第三章 カーネーション
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晴翔に仕事や海咲とのことを内緒にされて、ずっと悩んでいたモヤモヤをぶつけて家を出てしまった月翔は行くあてもなく海咲の家に転がり込んでいた。
海咲『その…幾ら何でも…隣に隠れると言うのはどうだろう…』
月翔「灯台もと暗しって言うでしょ」
海咲『えぇ…』
月翔「本当に嫌なら言っていいよ。友達の家に行くから…」
海咲『嫌じゃないけど…その付き合ってもいない男女が同じ部屋にいると言うのは…』
月翔「じゃあ、付き合う?」
月翔の言葉に海咲はギョッとする。海咲としては、月翔のことは嫌いじゃない、むしろ好きな部類だ。居座っている間も家のことはしてくれるし何かと手伝いをしてくれる。けど…この状況になているから付き合うって言うのは…
海咲『月翔くんは…私のこと好きじゃないでしょ…?都合いいから付き合っちゃえ…みたいな?』
月翔「は?……好きなんだけど…」
海咲『まじで…?』
月翔「まじで」
海咲『え…』
初めて知った月翔の気持ちに驚く海咲。月翔は海咲の入れたコーヒーを啜る。
海咲『えっと…』
月翔「正直、にいちゃんが夜の仕事してるだけでわりと驚きなのに…海咲みたいなちんちくりんが好きだとは思わなかったな…。」
海咲『えっ…晴翔さんが…私のことを…?』
月翔「えっ…知らなかったの」
海咲『…ハジメテシリマシタ』
月翔「鈍感ラブコメヒロイン…?あれで気づかないって海咲がよく読む漫画のヒロインそっくりだね…」
海咲『……』
だんまりな海咲に月翔はため息をついて席を立ち玄関へと歩いて行く。それを海咲は呼び止める。
海咲『ま…待って月翔くん…どこへ行くの…』
月翔「付き合ってもない男女が一つ屋根の下はまずいんでしょ…?だから友達のところに行くよ。コーヒーありがとうね。」
海咲『え…えっと…』
月翔「答えは急がないよ。でも、もし俺を選んでくれるなら…俺は幸せにするよ、絶対に」
そう言って、月翔は海咲の家を後にした。海咲はそれをただ見ているだけだった…‥
その翌日、バイトから帰ってきた海咲を待っていたのは昨日家にいた月翔の兄、晴翔であった。
海咲『晴翔さん…?』
晴翔「あぁ…おかえり。悪いな、待ち伏せなんてして」
出会った頃とは違い、砕けた口調の晴翔は手招きして自分の家へと海咲を招く。海咲はそれに従って部屋の中へと入る。
晴翔「月翔のこと知らないか?昨日から連絡取れなくて…」
海咲『えっと、少しだけウチにいました。けど友達のところに行くって…』
晴翔「そうか、やっぱりお前のところにいたのか…月翔何か言ってたか?」
海咲『喧嘩したことと……えっと…』
晴翔「なんだよ」
昨日のことを思い出して、海咲は口ごもる。月翔に告白されたことや晴翔が自分のことを好きなことを話されたなんて…言えるはずもなかった。しかし、だんまりをしていると怪しんだ晴翔がズイと顔を近づける。
海咲『あ、あの!その…話すようなことではないのですが……告白されました…。月翔くんに…』
晴翔「……へぇ」
海咲『…へぇって…なんですか』
晴翔「どうすんだよ…」
海咲『…わかりません。でも、まずはお二人に仲直りして欲しいです。私は仲良く笑ってるお二人が好きなんです。会話は少なくても心のどこかで通じ合っているお二人が…』
晴翔「お前に俺らのことは関係ないだろ…」
海咲『関係なくない…こともないかもしれないです…』
晴翔「どっちだよ…」
海咲『……仲直りしましょう…?ちゃんと話あいましょう…?たった二人の兄弟なんですから…仲良くあってほしいです…それは私のワガママでしょうか…?』
晴翔「…お節介だな」
海咲『お節介で結構です…』
晴翔「でも、そういうところが好きだ」
海咲『…へ…?』
晴翔「いつも一生懸命で、まっすぐ物事を見てて、俺の知らない純粋な顔で笑う…お前のそういうところが好きだ。」
海咲『何を…急に…』
晴翔「…秘密守ってくれてありがとな。けど、もういいよ黙ってなくて」
晴翔は清々しいほど綺麗に微笑んだ。どういう意味を含んでいるのかは自分にはわからなかったけれど、海咲はいい意味であるはずだと思って精一杯の笑顔で笑い返した。
晴翔「悪いけど、月翔を迎えに行ってくる。また帰ったら連絡するから…」
海咲『はい…待ってます。夜遅いので気をつけて』
晴翔「大丈夫だよ。それと、帰ったらちゃんとお前とも話したい」
海咲『…わかりました』
海咲をおいて晴翔はマンションから出ていってしまう。二人が無事に仲直りできますように…そう祈りながら海咲は自分の部屋へと戻っていった。部屋につくと、月翔から着信がきていた。
海咲『月翔くん……?』
月翔「…ねぇ、帰ったら話したいことがあるんだけど聞いてくれる?」
海咲『話したいこと…?』
月翔「うん、この間のことちゃんと海咲と向き合って話したいけどモヤモヤしたままだとお互い気持ち悪いから…にいちゃんとのことハッキリさせたら…」
海咲『ふふふっ…』
月翔「…なぁに…その笑い」
海咲『そう言って今晴翔さんも家出ていったよ』
月翔「…そう」
海咲『仲直りしてからゆっくり話そう。』
月翔「うん、待っててね」
海咲『うん、待ってるよ。』
じゃあね、と声をかければ月翔はプツリと通話を切った。電気もつけていない部屋には大きな満月が月明かりが照らしてくれる。
どうかこの月明かりがあの兄弟のこれからの道を照らしてくれるように祈りながら外を眺めた。
『どうか、神様。二人が仲直りできますようにーーー。』
第八話
『もうあとは答えを待つだけ』
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