第四章 ハナミズキ
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思った通り、私のチケットは握手会の当選券になっていて
さらには関係者チケットではないから一般チケットを自分で手に入れそれが偶然にも当たってしまったと言う体がしっかり作り上げられていた。つまりは月永夫妻の計画的犯行であったということだ。
そうなると、それはそれで恥ずかしいことがある。ゆうくんのチケットが外れているものだから私ひとりその列に並ばないといけない。そうなれば、目立っても致し方ない…。
前後の人や列を遠目に見る方々のコソコソと話す声が嫌でも耳に入る。
「『天使様』もアイドル好きなんだね〜なんか可愛い〜」
「真っ赤になって並んでるのがまたねぇ〜…」
「SNSで凛月くんのうちわ振ってるの見た人がいるって見たよ〜」
「じゃあ凛月くん推しなんだ!え〜瀬名くんかと思ってたぁ〜よく一緒に仕事してるし」
「それなら王さまとも仲良いって聞いた!」
私の推しは凛月です〜!すみませんっ、同業者のイベントにノコノコ来てしまって、ただのファンです…。いや、彼氏です。なんて言ったらきっといい印象は与えないだろうし、皆さんの好きに妄想してもらおうと俯いて順番を待つ。大丈夫、ここにいるのは『Knights』のファンだ。近くにいけば私への意識なんてすぐに消えるに違いない…。
スタッフ「次の方〜」
スタッフさんが声をかける先には完全に仕切られたテントのようなものがあって…一人一人入っていく。おそらく5人がいる空間にファンはひとりだけ、効率は悪いけどそれでもファンひとりひとりとの時間を大切にしているということだ。
次が、自分の番になってとりあえず深呼吸をする。
朱桜「美羽子さん!今日は来てくださってありがとうございます!」
『司くんもお疲れ様です。とても素晴らしいステージでした。…えっと、えっと』
朱桜「ゆっくりでいいのですよ。落ち着いてください」
『司くんはいつも綺麗に笑うけど、ステージ上の笑顔が一番素敵でした』
朱桜「ありがとうございます♪」
鳴上「美羽子ちゃん、当選おめでとっ♪ライブ見に来てくれるなんて嬉しいわァ♪」
『嵐ちゃん!お疲れ様!素晴らしいステージだったよ!』
鳴上「どう?アイドルってすごいでしょ?」
『うん!ファンの皆さんの笑顔が宝石のように輝いていて…それでそれで!』
鳴上「うんうん、わかるわァ♪美羽子ちゃんの笑顔がその証拠ですもの♪」
瀬名「ちょっとなるくん、長くなるから」
『泉さん!お疲れ様です!』
瀬名「はい、ど〜も♪ありがとね」
『泉さんのファンサービス、ファンの皆さんメロメロでした』
瀬名「ちょっと、ファンの感想じゃなくてあんたの感想を言いなよ」
『…へっ…えっと、泉さんかっこよかったです…』
瀬名「上出来♪また見に来なよ」
月永「うっちゅ〜☆よくきたな!」
『レオさん…、そのありがとうございます。とても貴重な経験ができました。』
月永「ん?なんのことかわかんないけどどういたしまして!」
『どの曲も素敵な曲でした…メロディーも歌詞も…』
月永「あぁ、ありがとう。また聞きに来てくれ『おれたちの曲』を」
『はい!』
Knightsの皆さんと握手していけば、最後は彼の順番がやってくる。
凛月「今日は来てくれてありがとう…」
『凛月…』
凛月「この間はごめんね」
『…ううん、私こそごめんなさい。ねぇ…凛月』
凛月「なぁに?」
『恋の形と愛の形が違うことを貴方が教えてくれたの』
凛月「…なんの話…」
『ありがとう凛月、大好きだよ』
凛月「……俺も大好きだよ、また会いに来てくれる?」
『うん、絶対会いにいくよ…っきゃ!』
凛月は繋いでいた手を強く引っ張り机越しに私を抱きしめた。嵐ちゃんが「きゃっ」と声をあげたのが聞こえたがそれよりも近くの貴方の声が私を支配する。
凛月「うそ、俺が会いに行く。今日は来てくれてありがとう」
そうヒッソリと耳元で囁いてから彼は離れて「ばいばい」と笑って手を振った。私はそのままスタッフさんに腕を引かれて会場を後にした。会場を出たところで待っていたゆうくんが駆けつけてくれて呆然とする私に声をかける。
悠人「ねえちゃん…?大丈夫か、ねえちゃん!」
『…ひゃっ!ゆ、ゆうくん⁉︎あっ…え…』
悠人「なんかあったの?」
『…アイドルの握手会ってすごいね…してもらう側初めてで緊張しちゃった…』
悠人「…それはよかったな…」
そう話しながらゆうくんと帰路につく、隣を歩く彼がふと空を見てポツリと呟く。
悠人「俺がこんなこと話すのもおかしいけどさ、俺…凛月さんなら兄ちゃんになってもいいかなっておもった」
『にいいいちゃん⁉︎そ、そんな話どこから!』
悠人「焦りすぎ……
正直、初めて会った時なんでナヨナヨしてる男なんだって思ったし、アイドルって職業もどうなんだって思った。
けど、話した感じ悪い人じゃなさそうだし。アイドルってのも悪いと思わなかった…それに、今日のライブですげぇかっこいいなって思った…。やっぱ外見じゃないよな、中身なんだなって思ったよ。
それにねえちゃんのこと大事にしてるのが伝わったからさ…。だからねえちゃん諦めんなよ。」
『ゆうくん…』
悠人「凛月さんモテるだろ〜?手放しておくと、すぐ取られるんじゃないかぁ〜?」
『…私もモテるもん…』
悠人「張り合うとこそこじゃないんだよなぁ…」
ゆうくんは呆れて笑った。そうだよ、凛月はモテる…けど、顔だけで寄ってくるような人に靡くほど凛月は人を見る目がないわけじゃない。それに、私自身彼を信じてるから…。
だから、ずっと信じたい…今までもこれから先も…
『大丈夫だよ。ちゃんと伝えるから…そしたらまた凛月とご飯食べてくれる?』
悠人「いいよ。俺凛月さんのこと嫌いじゃないし」
振り返ったゆうくんは悪戯っ子のように笑った。こんなにゆうくんが笑ってくれるのも珍しい…任せてゆうくん、私頑張るね。
『お姉ちゃん、頑張って幸せを掴み取ってみせるから!』
悠人「お〜頑張れ、ねえちゃん!」
第十話
『素直になる権利を行使します!』
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