最終章 ナズナ
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記者「それは…失礼しました。こちらもそういう仕事なんで…」
**「それは、事務所に何度も週刊誌のゲラを送るお仕事のお話でしょうか?」
**「ほんと、いい迷惑だからやめてほしいのが正直なところなんですけどぉ〜」
**「できれば、ハッピーな会見だからハッピーな記事を書いてほしいものだわァ…」
**「あはは☆リッツの幸せな会見だ!それを守るのも騎士の勤め!」
記者の言葉を受けて答えるように登場したのは『Knights』の皆さんだった。突然の登場に報道陣がザワつく。
朱桜「突然の登場申し訳ありません。我らの仲間の祝福の日ということでお祝いに参上したのですが…そういうわけにはいかないようですね」
記者「結婚会見にメンバーが登場するなんて聞いたことがない…」
鳴上「あら、ウチは王さまの方針で「何かと一緒じゃつまらない」っていうのがあるのよォ?だから、このくらいは想定内って思ってほしいわァ…」
記者「だからって!」
瀬名「あんたさぁ…よく考えてみなよ。結婚会見でまだ結婚もしてない時の話、根掘り葉掘り聞く記者なんて聞いたことがあるぅ?」
記者「…俺は真実を明らかにするために…!」
月永「違うだろ」
記者の声を冷静に遮ったのは月永レオさんだった。レオさんは凛月の方を見て謎のアイコンタクトをして凛月は立ち上がる。
凛月「新垣拓郎さん」
記者「何で俺の名前…」
凛月「貴方は純粋な彼女のファンだったはずです。純粋に応援して、彼女と一喜一憂を共にしてきた。そんな彼女が好きな人ができて貴方は悲しんだ。美羽子が自分を裏切った…そう感じたんですよね。だから、彼女のことを追いかけて彼女の記事を書いた。彼女がどんな思いをするか考えられなくなったんですよね。」
記者「ちが…っ…違う!そんな女のことなんて何も!!」
凛月「…貴方が書いた美羽子が二十歳の時にとった賞の記事、読みました。もう一度…あんな記事を書いてくれませんか」
記者「……」
凛月が椅子から立ち上がって頭を下げるのにつられて私も立ち上がって頭を下げる。すると凛月が小声で「美羽子が好きって言ってた記事のことだよ」と言ってくれて何のことか理解できた。私はバッと頭をあげて彼を見る。その顔は焦りと困惑が滲んでいた。
『あの…私、あの記事読みました。初めて大きな賞をとった時に嬉しかった思いをファンの皆さん…他にも多くの方に代弁するように書いてくださってありがとうございます。私、あの記事が大好きで…家にも切り抜きがあります。…あの時は、本当にありがとうございました。』
改めて頭を下げると頭の向こうで焦る声が聞こえる。凛月が頭をあげるのと同時に私も頭をあげる。
『私のことはもう好きに書いてください。何と言われてもこの幸せを手放すことはできません。貴方のことを恨みはしません…でも、次書く時は誰かが幸せに思える記事が書けること…それから、貴方自身が幸せになれることを心から祈っています。』
記者「うるさい!う…裏切り者!お前なんか!」
そう言って声を荒げた記者が椅子から離れてこちらに勢いよく向かってくる。私は体が動かなくなってしまって、棒立ち状態でグッと目を瞑る。すると、誰かが抱きしめてくれて報道陣がザワッと騒めく。体に衝撃が来ないのでゆっくり目を開けると抱きしめているのは凛月で、驚いたのは『Knights』の皆さんが目の前に立ち塞がっているところだった。
月永「どうやらお前にはもう『天使様』の声は届かないようだな」
瀬名「残念だけど、もうあんただけの『天使様』じゃないんだよ。諦めなよ」
鳴上「貴方には悪いけど暴力的なのは見せられないのよ」
朱桜「残念ですが、ご退場していただくしかないですね。」
『Knights』の皆さんが記者に声をかけ、警備員さんが記者を連れて行く。私はついそこに声をかけてしまう。
『待ってください!』
凛月「美羽子…?」
『あの…新垣さん…?ですよね。悲しい思いをさせて申し訳ないです…でもどうか記者はやめないでください』
記者「…なんでだよ…」
『あんなにいい記事を書けるんですから、本当はとても心の綺麗で優しい方だと思います。だから、これからは貴方が幸せになる記事を書いてください。これからも応援しています』
記者「……」
彼は何も言わずに警備員に連れられて会場を後にしてしまった。きっと、彼は本当に心が綺麗な方だったに違いない。どこかで歯車が狂ってしまうことは誰にでもある、彼にとって私がトリガーになってしまったんだと思うと少し責任を感じる。だから彼には私のことを好きに書いてもらっていい、でもそのあとは…また誰かが幸せになれる記事を書いてほしい。そう思うのはワガママな事かもしれない…でも祈るのはきっと勝手で誰にでも権利がある事だから…。
『皆様、私のせいでお騒がせをして申し訳ございませんでした。先ほどの方が言ったのはどれも事実であり、どう思われてもかまいません。ただ、どんな時も私を支えてくれたのは隣にいる彼です。私は彼と幸せになりたい…そう思ったんです。だから結婚を選びました。皆さんにどう思われても彼が許してくれるなら、私は彼と一緒にいたい。そう思っています』
凛月「俺も彼女がどんな人間だろうと、彼女と一緒にいたい。そのような決意です。」
凛月は席に戻った私の腰を支えるように立ち、私もそれに寄り添うように立った。シンとした、結婚会見の会場に「ああこれは失敗だ。凛月の憧れを台無しにしてしまった」と落ち込んでいると、ひとり拍手をする音が鳴り響く。
そこにいた人物を見た私と凛月は驚きの声をこぼすことしかできなかった。
第八話
『どうして…』
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