最終章 ナズナ
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*凛月said
美羽子が家を出てすぐ鳴るはずもないインターフォンが鳴り渡りコーヒー片手に通話ボタンを押す。
凛月「まだ出勤時間じゃないんですけど」
月永「おはよ〜リッツ!あ〜そ〜ぼ〜」
凛月「そんな小学三年生みたいに言わないでくれる?俺これから二度寝」
月永「リッツが二度寝するっていってるぞ?」
凛月「は?誰と喋って…」
女王「二度寝する前に早く開けてもらっていいかな」
凛月「…え、なんで女王様がいんの」
女王「いいから」
凛月「はい」
女王様は笑顔で(全然笑ってない気がしたけど)開けるように指示されて抵抗することなく従ってしまう。後ろで月ぴ〜が「なんでおれのいうことは聞かなかったのに〜」と言ってたけど、相手によって態度が変わってしまうのはしょうがないと思う。
おれはパジャマから外に出れる格好に着替えてふたりが上がってくれるのをまった。少しすれば今度は玄関のインターフォンが鳴って、相手もわかっているし俺は玄関に向かって鍵を開けた
月永「うっちゅ〜☆リッツ!おはよう!」
女王「おはよう、忙しい中悪いけど今日は早出に変更。車乗って」
凛月「今日は昼から…」
女王「いいから、大事な予定が増えた」
凛月「…横暴…」
月永「そんなに嫌ならいいんだぞ!お前にとって大事な話だから呼びに来てやったのに!おれと奥さんとの時間を返せ!」
凛月「……はぁ…横暴な王さまと女王様だなぁ…わかった荷物持ってくるから待ってて」
午後からだった仕事がどうなるのかわからないけど、まぁ女王様がその辺は管理しているのだから問題ないのだろう。いつも持ち出すカバンに必要最低限のものを入れてふたりがいる玄関にもどる。
凛月「お待たせ、行こっか」
月永「よくお着替えできまちたね〜」
凛月「…月ぴ〜もよく起きれたね」
月永「奥さんいるからな!」
凛月「……ちょっとわかるけど、あんまそういうの言わないほうがいいと思う」
月永「そう?幸せは全世界に共有すべきだ!」
月ぴ〜はそうやって大笑いしながら俺の背中を押して、家の前に止まってた月永家の車に押し込まれる。軽く拉致のような光景に俺は不機嫌そうにお小言をこぼす。
凛月「俺さぁ…ふたりとはそこそこ仲良くしてもらってるけどこんな理不尽なの初めて…。もっと早く言ってくれてもいいんじゃないかなって思うわけ…」
月永「なんだ〜?リッツは大人の荒波に揉まれて反抗期か?どうだ!大変だろ結婚生活もそれを赤の他人に報告するのも!それを隠し通すのも!」
凛月「いや…それも大変だけど、今はそういう話をしてるんじゃ…」
女王「さっきマンションの下で美羽子さんが例の記者に接触された」
女王様の言葉が俺の心臓をドクリと鳴らした。昨日話したばかりなのに、まさか向こうから接触してくる日がこんなにも早く訪れるとは思わなかった。…噂をすればなんとやら…って感じか
凛月「…それで美羽子は…」
女王「レオが止めてくれた。捨て台詞を吐いてバイバイしたよ。」
凛月「そう…ありがとう月ぴ〜…」
月永「まぁ、騎士の守る者を一緒になって守ってやるのが王さまの仕事だからな!」
女王「…やっぱり調べた通りだったよ。」
月永「あぁ、対策はとれそうだし。あんな奴は絶対見過ごしてはいけない」
凛月「ふたりとも…」
女王「知ってるでしょ?凛月。『Knights』は身内に甘いって」
凛月「うん、そうだね。それは俺もだしねぇ…」
運転する王さまはニマニマ笑いながら車を走らせ、女王様は助手席でパソコンに何かを打ち込み続けている。このふたりが敵になったらどれだけ恐ろしいことだろう。心の底から、彼らが仲間でよかったと思う日はないよ…ほんと…
女王「結婚会見、あの記者は絶対にくる。それで余計なことを言いまくってくれる。いろんなメディアに零さんのことを公表される。美羽子さんはかなり評価が下がることを言われる……でもそれを守ってあげられるのは」
凛月「俺だけ、だよね」
女王「うん、凛月だけだ。だけど対策はこっちで十分にとれる。凛月を守るのは」
月永「おれと女王様だからな♪」
女王「安心して凛月、絶対あの記者には白目向いて泡吐いてもらう予定だから」
凛月「俺、初めてあんたのこと怖いって思った」
完全に怒った顔をした女王様の顔は今まで見たことのないくらい怒っていた。高校の時は笑ったり泣いたり苦しんだり…それ以外にも様々な感情があったはずだ。でも、彼女がここまで怒っているのは初めてみたかもしれない…。
女王「同じ文字書きとして許せないし、それを面白おかしく雑誌に載せようとしてる出版社にも怒りがこみ上げる…。絶対その会社には文章を提供しない…。」
月永「とにかく、おれたちはこれから『Knights』の総出で話し合うぞ!いやぁ…こういう戦争みたいなこと久しぶりでワクワクするなぁ!あはは☆」
凛月「…えぇ…この件は俺だけでどうにかするつもりだったんだけど…」
月永「そんな悲しいこと言うなよリッツ!おれたちは一蓮托生のユニットだろ〜!」
凛月「個人主義の集団はどこに行ったんだろうね…ふふ、でも…ありがとう」
俺はあまりに嬉しくて溢れそうな涙を隠すために後部座席に深く座り込んで被っていた帽子のツバを下げた。ふたりはそれ以上何も言わなくてそれがまた心地よくて…俺は本当にこのふたりに拾われてよかった。『Knights』でよかった…。
そう思いながら頬をつたう雫が乾くまで俺は言葉を発することはできなかった。
ーー俺は、あんたらに憧れてたから新しい恋を始められたんだよ
凛月「なぁんて、言ってあげないけどね」
月永「どうしたリッツ!寝てるのかと思ってチューしてやろうと思ったのに」
凛月「王さまは前向いて運転しようね」
第六話
凛月「俺は周りに恵まれてるって改めて思うよ」
→