりをしている。
すると、零さんが報道陣に向かって一礼してマイクを通して話し出す。
零「この度は、弟の凛月とその妻である美羽子さんの結婚会見にお越しいただきありがとうございます。兄の朔間零です、そして先ほどお話あった通りではありますが皆さんには彼女の言葉をぜひ思い出していただきたくこの場に恥ずかしながら出てまいりました。
皆様がこの場であったことを書こうが、僕も彼女も…そして凛月も咎めることは致しません。ただ、どうかこの二人の幸せな日を幸せに思える記事を書いていただければと思います。…心よりお願い申し上げます。」
そういって私たちの代わりに頭を下げる。零さんに凛月と私もならうように頭を下げる。どうして…どうして零さんが私たちのために頭を下げてくれるの…そんなことする必要ないはずなのに…私たちのために…目が水分で満たされていくのがわかる。
私のせいで、多分凛月が本当に憧れてた結婚会見とはいかなかっただろう。きっと…、もっともっと粛々と行われてふたりの幸せを伝えられる場になるはずだったのに…。
零さんだって、『Knights』の皆さんだって…本当は出てこなくていいはずだった。時間をとらせて、皆の名前に傷をつけることになってしまうかもしれないのに…。
全部全部私のせいだ…。
凛月「用がすんだらさっさと舞台から降りて」
零「ええっ⁉︎凛月…!感動の兄弟のシーンじゃったのに!なんで急に冷たいのっ」
凛月「一分一秒でもあんたと同じ画面にいるのは辛い」
零「辛いっ⁉︎その言い方は初めてで割と傷つくっ!」
凛月「ここは俺と美羽子のステージだよ。部外者はバイバイ……あ、『Knights』のみんなもね」
凛月の辛辣な物言いに身内であるはずの零さんも『Knights』の皆さんも目を見開いていた。しかし、女王様は察しよく舞台の前で固まった零さんを回収して『Knights』の皆さんと一緒に会場から消え去っていった。
凛月は私の手を引いてストンと椅子に座る。私が驚きのあまりジッと彼を見ていると、彼はマイクを持ち直し話し出した。
凛月「時間もあるので、最後に…
本当に賑やかな空間で…生中継じゃなくて本当に良かったと胸をなで下ろしています。
本当はもっと静かに質疑応答して、ふたりのことを話していければと思っていました」
あぁ…やっぱり彼の理想を私のせいでめちゃくちゃにしてしまった…。私のせいだ…。そう思っていると、彼がクツクツと笑い出す。
凛月「でも、そんな計画的なのは自分らしくない。そう思いました。……これが『俺たち』らしい結婚会見だったのかもしれません。それに、兄のことを…仲間のことを…‥そして、何より彼女のことをより一層好きになれました。
皆様、本日はお忙しい中足を運んでいただきありがとうございました。今後も朔間凛月と天崎美羽子をよろしくお願いいたします。」
凛月の言葉に慌てて自分も頭を下げる。まだ凛月の言葉をうまく咀嚼できなくて理解できていないけれど、きっと今のが彼の本心でありそのままの気持ちなんだと思うと、少し不安だった心が楽になった。
報道陣からも拍手が徐々に大きくなっていって、そのまま頭をあげた凛月に手を引かれるままに会場を後にした。
私はただただ凛月に手を引かれるままに廊下を歩いていった。先ほどまでいた控え室に戻るのかと思ったら、彼はそのまま控え室を通り過ぎて歩く。
彼が止まった先はビルの屋上だった。都内の中でも少し高い位置にある屋上は天気も良好で風もあまりなかった。
『凛月…あの…』
凛月「少し後ろ向いてて」
『…え?うん』
凛月は携帯を取り出して、何かをセットしながら私に後ろを向くように指示する。私もそれにしたがって後ろを向く。
一度カシャリと音がなってから何かをカウントダウンするような音が聞こえる。
『凛月…?何を…きゃあっ!』
凛月「俺が日本国民の『天使様』を奪った瞬間を記念にしとこうと思って!」
カウントダウンの音が気になって振り向こうとした瞬間自分の体が浮かび上がるのを感じる。凛月が私を持ち上げたのだ…あまりに驚いて後ろに仰け反りそうになるのを凛月が自分の方に倒すので凛月の頭にしがみつく形になる。
『急に持ち上げたら…心臓止まっちゃう…』
凛月「…サプライズ嫌い?」
『…好きだけど…』
凛月「じゃあ今日だけ許して」
凛月は私を持ち上げたまま私の唇と自分の唇を重ねる。…いつもはゴロゴロしててスイッチのオンオフがはっきりしている彼が自分のためにこんなにも動いてくれるのが嬉しい。彼が、それを無理しているとも感じず自らの意思で動いてくれるのが嬉しい…。
あなたの一挙一動で私は幸せを感じられる。だから、私も…この幸せをあなたに分けてあげる…
この後、凛月がSNSにあげた画像は「まるで天使が舞い降りた」と話題になったのは言うまでもない。ふたりを否定する声は聞こえなくなるほどに全世界がふたりをお祝いする声が大きかった。
第九話
凛月「大丈夫だよ、俺も幸せ」
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