第四章 ハナミズキ
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*凛月said
『Knights』には月ぴ〜が『王さま』に戻ってから月一で定例会のようなものがある。と言っても学生の時の名残でお食事会に近いものである。
内容は、基本各々の活動報告や今後のライブ、イベントの話し合いである。わりと真面目に思うかもしれないけどこれを企画して日程調整するのはウチの敏腕プロデューサーでもある女王様だからだ。
しかし、今回の定例会にその女王様は不在で5人のメンバーだけ、話題も特になく食事が黙々と進んでいく…
鳴上「ちょっとォ…せっかく5人揃って無言でディナーってどうなのォ?」
瀬名「別にくっちゃべってたいならひとりですればぁ〜?」
朱桜「しかし、近況報告しようにも前回から今回まで個人の仕事より”unit”での仕事が多かったのでしようがありませんね…」
凛月「ナッちゃんは『そういう話』が聞きたいんじゃないんじゃない?」
鳴上「あらわかってるわね!さすが凛月ちゃん!」
月永「じゃあ新曲の話?それともライブの話?」
鳴上「んもう!恋の話に決まってるじゃない!」
ナッちゃんが喜びながらテーマを言うとス〜ちゃんとセッちゃんが深いため息を吐く。俺も正直触れてほしくなくて目を逸らす。
鳴上「まずは王さま♪女王様とどうなのォ〜?最近は」
月永「えっ!おれ⁉︎おれは…いつも通りだぞ…みんなあいつと会ってるし話すことなんてないぞ」
鳴上「あらそうなのォ〜?悩みもないの?面白くな〜い」
月永「そう言われても…」
鳴上「子供とかはいつできるのよォ〜アタシたちみんなが待ってるのに〜」
月永「こ…こども」
ナッちゃんの言葉に口に運びかけた肉を皿に落としてしまう月ぴ〜、こどもの話題にセッちゃんもス〜ちゃんも前のめりになる。
朱桜「確かに、お姉様とレオさんのお子さんは見たいです。それはそれは愛らしい子ができると思います…」
瀬名「確かに、顔は高確率で美形だろうねぇ…モデルとして育て甲斐がありそう」
鳴上「あら、でも二人の子供なら音楽の才能もありそうでしょォ?男の子でも女の子でも才能に恵まれるのはいいことだわァ♪」
凛月「俺としては、女王様似の女の子がいいなぁ〜…絶対可愛い♪」
月永「まってまって!お前ら勝手に話を進めすぎだ!」
鳴上「だって結婚して何年経ったのよ…。5年目でしょ?子供ほしくないわけェ?」
朱桜「お二人は子供好きだと思っていたのですが、何かご事情が?」
瀬名「いや、海外にいた時に撮影現場にいた子供で遊んでたから好きだと思うけどぉ?」
凛月「まさか王さま…」
すると、そこにいた全員が黙って月ぴ〜を見る。みんなは哀れみのような、悲哀の表情浮かべていた。月ぴ〜はそれを察して急いで否定の言葉を並べる。
月永「違う!違うぞ!子供は好きだし、可愛いと思う!それにおれたちの関係は良好も良好!絶好調だ!」
瀬名「じゃあ、どっちかがなんか失ってるのぉ?」
月永「なんて事聞くのおまえは!」
凛月「だって、関係が良好なのに結婚5年目で子供できないっておかしいよね…?ふたりとも老後までの資金有り余ってるだろうし」
朱桜「…はい。お二人の深い事情をお姉様がいない状況で心苦しいですが、何かを疑ってしまいます…。」
鳴上「それとも子供はほしくない系なの?二人の子供なら絶対可愛いのに…」
凛月「俺の種あげる…?」
無駄な発言にセッちゃんの隣に少し強めの力で殴られてしまう。痛いと思いながら月ぴ〜を見ると、真っ赤な顔で震えていた。
月永「おまえら失礼だぞ!おれもアイツも正常だ!リッツの種より優秀なおれの遺伝子しかアイツの中には入れるつもりはない!」
瀬名「すごい下ネタ大声で言わないでくれる?仮にも食事中なんだけど」
月永「おまえはどうなんだリッツ!天使様とは仲良しこよししてるか!兄貴とあなky…」
凛月「ちょっっと‼︎本当にそれ気にしてるから言わないでくれるかな⁉︎」
鳴上「もう!お下品な発言はしないでくれる⁉︎もっと可愛い恋バナを聞きたいのよォ!」
瀬名「子供の話し始めたのはなるくんでしょ…?でも子供ほしくないの?」
月永「おれだって子供ほしい〜!子供欲しいに決まってるだろ〜!」
何かを解き放ったように月ぴ〜はこどものようにジタバタし始めた。今日の定例会が完全に個室の部屋で本当によかったと心底思ってる。俺も、ス〜ちゃんも、ナッちゃんも…セッちゃんは呆れすぎて黙々と自分の料理に集中し始めてしまった。
鳴上「女王様が嫌がってるって事?また『Knights』のファンがとか考えてるのかしら。」
月永「それもあるけど、アイツも今仕事が楽しいからやめたくないんだと思う…。」
朱桜「思う、ということはお二人で話し合っていないのですか?」
月永「話し合おうとしたけど、本当に伝えたいことってなかなか伝えられなくて…勇気いるからさぁ…否定されても困るからなんか遠回りに話すと違うことになっちゃうんだよなぁ〜…」
鳴上「簡潔にいうと、本音で話せなかったわけねェ…意気地なし」
瀬名「ハァ〜…相変わらずだめだねぇ…」
凛月「俺もわかる気がするな」
俺も本当に伝えたいことを伝えられずに後悔してる。あの時、美羽子の言葉をちゃんと聞いてあげてればこんなに苦しい思いをしなくてすんだ気がする。
相手のことを考えすぎて遠まりすれば俺も美羽子も傷つかなくてすんだのに…後悔してもしょうがないけど
月永「リッツは後悔してるのか?」
凛月「う〜ん、そうだね。おかげで一歩踏み出す方法がわからなくなっちゃった」
鳴上「意気地なしの男どもねェ!そういう時はどうすればいいか意気地なし代表の泉ちゃん教えてあげなさい!」
瀬名「はぁ⁉︎なんで俺にふるわけぇ⁉︎
…でも、そうだね。伝えないで後悔するより伝えて後悔した方が俺はいいと思うけど…」
月永「セナ…?」
瀬名「結局、どんなに想い合ってても他人だから伝えてあげないと向こうも不安だよ」
凛月「体験談?」
瀬名「べつに〜そう思うってだけ」
朱桜「体験談なのですね…興味深いです。」
瀬名「悪いけど!俺は次があるから!」
嫌な予感がしたのか、セッちゃんは席を立ち個室から出て行ってしまった。4人になった部屋に少しの沈黙が続くと月ぴ〜がガタリと立ち上がった。
月永「おれ、先に帰る!お会計しとくからじゃあな!」
鳴上「バイバ〜い、頑張れ王さま〜♪」
朱桜「お疲れ様です!」
凛月「ば〜い」
月ぴ〜はきっと、この後女王様に自分の気持ちを伝えるのだろう。女王様は月ぴ〜の不調に絶対気づいていた。それでも黙っていたのはいうのを待っていたのとその内容が怖かったから…だったかもしれない。俺が今美羽子に思っているように…
少し悩んだように俯く俺をナッちゃんが見ていたことに気づきはしなかった。
第六話
凛月「好き、って言葉だけ繫ぎ止めるにはあまりに脆い」
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