最終章 ナズナ
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凛月の部屋に出入りするようになってわかったことがある。
1 思った以上に部屋が綺麗
2 ソファーでは絶対寝ない
3 結構自炊している
そして、何より驚いたのが部屋の中でちゃんと自分ルールを持っていること。ベッドに上がるときは必ずお風呂に入ってからとか、洗い物は残さないとか、洗濯物を水曜日と日曜日はどんなに忙しくても必ず回すとか…のんびりした凛月からは想像できないほどちゃんとした自分ルールを持っていた。
そして何より可愛いのがそのルールを疲れや忙しさを理由に破ってしまった場合、貯金箱に500円玉を入れるという決まりごとをしているところだ。
凛月「なに笑ってるの」
『今日はなに破ったの?』
凛月「…昨日水曜日なのに洗濯物忘れてた…」
私と凛月は同棲するとは言ったものの、すぐに一緒にとはいかず予定を見つつ私が凛月の家に行っては泊まってを繰り返していた。もう少し時間が空いたら2人で住む場所を考えようという話でまとまっているし、母には報告済みだ。
『じゃあ私も入れる』
凛月「なんで?入れる必要ないのに…」
『私も洗濯物忘れてた。だって、2人の洗濯物でしょ?約束破ったら私も入れる』
凛月「そう…」
『だって、2人の生活でしょ?』
凛月「…♪そうだね、俺たち2人の生活だ」
凛月は私の頭を撫でてから軽くほっぺにキスしてくれた。私もキスを返す。キスしてから立ち上がれば凛月はキッチンに入って、私もそれについていく。
凛月「ご飯食べる?」
『先にお風呂がいいなぁ…』
凛月「一緒に入る?」
『やっぱり帰ろうかなぁ…』
凛月「やだぁ〜!」
『ふぎゅっ!』
ふざける凛月に背を向けて玄関に向かおうとすると、凛月が後ろから抱きしめてきてそれを止める。少しふざけていると、凛月の動きがスッと止まってからギュッとさらに強めの力で抱きしめられる。
凛月「ねぇ…今度のゴールデンウィークのライブが終わったらオフが続くんだけど、予定が合えば家を見に行かない?」
『…へ?』
凛月「正直、通うの大変でしょ?」
『別に、私は好きできてるから苦じゃないけど…』
凛月「言わないと、わかんない?」
『…?』
凛月「もう…、早く一緒に住みたいの。ずっと一緒にいたい」
あと、もう1つ気づいたことがある。凛月はわりと甘い言葉を平気で吐く…。職業柄かはわからないけどいとも容易く私の心をあったかくする。
恥ずかしくなって彼の腕に顔を埋めるとさらに強い力でギュッと抱きしめられた。幸せだ…こんなに幸せで本当に大丈夫なのかと思うほどに…。
『私も凛月と一緒にいたい。家…見に行きたい…』
人によっては2年でここまで進むのは早いって言うかもしれない。それでも、ちゃんと考えた上で私たちが決めたことだから誰にも否定できないし、させることはできない。
凛月「うん、お風呂入っておいで。俺がご飯作っておくから」
『凛月』
凛月「なに?」
『ありがとう』
凛月「…?うん、どういたしまして♪」
私はお風呂に入りながら新しい家のことを考える。本当に2人で暮らせるんだ。帰ったら、凛月がいる…。凛月が私のところへ帰ってくる…。起きたら彼が隣にいて、どちらかが家を出るときに「いってらっしゃい」が言える。帰ってきたら「おかえり」が言える。
そんな幸せな絵面を何度も想像した、何度も願った。しかし、それが現実味を帯びてくると受け入れられないというか…信じがたいというか…。
頭を悩ませているとお風呂場のドアがガラッと音をたてる。
『……』
凛月「…なんだ、起きてた」
『うわあああああ!』
そこには服を着たままとはいえ、凛月が立っていて私は慌てて体を隠すようにしゃがみこむ。
凛月はとぼけた表情で、私と目線を合わせる。
凛月「入りすぎだよ。逆上せて湯船に沈んでるのかと思った。」
『タオル…タオルを…』
凛月「そんな裸なんて見合った仲じゃん?」
そう言いながらも凛月はバスタオルを渡して、私はそれを体に巻く。立ち上がって、床をシャワーで流してから洗面所に出て足の水分を取る。
『明るい場所であまり見られたくない…。恥ずかしいし…』
凛月「…?美羽子の体はとっても綺麗だと思うけど」
『…っ!そういうことじゃない!』
凛月「とりあえず、生きてるならいいや。早く着替えてでておいで湯冷めしたら大変」
『じゃあ早く出て行って!』
私は凛月の背中を押して洗面所から追い出す。私はドアに背を預けて座り込む。凛月が呼びに来るほどに長い時間使っていたのかと思いつつ…ボディクリームを塗ってから部屋着に着替える。
洗面所を出てリビングに戻ると、綺麗に並べられた料理が置いてあって凛月が片方の椅子に座っていた。
凛月「髪の毛乾かさないの?」
『少し、タオルドライ…というよりは凛月のご飯食べたくなって』
凛月「じゃあ、早く食べよう。それで乾かしてあげる」
『…いいよ、凛月お風呂入らないと』
凛月「そのあと入るからいいの。」
『でも…』
凛月「ほら早く食べよ」
私は言葉を返すことができず大人しく席に座る。目の前には凛月が作ったサラダとカルボナーラが並べられてて美味しそうな匂いを漂わせていた。「いただきます」と手を合わせると、凛月は「召し上がれ」と笑う。フォークを使ってカルボナーラを絡めとり口に運べば少しモチモチの食感がたまらなく癖になりそうだ。
『美味しい』
凛月「愛を込めたからね♪」
『ん〜そりゃこんなに癖になる筈だ♪』
凛月「口端に溢れちゃうほどだからねっ♪」
凛月は指で私の口端を拭って自分の口に運ぶ。私は子供っぽいことをしてしまったと顔が熱くなる感覚がした。
凛月はクスクス笑ってからカルボナーラを口に運ぶ。自分の料理に満足したのか満足顔で次を口に運んでいった。
第一話
幸せを感受する
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