第三章 カーネーション
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海咲『お待たせ、月翔くん』
月翔「…うん、待ってたよ。海咲」
海咲の前にいたのは、弟である月翔だった。
月翔は夜景が綺麗な丘の上で海咲のことを待っていた。いつかの日に月翔が悩んでいるときにくるこの場所に海咲も付いてきた事があった。海咲は月翔の横に立って街明かりが煌めくのを眺めた。
海咲『…ごめんね、待ってたよね』
月翔「ううん、正直来ないと思ってた。俺はにいちゃんと違って海咲には何もしてあげられなかったでしょ?だから、負け戦だって思ってた」
海咲『そんなことないよ。月翔くんは色々教えてくれたよ…。それに、いつも悲しいときにそばにいてくれたのは……』
あぁ…月永さんは最後にこんな意地悪をするんだ。そうだよ、私が朔間さんと別れた時にずっとそばにいてくれた。悲しい時にそばにいてくれたのは…
海咲『月翔くんだよ』
凛月、だよね。
月翔「…俺でいいの?」
海咲『月翔くんがいいの。私、月翔くんのこと笑顔にしてあげたい。もっと幸せに笑わせたいの…!』
月翔「…なに、それ?」
月翔は幸せそうに笑う。海咲もその顔を見て嬉しそうに笑った。大丈夫、二人で晴翔さんを迎えに行こう。それから、三人で家に帰ろう…
海咲『月翔くん、晴翔さんと家に帰ろっか!』
月翔「うん、にいちゃん。迎えに行こう」
二人は手を繋いで、綺麗の夜景の中へと消えていった。
凛月「それで三人は幸せに暮らしましたって変なエンディングだよねぇ〜」
鳴上「あら、そうかしら?途中の話も見てればかなりいい終わり方だと思うし、お兄さんも見捨てないってのがまたヒロインらしくてアタシは好きよォ?」
朱桜「凛月先輩としては納得できないという事なのでしょうか?」
ドラマも無事にクランクアップして『Knights』がパーソナリティーを務めるバラエティの待ち時間、月ぴ〜とセッちゃんは他の仕事でいないけどス〜ちゃんとナッちゃんと三人でドラマの話で持ちきりだった。
凛月「俺はさぁ…、もっとハッキリしてほしかったかも。バッサリいってくれた方がさぁ…」
朱桜「そうすると、ヒロインの元の心優しい部分が消えてしまうのでは?月翔さんの笑顔の要因の一部には晴翔さんが入っているというヒロインの考えからの行動だと思うのですが…」
鳴上「それがどっちつかずで嫌って言いたいのよね、凛月ちゃんは…」
だって、あの時月翔を選んだ時の美羽子は、海咲じゃなくて美羽子自身だった気がして、俺が告白されたような気がして…そのどっちつかずな海咲の様子がどうも…俺には気に食わなかったのかもしれない。それは俺と月翔の違うところ…なのかもしれないけど…
あの時は月翔と海咲じゃなくて朔間凛月と天崎美羽子だった気がしたんだ…
凛月「女王様は意地悪だ」
朱桜「急になんですっ!お姉様の悪口は聞き捨てなりません!」
鳴上「あらあら…」
兄者との勝負には勝てたけど、結局ふたりの感情の問題だからどうなったかはわからないし聞くのも怖い。なのに、エンディングは月翔で…俺が告白されたように錯覚してしまった。だから、俺はモヤモヤしてる。なんで…
鳴上「凛月ちゃん、悩みがあるなら誰かに相談するか相手にぶつけた方がいいと思うわァ…溜め込むのは得策じゃないと思うの」
凛月「…上手くいくかなぁ」
鳴上「これはアタシの勘……っていうか祈りだけど、上手くいってほしいわァ」
朱桜「な…なんの話なのでしょうか?」
ス〜ちゃんは、キョロキョロとふたりを交互に見る。ナッちゃんはそれを気にせずまっすぐ俺を見た。あぁ、どうせここまで女王様は織り込み済みか…結局は自分で動けよって…そういう事だったんだ。
俺は無言で楽屋のソファーから立ち上がって、携帯を片手に出ていく。そして、通話履歴をたどって目的の人物を選択して通話ボタンを押した。
*美羽子said
クランクアップを迎えて、無事ドラマの最終回放送日を迎えた。私は朔間さんに呼び出されてESビルの一室にいた。
朔間さんは何をいうわけでもなく、コーヒーを啜っていた。これは私から話出すべきなのか。それとも彼が話出すのを大人しく待つべきなのか…と考えながらだんまりをしていると目の前からクスクスと笑い声が聞こえる。
『なんですか…』
零「いつも通りで話そう。ここは誰も来ないように言ってある」
『…なんで笑うの…』
零「いや、可愛いなと思ってのう。」
『かっ…揶揄わないで…』
零「…事実じゃ。ずっと、思っておったよ、別れてからも後悔しておった」
『すぐに答えを出したくせに…未練がましいこというんだね…』
零「すまんかったな。美羽子ちゃんには辛い思いをさせた」
『ううん、もう気にしてないよ。結局答えを出したのは私たちふたりだもん。文句は言わないよ』
私がそう言えば朔間さんは悲しそうに笑った。きっとお互いがわかってる私たちは本当にここまでだってことを…
『朔間さん、私幸せだったよ。付き合えてよかった、本当にありがとう。私に恋を教えてくれたのは間違いなく朔間さんだったよ』
零「あぁ、我輩も幸せだったよ。ありがとう、美羽子ちゃん」
『これからは『UNDEAD』の朔間零のファンとして会いに行ってもいいかな』
零「できれば、同業者としてきて欲しいんじゃが…楽屋にも遊びにおいでメンバーも喜ぶことじゃろう」
『…じゃあ、そうさせてもらおうかな』
零「凛月とも…遊びにおいで」
『…それは凛月次第かなぁ…』
朔間さんはまたクスクスと笑ってまたコーヒーを啜る。あぁ、よかった…別れた時からずっとあったモヤモヤが少しずつ解消されていくのがわかる。それはきっと私だけじゃなくて朔間さん…貴方もですよね…。するとカバンの中の私の携帯がブブブっと音を鳴らす。朔間さんもそれに気づいてコーヒーのカップから口を離す。
零「…美羽子ちゃんが言えば凛月はついてくるよ。さて、長居は無用じゃな。お呼びがかかっておる電話に出ると良い」
『うん、失礼します。』
私は席を立って窓際によって着信の相手を見る。相手はタイミングいいのか悪いのか話題の人物で少し笑いながら私は着信ボタンを押した。
第十話
『貴方はいつもタイミングがいいね』