第四章 ハナミズキ
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好き、という言葉だけでは何も伝わらない。
それでも、彼をまた傷つけてしまう恐怖で言葉を選んでしまって結局何も話すことはできなくなってしまった。
あれから何日経過したのだろう。一年半も続いた凛月の連絡は今までが嘘かのようにパッタリ私の携帯を鳴らすことはなくなった。代わりと言ってはおかしいがレオさんから頻繁に連絡がくるようになった。内容は凛月のことで仕事が一緒の時は報告をしてくれた。彼の寝顔やダンスのレッスンをしている写真など、彼が自分で送ることのない珍しい凛月の写真だった。私は自分の見たことない彼の顔に嬉しさを覚える反面、彼からの連絡がないことに悲しさを感じていた。
そんなある日のことだった。
仕事がひと段落してマネージャーと事務所に帰ろうと移動する準備をしていると楽屋をノックする音が聞こえる「帰り時に挨拶?」とマネージャーと顔を合わせてからマネージャーが「どうぞ」とドアに声をかける。
月永「失礼しま〜す。『Knights』の月永で〜す」
女王「お疲れ様です。いらっしゃると伺って挨拶に…」
『月永さん!』
女王/月永「はイィ!」
『あ…奥様の月永さん…』
女王「あっ…あはは…お世話になっております。」
『お二人揃っているのは珍しいですね!どうされたんですか?』
月永「実はおまえに渡したいものがあって…って!」
レオさんが笑顔でそういうと後ろにいた月永さんがレオさんの頭を叩く。レオさんは手で叩かれたところを抑えながら蹲る。人気アイドル『Knights』の月永レオの頭が叩かれる瞬間を早々見ることはなくてその場にいた全員が目玉が溢れるのではないかという顔で驚く。
女王「他所のタレントさんをお前呼ばわりしないで!」
月永「なんだよ〜…痛いなぁ…」
『いいんですよ!レオさんとは仲良くしていただいていますし…そのくらい気にしません!』
女王「甘やかしたらダメです!仕事は仕事で分けてもらわないと…」
月永さんがそういうと私の隣にいたマネージャーがそれに対してうんうんと頷く。わかるけど、幾ら何でも旦那さんをそんな勢いよく叩かなくても…
『そういえば、レオさん…凛月の写真ありがとうございます』
月永「リッツの写真…?あぁ!あれは嫁さんの仕業!」
『え…?月永さん?』
女王「ごめんなさい、連絡先を知らなかったのでレオのを借りて…凛月の携帯から連絡する勇気はなくて…その大変でしたね」
『そうだったんですね…嬉しいです…。』
月永さんはまた悲しそうに笑った。いつもそうだ、月永さんは何もかもを理解していてこっそりサポートしてくれる。私と凛月の関係が切れないように…
『もう…大丈夫です。私凛月と話そうと思います。』
月永「…!そうか!よかった!」
女王「諦めなかったんですね」
『はい…私…諦めたくないんです。せめて諦めるなら凛月と話し合ってからがいいって…』
女王「会う時間欲しくないですか?」
『はい……え?』
女王「ただあっても面白くないですよ!もっと面白くいきましょう!」
すると、先ほどレオさんが取り出した封筒を私に渡す。その封筒をゆっくりと開ければお洒落なデザインのチケットが入っていた。『Knights』のライブチケット…
『こ…これはっ!もらえません!『Knights』のライブなんて見たい人がいっぱいいるのに!』
月永「それはただのチケットじゃないぞ!ライブの後に握手会があるんだ!すごいだろ〜」
『なっ…!なおさらもらえません!こんなのどんな高額で売買されていると思ってるんですか!』
月永「見に来い…おれたち『Knights』の舞台を」
レオさんは静かな声でそういった。返そうとするチケットを私の手の中にしっかり握らせた。その目の中には伝えたいことがいっぱいあるんだけどこのチケットで全てがわかる。そう言われてる気がした。
月永「自分に正直になる前に『アイドル』の朔間凛月を一回見てくれ。お前の見たことないリッツをちゃんと見てやってくれ、そして知ってくれアイツを愛してるファンのみんなのことを…」
『レオさん…』
月永「おれはそれを知ったうえで、リッツともっとわかり合ってほしいんだ。それでも、リッツと一緒にいたいって思ってくれたら握手会にきてくれよ!」
『いいんでしょうか…こんな貴重なものを…』
『Knights』のライブの関係者席なんて、ファンもほしいし関係者の中でもかなり欲しがる人の多い貴重なものだ…それを私が…
月永「おれ、わりとお前のこと好きだぞ!『Knights』のみんなそうだと思うけど!歓迎してくれる!
だから、恐るな!おまえは自分に素直になっていい権利をやる!おれが!」
『素直になっていい権利…』
月永「おまえのリッツと向き合いたいっていう決意はしかと受け止めた!だから、やる!権利!」
『ありがとうございます…』
月永「でも、素直に楽しんでくれ。最高のひと時をお姫様に…♪」
『…はい、絶対に行きます。チケット、ありがとうございます』
月永「2枚やるからおまえのところの『ゆうくん』とこいよ!義理の兄の格好良さを知ってもらうといい!」
『ぎ…義理の兄って…』
レオさんは大笑いしてから私の頭を撫でてから月永さんを連れて楽屋を出ていってしまった。私は驚きのあまり楽屋のソファーにボフっと座り込んだ。
呆然とする中で日程確認したマネージャーが「その日空いててよかったわね」と声を零した。
『…レオさんっていつも驚くことばかりして頭が混乱します…』
マネ「てかあのお二人、本当にあんたと同い年なの?」
『同い年ですけど…』
マネ「あぁ〜あんたが子供っぽいだけか」
『何を〜!』
マネージャーの揶揄いでなんとなく気が紛れたのか、少し落ち着かない気持ちがだんだんと慣れてきた。移動の車に乗り込んでから弟であるゆうくんに連絡をすれば、簡素な文章で「行く」と返ってきて嬉しさで微笑む。
よかった、楽しみが増えて…それにやっと凛月に会える。この機会をくれた月永さんご夫婦には後日何かお礼をしよう。
それから『Knights』のライブの楽しみ方を少しネットで勉強しておくとしよう…。
第七話
『団扇振っていいのかな?』
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