最終章 ナズナ
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*凛月said
悠人「え?マジですか」
凛月「うん♪よろしくね義弟よ♪」
ライブの一件以来よく話すようになった『ゆうくん』と、美羽子には内緒でご飯に来ている。言うと、ついてくるしなんなら義母さんもなんて言いそうで口に出すことはできなかった。
あれから、急展開ではあるけど急いで美羽子と住む家を決めて同棲を始めた。籍はまだ入れずまずはお互い同棲して馴染みましょうよと言う話で落ち着いて、その間に記者会見や諸々の準備を始めている。美羽子は関係者各位に送る書類、手紙の作成。俺はファンクラブやES関係に送る書類。自分たちがやってるわけではないが、それぞれ事務所の人間に手助けしてもらって進んでいる。
そして、今度は結婚するためのご挨拶だ。俺の家には先日美羽子がやって来て兄者がなぜかボロボロ泣いて父母はそっちに完全に意識をもっていかれてた。でも、美羽子のその穏やかな性格が功を奏して何も言われることなく終わったし、なんなら母親は国民的女優が娘になるとあって顔がいつもの数百倍生気に満ち溢れていた。
悠人「今度うちにくるのって結婚の挨拶…」
凛月「そうそう…今から緊張するから怒られないようにサポートしてね『ゆうくん』」
悠人「二人が付き合ってるのって母さん知ってるし、怒ることはないでしょ」
凛月「ほら、事務所関係者だし…。何かとご迷惑かけてるからさぁ」
悠人「…あ〜…母さん。確かに最近忙しそうだしなぁ…」
やっぱり、向こうの事務所にも迷惑をかけてるのには違いない。俺と美羽子の答えを両事務所共に受け入れる姿勢ではあるけど、いざ会見となればいろいろ動かなければならないこともあるし。そこに関しては俺たちは本当に頭が上がらない。
凛月「うう…やっぱ殴られる覚悟くらい…」
悠人「幾ら何でも…よそのアイドル殴りませんって…」
凛月「『ゆうくん』はどう思ってるの?結婚について」
悠人「俺ですか…?
そうだな〜。まずねえちゃんが結婚するってこと自体驚きですかね…。あの人仕事好きだし、家族やファンのことすっごい大事にしてくれてるのが伝わるんですよね。
いつも自分より他人って感じで、自分の何かをすり減らすのを苦に思わないタイプっていうか…
小学生の時とか、俺ねえちゃんの弟って思われたくなくて避けてたんです。どうしても比べられちゃうし…それがすごく嫌で」
凛月「わかるかな…俺も兄がいるから」
悠人「凛月さんところは朔間零さんでしょう?それはそれで考えるだけで悍ましい…ウチは同性じゃなかったのが救いです…。」
凛月「小学生の頃は避けてたの?」
悠人「まぁ…あんな美形が姉だと何かと苦労するっていうか…俺を通じてねえちゃんと知り合いたいって奴がいっぱいいて…結局中学くらいまで避けてました。」
凛月「何か転機があったわけだ」
悠人「…あ〜…まぁ…」
凛月「なんだったの?その心変わりのきっかけは」
悠人「ウチ3人家族でしょ?母親がいない時って俺家にひとりかねえちゃんと二人だったんですけどね、ある日仕事のはずのねえちゃんが家に居たんです。
それも病人で…風邪ひいてたんです。いつも体調管理の完璧な姉が寝込んでるし…看病してたらねえちゃんが泣きながら言うんですよ。
『ごめんね、ゆうくんかっこ悪いおねえちゃんでごめん。かっこよくなってゆうくんに意地悪する奴を黙らせてやるから…待ってて』って…その時思ったんですよ。俺のためにこの人は今まで自分の心をすり減らしたんだって、俺かっこ悪いなぁって…
俺は俺に自信がなかったんです。それをねえちゃんに押し付けてねえちゃんのせいにして…あの人を苦しめてた。」
凛月「それから変わったんだ」
悠人「はい、まぁ中学校は違ったんで特に何もなかったと言えばそうなんですけど…隠すことはやめました。ねえちゃんともそれからはよく話すようになったし遊ぶようになりました。
俺は俺だってわかったから、…ねえちゃんを理由にねえちゃんを避けることはないかなって思ったんです…」
悲しそうに笑った彼は、そのあとまっすぐ俺を見て頭を下げた、俺は慌てて彼の肩に手を置く。
凛月「ま…待って!頭をあげて」
悠人「凛月さん、ありがとうございます。
ねえちゃんを…、見つけてくれて…選んでくれてありがとうございます」
凛月「…お礼言われるようなことはしてないよ」
悠人「それでも、言いたいんです。
凛月さんの話してるねえちゃん、今まで見たことないくらい幸せそうで…俺ねえちゃんが悲しむことばっかりしてきたからねえちゃんが嬉しいと…俺も嬉しくて…」
凛月「なんか…俺初めてセッちゃんの気持ちわかったかも」
悠人「セッちゃん…?」
凛月「ううん、なんでもないよ『ゆうくん』♪俺も『ゆうくん』が義弟になってくれて嬉しい♪」
悠人「まだ、義弟ではないですけどね…」
凛月「またご飯行こうよ、今度は美羽子も一緒に」
悠人「はい…♪楽しみにしてます」
挨拶に行くのは不安だったけど、彼にここまで言われるとなんだか自信が湧き出てくる。俺はもう一度『ゆうくん』と乾杯をして、そのあとはお互いの話をしていた。『ゆうくん』は美羽子の弟ってだけあって芸能界の話をしても慣れたように返してくれるし、自分の話も普通にしてくれる。年齢も1つだけ違うだけだから話も基本的に合うから話しやすい。初めて、アイドルや業界の人間でもない一般の友人ができた気がして、嬉しくなった。
彼も、そう思ってくれると嬉しいな…。
悠人「あと、俺のこと悠人って呼んでください。この間、ゆうくんって呼ぶと大変ってねえちゃんが言ってました…」
凛月「…じゃあ俺のことも凛月でいいよ。歳変わらないし」
悠人「いや、義兄さんになるわけだし。凛月さんでいいんですよ。凛月って呼ぶとねえちゃんが怒るんで」
凛月「…美羽子が怒るの?」
悠人「…あ〜、それはねえちゃんに聞いてください。そのほうが面白いと思うんで」
凛月「…?うん、わかった」
そう言って空になった皿とグラスを見てご飯屋さんを後にする。支払いは年上ぶって俺が払って、悠人はペコペコと頭を下げる。
凛月「これからはいくらでもおごってあげるよ、ゆ〜と。」
悠人「えぇ、ねえちゃんに怒られそうだから勘弁してください。」
凛月「えぇ?いいじゃん。可愛い義弟を甘やかしたいものだよ?」
悠人「甘やかすのねえちゃんだけにしてやってください」
そうやって巫山戯ながら駅までの道を歩く。美羽子とはこうやって歩けないけどもうちょっとしたら気にしなくていいようになる。もう少ししたら…。
第四話
凛月「美羽子の家にいる家に帰ろ」
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