最終章 ナズナ
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幸せをいっぱいに感じた後には何かしら不幸なことが起こる。よく聞く話だ…。
でも、誰もがそれを恐れて自分には関係ない、自分は大丈夫と現実逃避をする。私も実際、そうだ…幸せいっぱい順風満帆にこの後の人生ハッピーとはいかなかった。
事務所に出てくれば、社長室に呼び出されて…いつかのように私と母とマネージャー…そして、社長だ。この光景数年前に見た記憶がある。
社長「明日の週刊誌の表紙だ」
『……『天使様』は吸血鬼がお好き…ですか…また悪趣味なタイトルですね』
母「こっちとしては、プライベートは本人に任せてるのでって言ってあるけど…」
マネ「流石に、このタイトルは変更できないかかけ合ってる…。あとは相手の事務所次第ね。」
『別れた方がいいのかな…?』
私の一言でその場がシンっと静まり返る。心の底では絶対別れない、と言っている。それでも、頭のどこかで事務所や凛月の立場のこと……結局は世間体を気にしている。でも、私は別れたくない…。この矛盾に私自身がついていけなくておかしくなりそうだ…。と考えていると黙っていた母が私の手を取る。
『ママ…』
母「朔間さんとちゃんと話し合いなさい。あなた1人で決めなくていいわ、これは2人の問題でしょ?2人で話して決めなさい。私たちや事務所…世間のことなんて気にしなくていいのよ。貴女を守るのが私たち事務所の仕事だもの」
『……っ…迷惑かけちゃうよ…』
母「今まで迷惑かけなかったんだもの…一回くらい大きな迷惑かけても誰も怒らないわよ」
社長「その通りだ、お前には苦労をかけた。一回くらい迷惑なんても思わない。ちゃんと話し合って決めなさい。私たちのことは気にしなくていい」
『しゃちょぉ……うう…』
マネ「まぁ、迷惑かけた分しっかり稼いでもらうけどね」
『涙を返せぇ…』
そういうと、みんなが笑う。とにかく、凛月の話を聞かないと…それよりも正直に自分の気持ちを伝えよう…。あの時犯した過ちを繰り返さないように…。
『ちゃんと…話し合います。…でも、私は凛月…朔間凛月さんと別れるつもりはありません…。』
だって、私は彼を本気で愛してしまっているから…例えこの業界を辞める事になっても…。この恋を諦めるつもりは毛頭ないのです…。
*凛月said
事務所から呼び出された。セッちゃんやナッちゃんがいないあたり『Knights』のことでは無いらしい。事務所に用意された会議室にノックして入るとそこにはニューディのお偉いさんと、『Knights』のマネージャーと……そして、王さまと女王様がいた。
マネージャーが俺が入ったことを確認すると、スッと一枚の紙を俺の前に差し出す。
凛月「…なにこれ」
月永「……内容を読んでみろ」
珍しく真面目なトーンの王さまにいつものノリで巫山戯る場面ではないと判断し、指示通り紙に目を通す。そこには美羽子と自分が映った写真が大きく載っており、そこには美羽子を辱めるような文章と兄者とのことを匂わせるような文章が書かれており、前の文章をもみ消されたことへの怒りを感じた。
月永「明日の週刊誌に載るらしいけど、この記事はとりあえずもみ消した。けど、次どんな文章でくるかわからない…ちゃんと2人話し合って決めてくれ。」
凛月「話し合って…」
月永「あぁ…どうするかは2人で決めてくれてかまわない。おれたちは全力でその答えと向き合うよ。『Knights』は既婚者いるし1人や2人増えたってかまわないだろっ!」
そう言って笑う王さまに女王様もお偉いさんも頭を抱える。きっと、そう思ってるのは王さまだけかもしれない。本当はみんな別れるべきだと思ってる。ああ…兄者もこんな気持ちだったのかな、結局好きって気持ちもあるけど仲間や事務所のことも考えてしまう。だって俺にとってはどちらも大切なものだから…。だからといって19の時から焦がしていた恋心をすぐに冷ませと言われてできるものではない。
凛月「女王様は…どう思ってるの?」
女王「わたし…?え…?」
凛月「『Knights』のプロデューサーはあんたでしょ…」
女王「……私は、話し合ってほしい。お互いが後悔しないように、どんな答えでも私は否定しないから」
凛月「…それで公表したいって言っても?」
女王「すればいいと思う」
凛月「別れるって言っても?」
女王「…ふたりが決めたなら」
あんなに応援してくれたくせに…それを引き止めてくれないのか…。どうすればいいのかヒントくらいくれたっていいじゃないか…。どうして、誰も教えてくれないの…。
そんなひ弱な考えをしていると座っていた王さまが立ち上がって、俺のもとに歩いてくる。
月永「…アイツを追い込むなリッツ。いくらお前でもアイツを泣かせるなら許さないぞ」
凛月「泣かせるつもりなんて」
月永「…追い込んでるのはわかってるはずだ。他人に頼るな、自分の答えに自信を持て、『天使様』とのエンディングを決めるのは女王様でも王様でも…ましてや皇帝でも魔王でもないぞ…お前だ『朔間凛月』」
凛月「……」
月永「他人に答えを求めるな、おれたちにできるのはお前の答えを精一杯応援し支えることだけだ」
俺はその言葉に返す言葉を失った。王さまの特徴的な猫目が俺を貫く。その目には、これ以上他人に教えを乞うなと自分で考えろと…まるでライオンが子供を崖から落とすかのように切り捨てる。それを女王様が心配そうな目で見る。
あぁ…俺は学校を卒業してからもまだ…何かから卒業できていなかったのかもしれない。『Knights』という暖かいものに守られてぬくぬく育ってきた子供のままだったのかもしれない。…アイドルとしては成長してきた…業界の人間としては成長してきた…。
でもまだ『朔間凛月』という一人の男としてはまだまだ欠けた部分が多かったのかもしれない。それを王さまは気づかせようとしてくれている…。一人の男として…、彼女と向き合わないといけない。
俺はガタリと音を立てて席を立つ。きっと、王さまが俺から全部話すからと黙らせていたであろうお偉いさんに一礼して会議室から出ていく。
女王「凛月!…待って、凛月!」
凛月「女王様?どうしたの」
女王「レオを嫌いにならないでね…あれでも凛月を…っ」
凛月「わかってるよ、王さまにはありがとうって伝えておいて」
女王「…ありがとう…?」
凛月「大好きだよ、王さまも女王様も…」
女王「…?」
凛月「…行ってくる」
俺は女王様の頭をひと撫でして事務所のフロアを後にする。携帯を開くと美羽子から連絡が入っていた
『
ふたりで話しましょう
美羽子』
用件だけの短い文章でそう書かれていた。
第二話
凛月「兄者はよく決断できたなぁ…」
→