最終章 ナズナ
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結婚会見をすると言うのは今時のタレントとしては珍しい、昔で言えばふたり並んでメディアの前に出てご挨拶をすると言うのが一般的だったのだが、今ではそれもなくなり各所にコメントでお知らせするのが一般的だった。しかし、凛月はそれを拒んだ。
凛月「俺が結婚会見したら後に続くメンバーもしないといけなくなるでしょ?それが楽しみでするんだぁ〜」
なんてすごく不健全そうな理由で進んでいる結婚会見の話。でもその中には彼なりの理由があると、私は薄々感じていた。そして、あれから二ヶ月程経ったか…7月21日、その当日を迎えることとなった。あの後から例の記者は姿を見せなくなったが、きっと今日は普通に始まって普通に終わるってことはないのだろうけど、今日という日は私にとって…変化の1日目になるそう思ったんだ。
『凛月…。あのこんなこと聞くのも今更って思うんだけどね…』
凛月「どうしたの?」
『なんで…結婚会見しようと思ったの…?』
凛月「前もそれ聞いてなかったっけ?」
『他にも理由があるんでしょ…?なんとなくだけどそう思って…』
私がそういうと凛月は驚いた顔をしてから「あはは」と笑い出した。私は凛月のその反応が何を示しているのかわからず慌ててしまう。すると、凛月は私の体をギュッと正面から抱きしめた。
凛月「実はね…俺憧れてたんだ。みんなの前で堂々と「俺はこの人が好きです、結婚します」って報告するのに」
『…え、意外だなぁ…凛月はそういうの嫌いだと思ってた』
凛月「最初は俺も嫌いだった。けど、文章だけじゃ伝わらないものってあると思うの」
『伝わらないもの…』
凛月「俺さぁ…その憧れの人が結婚会見するまで正直そんなもの必要ないって思ってたし、する意味もわかんなかった。ふたりが幸せならそれでいいじゃんって…
けど、結婚会見を見てその人が幸せそうに笑う顔や好きな人を話す姿を見て、幸せを分けてもらった人がいる…嬉しさや愛しさを分かち合ったひとがいる…まぁ批判もあったけどね、けど自分の幸せを自分を応援してくれる人に分けてあげたい理解してほしい。その上で自分を応援してほしいって思ったその人の気持ちが俺にはわかる気がしたんだ。」
なんとなく、それだけ聞いて…あぁレオさんのことなんだなってわかった。彼がまっすぐ奥さんを愛する気持ちは『Knights』のみんなだけでなくファンのみんなにも伝わって、伝染して彼の幸せが多くの人に幸せを与えている。その事実が凛月にとって嬉しくて尊敬できて憧れたんだって…理解できた。
凛月「だから俺も「ちゃんと幸せだよ、みんなありがとう」って伝えたいんだ」
『…じゃあ私もいっぱいみんなに伝えないといけないね』
凛月「うん、それでこれからもっとふたりで幸せになろう」
『うん、ありがとう凛月』
凛月「こちらこそありがとう美羽子」
私たちはそのままギュッと抱きしめあってから時間になるので会場へと向かう。大丈夫、きっと何があっても彼となら乗り越えていける。彼に支えられた分…今度は私が彼を支えよう。寄り添いあって生きていこう。例えどんな結末でも私達なら笑顔でいれる。
スタッフの指示でガチャりと開いた扉を出ると一瞬で光の雨に撃たれる。ふたりで一礼をしてから席につく。アナウンサーの方が大まかな流れを説明している間も、私たちはレンズが向けられる。初めてカメラのレンズが少し怖いと思ったが、隣で彼が手を握ってくれて安心する。
凛月「改めまして、この度はお忙しい中…私朔間凛月と天崎美羽子さんの結婚会見にお越しいただきありがとうございます」
『改めまして、私たちは本日7月21日に入籍致しましたことをご報告致します』
二人揃って頭を下げて話出せばあとは打ち合わせ通りにアナウンサーの方が進めていく。あたりを見回せば報道陣の中に一人見たくないと思っていた人物を見つけてしまう。目があった感覚には「ウワァ」って思っていると向こうも視線に気づいたのかニヤリと笑われ鳥肌に襲われる。さっきまでの自信は何処へやら…やはり本人を目の前にすると不安襲いかかってきて心のどこかで怖い、帰りたいって思ってしまう…。きっと彼も…と思って、隣に目を向けると凛月はまっすぐ前の向いて笑っていた。記者の質問に出し惜しみせずに答えていく
凛月「ファンの方へは本当に申し訳なく思う反面、理解してくれると嬉しいです。俺は今すごく幸せです、この幸せがファンのみんなに伝わって理解してくれて…それでも応援してくれたら俺はこれからも頑張れる、そう思います。」
『私も、同じように思っています。応援してくださって感謝していますしこれからも応援に応えていきたいと考えています。』
記者「よくそんな風におっしゃれますねぇ!」
そう言って私の言葉を遮ったのは例の記者だった。他の記者たちも彼の方を一斉に振り向く。彼はのっそりと椅子から立ち上がり、私の方に目を向ける。アナウンサーが突然の出来事に驚いているのをいいことに彼は言葉を続ける。
記者「こちらは知ってるんですよ。あなたが二十歳になる前に凛月さんの兄である朔間零と付き合っていて別れてすぐ凛月さんと付き合ったんでしょ?案外すぐ乗り換えているあたり兄でも弟でもどちらでもよかったんでしょ?『天使様』という名前には相応しくないそうは思いませんか?」
彼の言葉に固まっていると、彼が大きな声で「なぁ!」と声を荒げるのでさらに驚いてビクリと肩を揺らしてしまう。彼の言葉は世間一般で言えば確かにその通りで、少なくともそれが広がれば凛月のファンの方も零さんのファンの方も怒るだろう。世間としても印象が良くない…。次に声にのせる言葉はいつも以上に選んで言わなければならない。私は頭を働かせて言葉を発しようとしたその時、
凛月「俺はそれでもいいと思っています。」
『なっ…』
凛月は私の前に腕を出して、選んでいるのか怪しいような発言が飛び出した。私もだけど、会場にいた人間全員が彼を驚きの目で見ていた。
凛月「貴方が言ってることの何がおかしいのか、俺にはわかりません。誰かの幸せを素直に祝えないんですか?貴方が書いた記事の1つ1つに一喜一憂する相手がいるって考えたことないんですか?彼女はそれを全部乗り越えて俺と幸せになることを選んでくれた。それだけで幸せを感じてはいけませんか?それにここで兄の名前を出すのは兄に対しても失礼です。やめてください」
私は、凛月の言葉が嬉しくて泣きそうになってしまった。彼がそう言ってくれたそれだけで…本当に幸せで彼を選んで…彼が選んでくれて本当に幸せだと思った。
第七話
凛月「なんて兄者の名前が自分の名前と並ぶのが嫌なだけ」
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